気付いてしまった
「やっぱり綾香はすごいなぁ。早くもクラスの中心じゃん。女王様みたいだね」
「もぉ〜、舞からかわないでよー」
2年生になってから1週間が経った。クラスにも慣れてきて色んな子が話しかけてくれる。
「けどさ」
「ん、なに?」
「あいつは馴染めてないっぽいよね」
舞が視線を向けた先には、机に突っ伏している創君がいる。基本的に彼は休み時間は寝ている。
「一ノ瀬が誰かと話しているのあんまり見ないよね」
「え、えーと」
確かに舞の言う通り、創君が誰かと話しているのを見たことがない。いつも1人でいる。1年生の時も、1人でいることが多かったみたいだから彼自身は何も変わってはいないのだろうけど、、、
「仲良くしたいなぁ」
「やっぱり?」
「うん。せっかく同じクラスになったのに全然喋ってないしさ」
「うーん。別に綾香を避けてるわけではなさそうだけど」
会長の言いつけもあるから、私から積極的に話しかけたりはしていないけど、たまに話しかけても反応が薄い。
私だけにではなく、他のクラスメイトにも割と同じ対応だから嫌われてるとかでは無さそうなのは安心している。
「まぁいいんじゃない。1人でいる方が好きな人もいるよ」
「けどなぁ」
まあいいや。1年間もあるんだ。これからどんどん仲良くなる機会はあるだろう。
◇
「はい、じゃあグループ活動するので10人1グループ作ってください」
社会の授業でグループごとに、レポートを作成して発表することになった。
クラスは42人なので約10人ずつの4グループを作る。
グループは男女約5人ずつと決まっているがメンバーは自由に決めていい。
「高梨さん一緒にやろーよ」
「綾香ちゃん私とグループ組もう」
私に声をかけてくれるクラスメイトが大勢いる。
「綾香どうするの?誘ってくれてるけど」
「せっかくだから一緒にやろうかな」
声をかけてくれたのでその子たちと組むことした。
チラッと創君を見ると、自分の席に座ったままでグループを誰かと組んでいる様子はない。
「舞、創君も入れてあげてもいいかな?」
「え?なんで?」
「まだ、どこのグループにも入れてないみたいだし」
「いやどこかに入るでしょ。おとなしい子たちのグループに入れてもらえるんじゃない?」
「そ、そうかな」
こう言われたら無理に誘うことはできない。
一緒のグループになりたかったなぁ。
しかし、しばらくしても創君はどこのグループにも入れていない様子だった。
「おーい。一ノ瀬がまだグループに入れてないからどこか入れてあげてー」
先生が私たちに呼びかける。
「ほ、ほらまだどこにも入ってないよ」
「いや、私たちのグループは人数揃ってるから」
どうしよう。クラスは42名いるので、どこかのグループは11人グループになってもいいはずだ。
しかし、どこのグループにも入れてる様子はない。
「入れてあげようよ」
「えー、別にそこまでしなくてもいいでしょ」
舞が明らかに嫌がってる。
確か創君のこと苦手だったっけ?
舞には悪いけど、やっぱり創君がクラスに馴染めていない姿を見るのは嫌だ。私たちのグループに入れてあげたい
「どこか一ノ瀬入れてあげるグループいないのかー」
先生は困ったようにクラス中を見渡す。
「一ノ瀬って誰だっけ?」
「いつも寝ている奴だよ」
クラスメイトがヒソヒソ話している声が聞こえる。中には心無い言葉もあった。
「はい。私たちのグループなら大丈夫ですよ」
私が手を挙げると先生は安堵の表情を浮かべた。
「流石高梨だな。ありがとう。ほら一ノ瀬もあっちのグループに混ざりなさい」
「はい」
創君は表情変えること無く、私たちの方に向かってきた。
「高梨さん優しいね」
「一ノ瀬と俺喋ったことねーぞ」
まぁ、私たちのグループの人ならみんな優しいから創君を悪く言う人なんていないはず!
「綾香、本当にいいの?」
「大丈夫だって、舞」
創君は私の向かい側の席が空いていたのでそこに座った
みんなの前では創君って呼ばない方がいいよね?一ノ瀬君呼びの方が創君にとってもいいよね?
創君も高梨呼びになってるし、、、
「た、高梨、ありがとな」
「う、うん」
嬉しいなぁ。
クラスでも創君と関わることが出来て本当に嬉しい。
グループ活動が始まり、最初は個人個人で題材探しからすることになった。
学校支給のタブレットを使って、インターネットからレポートにまとめる題材を探すことになった。
1グループに3台ずつ支給されたので、近くの人と一緒にタブレットを見ることになる。
私の近くには舞と創君がいたので、3人で1つのタブレットを使っている。
自然と創君とも会話することになり、久しぶりの会話を私は楽しんでいた。
「江戸時代の将軍についてまとめるのはどう?」
「結構量多くない?どうかな一ノ瀬君?」
「何人かに絞って調べても良いかもね」
「さっすが一ノ瀬君、その案いいね」
「い、いや普通だよ」
「そうだよ。綾香は褒めすぎだって」
「えへへへ」
私たちが盛り上がっていると周りの視線に気付いた
グループのメンバーがみんな私たちを見ていた。
「え、なに、みんなでこっち見て」
「い、いや」
「えーと」
みんなに問いかけるけど、口ごもっている。
「一ノ瀬君と綾香ちゃん仲良さそうだなーて思ってさ」
「え?」
「そうだよ。一ノ瀬があんなに喋るところ初めて見たよ」
「綾香ちゃんがあんなに楽しそうにしているのも初めてかも」
久しぶりに喋れてテンションが上がっていたのだろう。周りから見れば珍しい光景になっていた。
「い、いやそんなことないよ。舞と一緒だからかなぁ?」
必死に誤魔化す。
「あー、もしかしてー」
同じグループの女の子がニヤニヤしている。
「一ノ瀬君って綾香ちゃんのこと好きなんじゃない」
女の子はすぐ好きとか、そういった恋愛の話に繋げたがる。まぁ私も嫌いじゃないけどね。
「そそそ、そんなことないと思うよぉー」
焦って、変な口調になってしまった。
「あはは、綾香ちゃん焦りすぎだって。嘘嘘」
「そりゃあ、高梨さんくらい可愛いければ全員好きになるって」
その発言に他の男子が頷いている。
恥ずかしいなぁ。
前、好きっていってくれたしなぁ。どうなんだろ?
創君をチラリと見る。
しかし、創君は一切笑っていなかった。
「どうなんだよ。一ノ瀬。高梨さんのことどう思ってるんだよ」
からかうように、創君に問いかける。
けど、創君の答えは私の思っている答えとは真逆だった。
「いや、高梨に失礼だろ」
「……は?」
思ってもいない答えにさっきまで、笑顔でからかっていた男子が一瞬で険しい顔になる。
「会長と付き合っているのに、勝手に俺から好かれても困るだけだろ。そういうの失礼だと思う」
一気に空気が重くなる。
その答えに私は感じてしまった。
創君は私のこと好きじゃないかもしれないと、、、




