母
娘が生まれたのに、夫は不倫していた。
離婚だけは嫌!
愛してるから嫌!
貴方の妻で居たい!
でも、夫は帰宅しても見向きもしない。
私は、私と娘は捨てられた?
その日、全ての家事を終えて眠れなかったからコーヒーでも飲もうと思った。
台所で料理酒が目に入った。
「これを飲んだら眠られる?」
料理酒を料理にしか使わなかったのに飲んでしまった。
「お酒、飲んだこと無いけど……なんかフワフワ……。」
その日からお酒が無いと眠れなくなった。
料理酒ではなく日本酒を買って飲んだ。
美味しいと思って飲んでいたのではない。
飲まないと生きていかれなかった。
生きていかれないと思っていた。
娘に暴言を吐くようになっていったらしい。
覚えていない。
娘が手首を切った。
慌てて救急車を呼んだ。
それを娘は幾度も繰り返した。
「もう、止めて!
そんなにお母さんを責めるの?
お母さんだけが悪いの?」
泣きながら横たわっている娘に言っていたそうだ。
娘が結婚した時、夫は出席した。
内情を知らなかったら娘を嫁がせる父と母……仲が良い家族に見えたのかも……。
あれから、直ぐに娘が不倫して家を出て行ったと聞いた時、「父親の血を引いているからだ!」と叫んでいたそうだ。
飲酒によって記憶が定かではなくなっていた。
娘が不倫して出て行ったと聞いてから、より一層、飲まないと生きられなくなった。
あの日、娘から電話が架かって来た。
不倫して出て行ってから初めてだった。
「手首、切っちゃった……。」
「どこにいるの?」
「家……。」
「家ってどこなの?」
「………あのね……。」
途切れ途切れに娘が住所を言った。
私はタクシーを呼んで娘の家に行った。
娘は手首から血を流していた。
直ぐに手首をタオルで縛り付けた。
そして、救急車を呼んだ。
救急車が到着するまでの間、私は浴室に流れている娘の血を洗うようにシャワーで流した。
それからは……救急搬送された病院で茫然として居たら、病院の事務の人から入院の手続きをしないといけないと言われた。
私はちゃんと文字を書く自信が無かった。
「そうだ。彼なら……。」
そう思って、娘の元夫に電話した。
元夫は来てくれた。
後は全て元夫に委ねた。
これなら安心できる、そう思ったから家に帰った。
私が悪かったのだろうか?
私のせいで娘はリストカットを繰り返すのだろうか?
ただ、一つ嬉しかった。
娘が私に電話を架けてくれたこと……嬉しかった。
あれから、娘は元夫の所から出て行ったそうだ。
今は、どこに居るのだろう?
お母さんが真面だったら、違っていたって娘は怒るだろう。
酷い母だったと今は思う。
「お母さんね。今、精神科で治療してるのよ。
治ったら、治ったら……謝らせて……。」
治ったら娘に会いたい。
許して貰えるなら………




