心のざわめき
私の狙い通り、山田君は次の日に創君に話しかけてくれた。その結果2人は仲良くなった。
創君が楽しそうにしているのを見ると私まで嬉しくなる。
けど、それと同時に羨ましくもある。
私だって創君と話したい。
私こそ1番の友達、いやそれ以上の関係になれるのに!
だって、創君好きなこと、好きな物、全部知ってるんだもん。話が尽きることも無いだろうし、ずっと一緒にいられるのに、、、
だから、早く創君と一緒にいても違和感が無いようにしないとね、、、
堂々と2人で一緒にいても誰からも文句が出ない、そんな環境にしなきゃ!
あわよくば、みんなからもお似合いのカップルだねって応援してもらえるようになったら最高だよ!
♢
「最近一ノ瀬明るくなったよね」
休み時間に舞が私に話しかけてくる。
「そ、そうかな?」
「うん。誰かと話している姿よく見るし」
確かに、最近創君がクラスのみんなと楽しそうに話している姿をよく見る。
「けど、、、」
「え、なに?」
「綾香と話すことはあんまりないよね〜」
「う、うん」
別にいいもん。創君が楽しそうなら私は我慢できる。
「まぁ、それもこれも綾香が何かしたんでしょ?」
「え?」
「だって、一ノ瀬が明るくなったとはいえ、急激にクラスに馴染めているのはおかしいじゃん」
やっぱり、舞にはバレちゃう。
「ん〜、どうなのかな〜」
「私には隠すなって」
舞の言う通り、ここ1ヶ月の間に私はあらゆる手を使って創君がクラスのみんなと仲良くなれるように手を尽くした。あらゆる手と言っても危ないことはしていない。山田君と同じように創君の良さを伝えて回ってるだけだ。
元々、創君は明るく、心の優しい人だった。私と疎遠になってからおとなしくなって、その良さが見えづらくなったけど、あの頃の創君が消えたわけではない。
「そりゃそうだよ。創君がみんなと仲良くなれるのは当たり前だよ。あんなに魅力的な人いないもん」
「ふーん。私はよくわからないけどね〜」
「けどさぁ、女子と喋ってる様子はないよね」
ギクッ。痛いところ突かれてしまった。
「そ、そうかなぁ〜」
「そうだよ。うちのクラス男女仲良いから、男子だけに馴染んでる一ノ瀬はちょっと違和感あるよ」
わかってる。わかってるよ。けど、創君が女子と仲良くするのが嫌だから、クラスの女の子と仲良くなるようには行動していない。その結果、男子だけに創君が馴染む状況が出来上がった。
「綾香、ちょっと嫉妬深いよね〜」
「そ、そうかな?私はそう思わないんだけど、、、」
「じゃあ、一ノ瀬が綾香じゃない女子と仲良くしてたらどう思う?」
「そ、それは、別に…………いいと思うよ」
「歯切れ悪いわね〜」
やっぱり嫌だ。想像しただけで落ち込んでしまう。
「じゃあ、私が一ノ瀬に女子紹介してもいい?」
「ダ、ダメッ」
「声大きいわね、やっぱり嫌そうじゃない」
「ち、違うよ。創君にはまだ早いってだけ」
「母親か」
「むー」
「はー、その様子じゃ一ノ瀬に彼女なんて出来たら綾香どうなっちゃうんだろうね」
「か、か、か、彼女?」
「そうだよ。一ノ瀬にだって出来る可能性あるでしょ?綾香の話なら魅力ある男子なんだもんね?」
「意地悪言わないでよ〜」
創君に彼女なんて出来たら私どうなっちゃうの?考えただけで、鼓動が早くなる。想像しただけで、周りの声が聞こえなくなるほどだ、、、
だから、舞の「だから綾香の背中押してあげようとしているだけじゃん」って言葉が全く聞こえなかった。
♢
「綾香、綾香、あれ見てあれ」
「なに〜、朝からうるさいよ〜」
今日も会長と登校して朝から気落ちしている私に舞のテンションの高さは少しうるさく感じる。
「そんなこと、どうでもいいって。あれ見てよ」
舞が指差した先には創君がいた。
「なになに?創君がどうかした……の」
信じられない光景が映っていた。
創君が女子と話していた。しかも、とても楽しそうに話してた。
「え、え、え、あ、、あれ、誰なの?」
「だよねだよね。一ノ瀬が女子と話してるの珍しく無い?」
珍しいとか、どうでも良い。一気に頭が真っ白になる。私にはしばらく見せてくれなかった笑顔をその子には見せている。
「おーい、綾香ー。聞こえてるー?」
舞の声も遠くに感じる。
「ねぇ、あの子誰なの?」
ようやく落ち着くことができた。
「分からないよ。あんな可愛い子始めて見たよ」
確かに、めちゃくちゃ可愛い子だ。同じ学年にあんな子いたかな?
私はしばらく、放心状態でその子と創君が話しているのを見ることしかできなかった。
「あっ、やっとあの子いなくなったね」
「うん」
「一ノ瀬に仲良い女子いたんだね〜。あっ、綾香どこ行くの?待ちなさい」
舞の呼びかけに止まることなく、創君の元に近づいた。
「ねぇ、一ノ瀬君」
「な、なにかな?高梨さん」
「さっきまで……話していたあの子誰なの?」
「え?」
「答えて」
「い、いや、今朝知り合ったんだよ。なんかあの子が探し物していたから手伝ったら感謝されてさ」
「へぇー、楽しそうね」
「高梨は怒ってるの?」
「怒ってない」
「い、いや、どう見ても怒ってるよ「怒ってない」
「そんな食い気味に答えなくても、、、」
「そ、そんなことより、何か用か?」
「はい?」
「い、いや高梨が俺に話しかけるの珍しいだろ?」
「だ、誰のせいで話しかけずらいと思ってるの」
「え、なに?聞こえなかったからもう一回言って?」
「なんでもないよ」
「それで何か用があるの?」
「い、いや、一ノ瀬君が女子と話すの珍しいから気になっちゃってさ」
「お、おれだって女子と話すこともあるよ」
「嘘だ〜、見たことないよ」
「べ、べつにいいだろ。バカにしに来たのか?」
「ち、ちがうよ」
「俺だって女子と喋れたら嬉しいからな」
「へぇー、興味無いと思ってた」
女の子と話す創君に少しイライラしてしまったのか分からないけど、嫌味を言ってしまった。
「なわけあるか。俺だって彼女欲しいんだぞ」
「か、か、彼女」
「何をそんなに驚いているんだよ?」
「意外だなって」
私がいるじゃない。そんな私の前で彼女欲しいアピールですか?あなたが「好き」って言ってくれたら全てを投げ出してでもあなたと一緒にいるのに、、、
「高梨はいいよなー」
「な、なんで?」
「だって、会長と付き合ってるじゃん。パートナーがいるってのは羨ましいよ」
やっぱり、創君は私のことなんて恋愛対象に入ってないんだろうな。
遅れ遅れにしてしまっていたけど、やっぱりこの問題から解決しないと、、、
会長と別れよう。私はそう心に決めた。




