やっぱり好きなんだね
「で、あんたは会長の告白断っちゃったの?」
「う、うん」
「はぁー。私には何を考えてるのか良く分からんわ」
舞に、電話越しにため息を吐かれる。
「理由を教えてよ。理由を」
「好きでもない人と付き合うのは相手にも失礼だと思ってさ」
「けど、会長のこと嫌いではないんでしょ?だったら試しに付き合ってもよかったんじゃない?」
「人として尊敬は出来るけど、恋愛的には好きではなかったの」
「違うでしょ。あんたが断った本当の理由は」
「え?」
「一ノ瀬でしょ、一ノ瀬」
「な、なにが」
「あんたの様子見てると分かるわよ。まだ一ノ瀬のこと好きなんでしょ?」
「そ、そんなことは、、、」
「どんだけ、一緒にいると思ってるのよ。私にだけは隠さないでよ」
「………………うん」
「やっぱりね」
「だって忘れらないんだもん」
「けど、一ノ瀬とは無理なの綾香もわかってるでしょ?」
「そ、それがね」
私は今日起きた出来事を舞に話した。
「うーん。よく分からないね。」
「え、なにが?」
「いやだって、おかしいじゃない。あんだけ、綾香のこと嫌ってた一ノ瀬があなたに話しかけるって」
「そ、それは、そうだけど」
「浮かれてるところ悪いけど綾香の幻覚じゃない?」
「そんなことないもん。一言一句全て覚えてるもん」
「綾香って気付いていないとか?」
「綾香って名前呼んでくれたもん」
「もんもん、うるさいわね」
「むー」
確かに舞の言う通り、創君は私のこと嫌ってたはずだ。入学式で写真撮った時も、私と話そうとはしていなかった。
「何か、一ノ瀬にも心境の変化があったのかね」
「そうだといいなぁ」
「で、どうするの?」
「え?」
「一ノ瀬に告白でもするの?」
「そんなの無理に決まってる。私からの好意なんて気持ち悪いだけだと思うし」
「あんたのことそんな風に思うの一ノ瀬くらいしかいないもんね」
「う、うん」
「まずは話せるようになるのが先じゃない?」
「それが難しいんだよなぁ」
「綾香から話しかけたら?」
「それは出来ないよ。関わるなって言われてるし、私から話しかけたりはできないよ」
「じゃあどうするの?あっちから話しかけてくれるの待つの?また、話しかけてくれるかは分からないんだよ」
「そうだよね」
「また転ぶとかどう?」
「え?」
「転んだ時に話しかけられたんでしょ?だったら、また転んだらチャンスあるかもよ」
「もー、真剣に考えてよー」
「あはははは」
やっぱり、奇跡だったのかな?また話したい。
私が創君と話す時は、怒った顔しか見ていない。だから、あんな普通に会話したなんて夢のようだ。
「それにしてもあんたは一途だね。一ノ瀬に話しかけられただけで、会長の告白断るなんてさ」
「う、うん」
私と創君が両想いになるなんて無理だと分かってる。そんなの、100%起きないのは理解してる。
けど、もし何かの奇跡が起きて創君と付き合えるチャンスが来た時に、私に彼氏がいたらそのチャンスも潰れてしまうだろう。そんなことが起きたら一生後悔する。
「まあ、何にせよ私は綾香のこと全力応援するからさ」
「舞、、、」
「本当は一ノ瀬となんか付き合って欲しくないんだよ。けど、綾香の幸せが私の幸せだから」
「舞、ありがとう、、、」
とにかく、私からは創君に話しかけないし関わらない。
けど、何かの奇跡が起きてまた話しかけてくれる時が来たら、その時はまた創君と仲良くなるために全力で頑張る。
私にとって、創君の幸せが何よりも大事だ。だから、創君が私と話したくないなら話さないし、関わりたくないないなら関わらない。けど、創君と一緒にいることが許される時が来たなら、前のような過ちを犯すことはしない。
「創君の好きなものとかなんだろうなぁ」
「なんで?」
「創君のこと分かっていた方が話しやすいでしょ?」
「健気だねぇ。分かった、それは私が一ノ瀬のクラスの子に聞いておくよ」
「舞!ありがとう!」
私は本当にいい友達を持ったなぁ
「はぁー」
「どうしたのよ。そんなにでかいため息吐いて」
「うーん」
あれから数ヶ月が経ったけど、創君と話す機会なんて訪れていない。もうすぐ、1年生も終わる。どんどん時間だけが過ぎていく。
「また、一ノ瀬のこと?」
「うん、それもあるけどさ」
「何、他にも悩んでることあるの?」
創君のことも、もちろん悩んでる。
けど、最近はある噂に悩まされている。
「なんかさぁ、会長と私が付き合ってる噂が流れてるでしょ?いろんな人が信じてるみたいでさー」
「それ、私も聞かれたわ。学校中に広まってるよね」
「私も否定してるんだけど、あんまり意味なくて」
「まぁ、綾香と会長はお似合いだからねぇ」
「そのせいで、会長とも気まずくて、話せていないし」
「ここまで、噂広まったらどうしようもないかもね」
「創君に勘違いされたら嫌だなぁ」
「結局一ノ瀬かい」
「うん。創君が誤解していなければ何でもいい」
けど、話す機会が無いから何の意味もないけどね。
はぁ、また話したいなぁ。数ヶ月前のあの会話を思い出しては物思いに耽る。
「綾香、今日も一緒に帰るでしょ?」
「ごめ〜ん。今日は生徒会あるの」
「またぁ?」
「うん。ごめんね」
「まぁいいけどさ」
最近、生徒会が忙しい。今日は委員会の集まりがあるらしい。それぞれの委員会の代表にむけて生徒会が説明をする。私の担当は図書委員か。人に説明するのなんて緊張するなぁ。会長に会うのも気まずいし、、、
「失礼します」
生徒会室の扉を開ける。すでに生徒会のメンバーは集まっていた。
「高梨そろそろ始まるから席について」
会長が私に声をかける。
しばらくすると、各委員会の代表が生徒会室に入ってきて席に座る。
「あと、図書委員の代表が来てないな。会が遅くなるのもダメだから、そろそろ始めるか」
会長がそう言い、会を始めようとする。
すると、
ガラッ
「すいません。遅くなりました」
扉が開いて、男子が1人入ってきた。
その遅れてきた男子と目が合った
創君だった。
奇跡は起きたのかもしれない。




