全て俺が悪い
ここ数日、愛は学校に来ていない。
メッセージも送ったが、既読にはなるけど返信は無い
体調が治らないのかな?とにかく心配だ。
そして、俺自身の状況も変わっていた。教科書が頻繁に無くなったり、陰口ではなく面と向かって悪口を言われるようになった。康太も俺に話しかけることは無くなり、1人でいることが多くなった。
耐えるしか無い。愛が学校に来るまでの辛抱だ。
「ちょっといいかしら、一ノ瀬君」
「…………………何の用だ綾香。」
「あなたに愛ちゃんのことで話があるの。こっちに来て」
こいつとは関わりたくは無い。
しかし、愛の話なら聞くしか無い。
綾香に連れられて空き教室に入った。
「ここは誰も来ない場所だから安心して」
「話は何だ?」
「そう急がないの」
「お前とは関わりたくは無いんだ。早く要件だけ話せ」
「そんなに私って嫌われてるのね。悲しくなっちゃうわ」
本当に何の用なんだ。早く話せよ
「この写真見覚えある?」
綾香が差し出した写真は見覚えがあった。
どういうことだ?なぜこの写真をこいつが持ってる?
「その反応やっぱり知ってるのね」
「その写真に写ってるのは愛ちゃんよ」
「…………なんだと。」
「そして、その写真がインターネット上に流出したの。」
「は?どういうことだよ。だってこの写真は俺しか、俺しか知らないはずだ」
「流出が原因で愛ちゃんは今学校を休んでいるの」
「は?俺はそんなこと知らないぞ」
「あなたに会いたくないらしいわよ。あなたのことが信用できないそうよ。」
そうか、そうだったのか。あの子が愛だったのか。
「安心して。私の父に流出した画像は削除するように頼んでいるから」
「ああ」
「約束できる?もう愛ちゃんには関わらないで」
「ああ」
何を言い訳しても無駄だ。あの写真は俺しか持っていないはずだ。どこから流出したのかそんなのわかるはずもない。俺じゃないと言ってもどうやって証明するんだ?
ガキだった俺の恋が今終わった。
「話したいことある人がもう1人いるわ。入ってきて」
綾香がそう呼びかけると、康太が入ってきた。
「康太」
「おい創。お前最低だな。事情は全て知っている。あの画像が流出していることを見つけたのは俺だ。」
「そうか」
「それだけか?顔は映ってないけど、ほくろとか髪が明らかに愛だった。知り合いが見たらすぐ気がつくぞ」
「そうか」
「なんだその態度は?お前が流出させたんだろ」
「俺じゃない」
「お前しか考えられないだろ」
「お前も俺のこと信じてくれないのか?」
「誰が信じるんだよ。いいか。もう一切愛に近づくな。わかったか?」
「ああ」
「俺もお前とは絶交だ。一生関わってくんな」
そう言い捨て、康太は教室を出ていった。
「またひとりぼっちね」
綾香が笑顔で俺に語りかける。
「お前か?全部お前がやったのか?」
「さぁね」
「けど、あなたには私しかいない。これでよくわかったでしょ?」
翌日から愛はまた学校に来るようになった。
綾香と康太が説得し続けて学校に来ることを決心したようだ。
画像も流出が広まることはなく、全て削除されたそうだ
中学生の頃、俺は顔も名前も知らない女の子とインターネットで知り合い、メッセージでやり取りをしていた。
毎日のようにやり取りをしていた俺はいつの間にか、その子に恋をしていた。ひねくれていて、マセたガキだった俺はその子への思いが止められなくなって、自分の欲のまま要求をするようになった。
【顔写真送ってよ】
初めはこの程度の欲求だった。
しかし、彼女は頑なに顔写真を送ることを拒否した
【ごめんね。顔に自信ないの。幻滅されたくないから顔写真は送れない】
【だったら、顔から下送ってよ】
【えっ?】
【お願い、君を知りたいんだ】
中学生なんて性を意識する年齢だ。もれなく俺もそうだった。どんどん要求も欲求もエスカレートしていった。
【Tシャツめくった写真送って】
もっと見たい
【太もも見える写真送ってよ】
もっと見たい
【下着姿の写真も送ってよ】
一線を越えた要求だった。送った後すぐに後悔した
下着姿の写真が送られたのを最後にその子とは連絡が取れなくなった。
あんなに仲がよかったのに一瞬で終わってしまった
あの時の後悔はいつまでも俺の心に残っている。
あの時メッセージでやり取りしてた子が愛だったのか。
やり取りはメッセージだけで通話すらしたことがなかったので気が付かなかった。
そしてあの時送られた写真が流出してしまったのだ。
綾香が見せた写真は、あの時に俺に送られた写真で間違いない。
俺しか持っていない画像が流出したのだ。
綾香によると、愛は出会った時から俺があの時メッセージをしていた人だと気付いていたそうだ。
あれから、愛が俺に話しかけてくることは無くなった。目があっても気まずそうに逸らされる。
クラスメイトからのいじめもエスカレートしていった
毎日放課後には人気の無いところに連れて行かれて殴る蹴るは当たり前となっていた。
抵抗する気力も無くなっていた。生きる気力も無くなっていた。
「今日も疲れたな」
帰宅して、ベッドの上でそう呟く。
目を閉じると、康太のことや愛のことが思い浮かぶ。
「どこからおかしくなったんだろう」
なぜか綾香の顔が思い浮かんだ。
思えばあいつとの関係が変わってからおかしくなっていった。どこかで変わるチャンスはあったはずだ。
そんなことを考えていると幼少期からの出来事が走馬灯のように流れてゆく。
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次回からは幼少期から中学までの話になります。なぜ綾香と創がこのような関係になったのか明かされます。
創視点と綾香視点の両方で描いていくと思います。