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昔は仲が良かったヤンデレ美少女幼馴染になぜかいじめられてます  作者: アレクサンダー
フッたはずの幼馴染がなぜか一緒の高校にいて、俺のことをいじめてくる件
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仲直り

「待ってって言ってるでしょ」

「お、おい」


 私は走って創君に後ろから抱きついた。

 

「お、おい。高梨、聞こえてるから」


 私は離さない。この手を離したら彼がまたどこかに行ってしまいそうだから。


「た、高梨、俺逃げないから」

「信用できない」

「わかったよ。そのままで聞くから」


 創君の大きな背中に顔を付ける。あったかい。

 涙が出てきた。この温もりは何年振りだろう。いろいろ段階すっ飛ばして、いきなり抱きついちゃったよ。


「私、怖がってたわけじゃないから」

「え?」

「緊張しすぎて、何喋ったらいいか分かんなくなってただけだから」

「そうなのか」

「うん。本当は話せることが嬉しくて嬉しくて仕方なかっただけなの」


「また、創君と話せる、仲良くできるって、、、」


 話している途中で涙が溢れる。

 すると、創君が抱きついている手を解く。


「えっ」

「大丈夫、逃げないから」


 創君が目を閉じて深呼吸をする。

 よしと呟く声が聞こえた。


「高梨、本当にごめん。今も過去も全て俺が悪かった」


 今も過去もという言葉に全て詰まっていた。

 小学3年生のあの時に終わった私と創君の関係。

 それがまた、この瞬間から始まろうとしている。


「ううん。私もごめんね」


 涙が止まらなかった。抑えてた気持ちが溢れ出た

はじめ君はそんな私の頭を何も言わずに撫でてくれた

 創君のおかげで落ち着くことができた。


「あはは」

「なにがおかしいの?」

「高梨、流石に泣きすぎだろ」


 わかってない、創君はわかってないよ。


「わ、わたし寂しかったんだからね、、、」

「え?」

「この4年間ずっとずっと寂しかったんだからぁ」

「そう言われると申し訳ない気持ちになるなぁ」

「また私と仲良くしてくれる?」

「もちろん。高梨が嫌じゃないなら」

「私はずっと仲良くしたかったんだから」

「うぅ、全部俺が悪いです」

「ふふっ」


 こんな会話できたのなんて4年ぶりだ。

 夢じゃないよね?現実だよね?


 それから、私達はこのたくさん話した。この4年で離れていた間のお互いの話をたくさんした。離れていた私達の距離が急速に縮まるのを感じた。

 


「なんで私とまた仲良くしてくれたの?」


 私が1番気になっていたことだ。また話しかけてくれたきっかけが知りたかった。


「……………………」

「べ、別に言いたく無かったらいいよ」

「いや、ちゃんと話すべきだな」


 創君が真剣な顔で私の顔を見つめる。


「父さんがさ、今年の夏に死んだんだよ」


「え、お父さんってあの?」

「そうか、綾香も知ってるのか」

「私のお母さんが創君のご両親が離婚したって教えてくれたの。けど、その頃には私と創君は疎遠だったからあんまりわからないけど、、、」


「そう。高梨と話さなくなった後くらいかな?父さんと母さんが離婚したんだ。理由は父さんの借金。」

「………………」

「仕事でミスしたらしくてさ。その賠償金とかで何億のも借金ができちゃってさ、、、」

「…………そうだったんだ」

「それで、俺たちを守るために母さんと離婚したらしいんだ。その時弟が産まれる前だったから余計に迷惑かけないようにしたんだってさ」


 私は何も返す言葉がなかった。


「離婚してからは賠償金払うためにずっとずっと働いてたんだ。けど、体壊しちゃって今年の夏に死んじゃった」


「その後、当時の職場の同僚が葬式来てくれてさ、話聞いたらそのミスも父さんのミスじゃなくて、後輩のミスを父さんが代わりに庇ったって聞いてさ」

「どうしてそんなこと、、、」

「そのミスが起きた直後、ミスした後輩の人が自殺しちゃったんだよ。」

「え?」

「それで、責任者だった父さんが自分が悪いと感じちゃったみたいでさ、全ての責任を負うことにしたんだって」

「誰も止めなかったの?」

「止めたけど、聞く耳持たなかったって」


「迷惑な話だよな。その後、俺たち家族は父さんいなくなって大変だったんだから」


 言葉とは裏腹にはじめ君は穏やかな表情だった。


「けど、父さんらしいなとも思った。頑固さと仲間思いのところは昔から変わらない」


「けど、母さんは本当に後悔してて、借金があったから子供ために離婚したけど、離婚せずに私が支えてればって毎日泣いてた」


 分かる。私が同じ立場でも同じことを思うだろう。


「だからさ、俺も後悔残したまま人生終わるのは違うなって思ったんだ」

「うん」

「俺にとっての後悔は綾香とのことだった」

「え?」

「俺もどこかで分かってたんだ。綾香は悪くないって、俺の勝手な思い込みだって。けど、認めるのが嫌だった。だから、憎むことで自分を保っていたんだ」

「…………」

「本当にごめん。俺の勝手な気持ちで遠ざけておきながら、また勝手な気持ちで近づいてきてごめん」


 創君が頭を下げる。心からの謝罪だと伝わってくる


「もういいよ」

「え」

「また仲良くしてくれるんでしょ?」

「綾香が嫌じゃなければ、、、」

「嫌って言うわけないじゃん」

「じゃ、じゃあ、またよろしくな」

「………………うん」


 私たちの関係はまた始まった。崩れたと思っていた幼馴染という関係がまた始まるんだ。


「じゃあまず、呼び方ね」

「どういうこと?」

「私のことは綾香って呼んでね」

「い、いいのか?」

「さっきから綾香って呼んでるじゃん笑」

「ごめん、つい」

「私も創君って呼ぶからね。一ノ瀬、高梨呼びは距離感じてたから」

「じゃあ、俺からもいい?」

「なに?」

「敬語禁止にしよう。友達なんだからタメ口で」

「もちろん」


「綾香、本当に明るくなったなぁ」

「そうだよ。あの頃の私とは違うんだから」

「ははっ」


 いつか、友達じゃなくて恋人にもなれる日が来るかな?

 


 

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