愛人
私が好きになった男性に妻が居ただけだった。
その妻の妊娠中から私たちの仲は深まった。
そう男女の仲になったのだ。
妻の座に居るだけの女に愛されている私が負けるわけなどない。
そう思っていた。
彼は離婚を妻に話してくれたが……
妻が同意しなかった。
何故? 愛されても居ないのに……。
もう夫婦生活は破綻しているのに……。
何故? 妻の座から下りない!
その座は私こそ相応しいのに……。
そう思っていた。
彼の娘が18歳になった頃……。
娘が自殺未遂を起こしたと会社の連絡があったそうだ。
その日、私の家に彼は帰らなかった。
愛していない子の所へ行くのは理解できなかった。
その頃から、彼が来てくれる日が少なくなっていった。
来ても直ぐに帰ってしまう。
今までと違う!
彼が帰って来てくれた。
嬉しい!
やっぱり、奥様の所へは離婚の話で行ってくれてたのね。
帰って来てくれた。
もう離れることは無い。
そう思っていた。
その日、彼からの話は……
「別れてくれ!」
「どうして? なんでなのよ!」
「妻も娘も精神的に不安定なんだ。」
「それがどうしたのよ。関係ないでしょう!」
「僕のたった一人の娘なんだ。」
「あなたは私と何年一緒だったのよ!」
「……すまなかった。」
「すまないで済ませる気なの!」
「出来る限りのことはする。」
「私の青春を返してよ!」
「本当にすまない。」
「行かせないわ。……行かせない。」
「君……何言って……。」
「あなたは私の全てなのよ!」
「……申し訳ない。でも、もう無理なんだ。」
「何が無理なのよ。」
「娘への罪悪感で……苦しいんだ。」
「だったら、行かなきゃいいのよ。」
「娘のことが気になるんだ。愛してるんだよ。娘を……。」
「今更……。」
「すまない。」
その日以降、彼は来てくれなくなった。
終わったのだ。
私は愚かだった。
今なら分かる。
今なら分かるのだ。
彼が愛したのは私ではなく、自分だったと……。
自分だけを愛していたのだと………。
さようなら。
もう二度と不倫なんてしないわ。




