小学生の頃
昔は友達が少なかった。周りの子に避けられていたから。原因はわかっている。周りの子と何もかもが違っていたから。
お父さんが社長でとても裕福な暮らしをしていた私はその生活が当たり前だと思っていた。お母さんの方針で、普通の幼稚園に入ることになった時に、ようやく周りの子との生活の違いに気付いた。
明らかに周りの子と違う私に誰も近づいては来なかった。幼稚園ではいつも1人で遊んでいた。
どの子も親から私に対して失礼を起こさないように、近づかないように言われていたのだろう。
けど、そんな私に関係なく話しかけてくれた子がいた。それが、一ノ瀬創との出会いだった。
彼は本当に優しく、いつも1人でいる私と遊んでくれた
「なんで、はーくんはわたしとあそんでくれるの?」
そう聞いたことがある。
「おれがあーちゃんとあそびたいから、それだけだよ」
その答えに胸を打たれた。私の家のことを気にせず接してくれる唯一の存在だった。
そんな創君に私は恋をしていた。
その気持ちは小学生になっても変わらなかった。
小学生に上がっても私には創君しか友達がいなかった。1年生、2年生どちらも創と同じクラスだったので、いつも創君にくっ付いていた。そんな私を周りと馴染めるようにしてくれたのも創君だった。
全てにおいて私の王子様だった。
けど、3年生になって全てが変わった。
初めて創君とクラスが別れた。今までずっと隣にいた創君がいなくなることに耐えられなかった。
どんどん創君に依存していった。休み時間の度に創君のクラスに行き、放課後になると毎日遊んだ。休日も創君と一緒に過ごしていた。
私にとっては創君が全てだった。
彼にとっても私が全てであって欲しい。そんな思いから彼のことをどんどん好きになっていった。
しかし、ある時から彼の様子がおかしくなった。
「はじめ君いますかー」
いつものように私は休み時間に創君のクラスを訪ねていた。
「君、たかなしさんだよね?ぼくとも遊んでよー」
この頃、こうやって話しかけれることが増えた。
けど、私にとっては創君以外はどうでもよかった
「はじめ君としか遊ばないです」
「ちぇー、なんであんなやつと」
私が創君の名前を出して断る度に彼らは不機嫌そうにしていた。
「おい、いちのせ、呼んでるぞー」
私が休み時間に訪ねる度に創君は自分の机で寝ていた
「はじめ君、きょうも来ちゃった」
「あやかか、、、そんな来なくてもいいのに」
「なんで、そんなこと言うのよー」
「で、なんの用?」
日に日に創君が冷たくなっていった。
「用というか、話したくて来たんだけどダメ?」
「はぁ、、、まぁいいよ」
いつも創君は優しかった。私が悲しそうな表情を見せると、どんなに嫌そうでも話してくれた。
「またねー」
「うん」
けど、数ヶ月が経った頃に明らかな創君の様子が変わっていった。
私がどんなに楽しそうに話していても、全く笑ってくれないし、上の空だった。彼から話してくれることもなくなり、相槌しか打たなくなっていた。放課後も遊ぶことは減って、私から誘わないと遊ばなくなっていた。
休み時間会いにいっても、すぐ話を終わるようにされたり、私の目すら見てもらえなくなった。
少しずつ心の距離が離れていくのを感じた。
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次回からは当時の綾香時点で物語は進んでいきます。