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02王国の大会議


ここはネフェルタリ王国。

水と緑が織りなす風光明媚な北の大国は、代々ネフェルタリ王家がその繁栄を築いてきた。

王国はアルナム領、オーベン領、トネール領、ベルク領、レガロ領の五つに分かれ、それぞれを五大貴族が治めている。

アルナム領は王国の心臓部であり、政治と行政の中心地。

オーベン領は豊かな海と交易の拠点として栄え、

ベルク領は金色に輝く広大な麦畑を誇る穀倉地帯、

レガロ領は水害と闘いながらも、その卓越した土木技術で知られ、トネール領は屈強な戦士たちを抱える軍事の要。

これらの領地を治める貴族たちは、ネフェルタリ家への忠誠を誓い、王国の基盤を支えてきた。


その王国を治める現在の王は、ウィリアム国王。

ブロンドの髪と緑色の瞳は、ネフェルタリ家の特徴を色濃く引き継いでいる。

先王が崩御し、若干22歳で国を継ぐも、その手腕と冷静な判断力により民からの信頼は厚い。

今日も王宮の大広間では、各地の領主たちが一堂に会し、ウィリアムを中心に会議が進められている。


「ベルク領は、例年より豊作です、陛下」


麦畑を誇るベルク領の領主が、喜びをにじませながら報告する。


「天候にも恵まれ、民を養うだけでなく、食糧庫にも余裕ができる見込みでございます」


ウィリアムは穏やかに微笑みながら返答した。


「それは心強い。ベルク領の民と君の努力に感謝する」


ベルク領の領主が誇らしげに頭を垂れる一方で、空気を裂くように、宰相を兼ねるアルナム領の領主が、厳しい声でオーベン領主に話を向けた。


「オーベン領の貿易収入が減少していると報告を受けているが、何が原因なのだ?」


オーベン領領主は黒髪に白髪が混じりながらも、年齢を感じさせない若々しい顔立ちをしている、王国経済において極めて重要な役割を担っている人物だ。

皆の視線を受けても、彼は動じることなく、落ち着いた声で答えた。


「商人たちの安全が脅かされているのが原因の一つかと存じます。オーベン港周辺で海賊の活動が活発になり、船の運行に支障をきたしているのです」


その言葉に会議室はざわめいた。


「ならば我がトネール領の軍を派遣し、海賊たちを一網打尽にしてくれる!」


屈強な体躯を持つトネール領の領主が、力強く提案する。

だが、オーベン領主は冷静に首を振った。


「貴公の提案はありがたい。だが、貴公が動けば隣国との関係に影響が出かねない。我がオーベン領で、商人たちへの支援を強化し、護衛を増員して対応するのが妥当かと考えます」


その慎重な提案に、トネール領の領主が不満げに眉をひそめた瞬間だった。

会議室の隅に立っていたジュリアが、冷静な声で口を開いた。


「オーベン卿、護衛を増やすだけでは根本的な解決にはならないのでは?」


会議室の視線がジュリアに集まる。

まだ若い王女だが、その手腕を見込まれ、ウィリアムと宰相のアルナム領主の同意のもと、会議に参加していた。


「海賊が活動を活発にさせているのは、何かしらの理由があるはずです。その動機を探らなければ、同じ問題が繰り返されるのではありませんか?」


ジュリアの鋭い洞察に、オーベン領の領主は、目を細めて静かに笑う。


「王女、盗賊に高尚な理由などありません。ただの悪党どもです」


しかしジュリアはその言葉に動じることなく、冷静に反応する。


「そのように見下す態度はどうかと思いますよ、オーベン卿。ただ単に解決を急ぐのではなく、慎重に事態を見極めるべきです」


二人の間に張り詰めた緊張感が漂う。

その時、優しげな笑みをたたえた老人、レガロ領の領主が穏やかな口調で介入した。


「確かに海賊といえど理由もなく、船を取りますまい。ジュリア様のいう通り、何かしらの意図があるのかもしれません。ウィリアム陛下」


レガロ領の領主がウィリアムを見ると、ウィリアムは深くうなずいた。


「まずは情報を集めよう。トネール領から少数精鋭の軍を派遣してもらいたい」


その言葉に、オーベン領の領主の顔がわずかに険しくなったが、ウィリアムはそこで会議を終わらせた。

ジュリア ー ネフェルタリ王国の王女。この物語の主人公

ウィリアム ー ネフェルタリ王国の現国王。ジュリアの兄

アルナム卿 ー 宰相。政治中心地を治めるアルナム領領主

オーベン卿 ー 交易の拠点として栄えるオーベン領の領主

ベルク卿 ー 穀倉地帯を持つベルク領の領主

レガロ卿 ー 土木技術が優れるレガロ領の領主

トネール卿 ー 騎士たちを率いるトネール領の領主

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