新たな恋?
「綾香ちゃん、今日カラオケ行くけど来ない?」
「今日は生徒会あるから行けないの〜。ごめんね〜」
「おっ、高梨さんじゃん。またテスト1位だったね」
「うん、ありがと〜」
「高梨、今度サッカー部の大会あるから見に来てよ!」
「何にもなかったら、行くよ〜」
昼休みに廊下を歩いているとたくさんの人が声をかけてくる。
「あんたすごいね。学年中の人と仲良いんじゃない?」
「そんなことないって」
「昔、泣き虫だった綾香はどこ行ったの?」
「わ〜。舞、声大きいって」
中学生になってから、数ヶ月が経った。相変わらず舞と一緒にいることが多いけど、たくさんの人と仲良くなった気がする。昔は人見知りだったけど、今は人と話すのが楽しい。
「今日一緒に帰る?」
「ごめんね〜、今日生徒会あるんだ〜」
舞がため息を吐く。
「またなの?どんだけ忙しいのよ」
「仕方ないわよ〜」
「まぁ、あのイケメン生徒会長と一緒なら耐えられるか」
「え?」
「ほら、生徒会長めちゃくちゃイケメンじゃない」
「確かに、モテるってよく聞くけど」
「それに、頭も良いし、スポーツ万能で性格も優しいらしいじゃない」
「うん」
確かに、生徒会長は優しい
「あと、絶対綾香のこと好きだよね」
「え?」
「だって、生徒会も生徒会長に誘われたんでしょ?」
「うん」
入学早々に、声をかけられて生徒会に誘われた
「あなた達、美男美女でお似合いって噂になってるわよ。生徒会長も綾香に劣らず、芸能人レベルにかっこいいし」
「………………」
「もしも、もしもよ。生徒会長から告白されたらどうする?」
「………………」
「何その沈黙は」
「……………………」
「えっ?まさか……………」
そのまさかである。
「あんた、告白されたの?」
「舞、声大きいって〜」
「これで声小さくできる人いないわよ」
数日前に、生徒会長から告白された。入学してきた私に一目惚れしたらしい。
「はぁー、あのイケメンが一目惚れって、どんだけ可愛いのよあんたは」
「で、どうするの?もちろん告白受けるでしょ?」
「え、なんで?」
「別に今好きな人いないんでしょ?」
「………………いないよ」
「だったら、付き合ってもいいんじゃない?生徒会長って悪い噂聞かないし、誰にでも優しい良い人じゃない」
「それは……そうだけどさ」
「どこに、迷う余地あるのか私にはわからないわよ。イケメンでスポーツ万能で頭も良くて、性格も良い」
確かに、一般的に見たらそうなんだろうな。
「まさかあんた、まだ一ノ瀬好きなわけじゃないよね?」
「………………違うよ。流石に諦めたもん」
「そうだよね。安心した〜。一ノ瀬なんて会長の足元にも及ばないしさ」
「え?」
「だって、一ノ瀬と同じクラスの子に聞いたけど、あいつ暗いからクラスでも浮いてるらしいよ」
「………………」
「ほんと、どうしようもないよね〜。性格も悪いし、頭悪いし、スポーツも出来ないし」
「そんなことないよ!」
「綾香?」
「…………ごめん」
「私こそ、ごめん。一ノ瀬のことちょっと言いすぎたかも」
やっぱり、創君がバカにされてると嫌な気持ちになる。思わず、大きな声出しちゃった。
「けど、綾香と一ノ瀬が付き合うことは無理なんだから、新しい恋愛始めても良いと思うよ」
「…………だから、好きじゃないって」
嘘だ。私は創君を忘れることは出来ていない。
わかってる。創君と付き合うことは無理だって。けど、何年も好きだった相手をすぐには忘れられない。
「で、告白はどうなってるの?」
「断ろうとしたんだけど、会長が1週間考えてみてって言われて今は保留になってる」
「試しに付き合ってもいいと思うけどねぇ」
確かに、創君を諦めるためにも別の人と付き合うのも良いかもしれない。会長は私のこと大切にしてくれだろうし、付き合ったら楽しそうだ。
「うん、そうかもね…………」
放課後は生徒会の仕事があるので、生徒会室に向かう。生徒会に入って分かったことは、意外と忙しいことだ。学校の行事や委員会、部活など様々なことに関わるので、暇な時期は無い。
ガラッ
「遅くなりましたー」
「綾香ちゃん来たー」
「高梨さん、待ってたよ」
生徒会のメンバーはすでに集まっていた。今日は委員会の資料作成の仕事がある。
「高梨、急に呼んで悪かったな」
「いえいえ」
生徒会長が私に声をかける。
この中学校では、2学期に2年生から生徒会長を選ぶ。先月に、旧会長から現会長に代わった。圧倒的支持率で現会長は当選した。そのくらい、人望が厚いのだ。
「ねー、高梨さんって付き合ったことあるの?」
作業にダレてくると、いつも世間話が始まる。いつもはそんな話にならないけど、今日はなぜか私の恋愛の話になった。
「付き合ったことないよ」
「えー。なんで?こんなに可愛いのに?」
「なんでって言われても、、、」
「じゃあさ、じゃあさ好きな人とかいるの?」
「えーと、それは、、、」
「おい、作業に集中しろ」
私が困っていると、会長が注意してくれて助かった。
いつも、私が困ってると会長は助けてくれる。
確かに、モテる理由が分かるなぁ
「高梨、どうした?」
「え?」
「何かわからないところでもあるのか?」
私が作業が進んでいないといつも気にかけてくれている。もちろん、私にだけではなくて、生徒会のメンバー全員を気にかけている。
「今日はここまでだな」
会長がみんなに声をかけて作業が終了した。
「じゃあ、綾香ちゃん、バイバイ〜」
「バイバイ〜」
続々、生徒会のメンバーが帰っていく。
私はまだ、作業が残っているので帰らない。
「高梨、俺も手伝うよ」
「私1人で出来ますよ」
「いいって、2人でやった方が早いから」
本当に会長は優しい。裏表無くて、誰に対しても気を遣える。本当に尊敬できる人だ。
「ありがとうございます」
会長の助けもあって、作業はすぐ終わった。
「会長のおかげですぐ終わりました。ありがとうございます。」
「いや、いいよ。高梨が困ってたら助けてあげたいし」
「それって、、、」
会長の顔が赤くなっている。
私も照れてしまう。
「あのさ、俺も誰とも付き合ったことないから」
「えっ」
「さっきの話だよ。高梨誰とも付き合ったこと無いって言ってただろ。俺もまだ付き合ったこととか無いし、好きになったのも高梨が初めてだから」
こんなカッコいい人が誰とも付き合ったことないんだ
この人とならたくさんの、「初めて」を経験できるのかな?初めてのデートとか2人で経験できるのかな?
「告白も本気だから」
会長が真っ直ぐな目で私を見てる。
私の気持ちは揺れていた。まだ、好きとかは分からないけど、会長の気持ちは嬉しかった。付き合ってみたら会長のこと好きになるかもしれない。絶対私のこと大切にしてくれるし、幸せにしてくれるんだろうな
「会長の気持ち嬉しいです」
「いい返事待ってるね」
会長が私に笑いかける。
「私、出来た資料を職員室に運びますね」
照れてしまって、つい理由を付けて生徒会室を出てしまった。
告白受けてみようかな?私も前に進まなきゃだし
そんなことを考えていると転んでしまった。資料を廊下にばら撒いてしまった。
「いたーい。早く拾わなきゃ」
大量の資料を急いで拾う。考え事しながら歩くのは危ないなぁ。
その時だった。
「大丈夫か?」
「え?」
「はい、落ちたプリント」
しゃがみながら、プリントを拾っていた私は声がする方を向いた。
そこには、プリントを持った創君がいた。
「…………創君?」
「うん、そうだけど」
「えっ?」
思考が追いつかなかった。頭が真っ白になった。動揺を隠すので精一杯だった。
「はい、これ綾香のプリントだろ?さっき転んでたし」
「うん、ありがとう」
「それじゃ」
そう言い残し、創君は去っていった。
私変なこと言ってないよね?失礼な発言してないよね?
そんなことより、そんなことより、
創君と普通に会話できたの何年ぶり?
創君が私の名前呼んでくれたのなんていつぶり?
嬉しい、嬉しい、嬉しいよ。
一生話すことなんて無いと思ってた。また、名前呼んでもらえる日が来るとは思ってなかった。
資料を職員室に持っていき、生徒会室に戻る。
「高梨、遅かったな。大丈夫だったか?」
「…………はい」
「さっきの話の続きなんだけどさぁ」
会長の話が頭に入ってこない。さっきまで、会長の告白について考えていたけど、全て吹き飛んだ。
頭の中は創君のことだけしか考えられない
「会長、ちょっといいですか?」
「ん?なんだ」
「告白の返事なんですけど、付き合うことはできないです。」




