表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/36

11・クロエの館潜入大作戦

《クロエ視点》



 ……というわけで、急遽わたしはグレフォード公爵にメイドとして雇われることになった。


 仮に目的が潜入捜査だとしても、ハワード以外に仕えるなんて嫌なのに……。


 だけどハワードの頼みだ。

 気合いを入れていかなければ。



「今日から新しくメイドとして加わったクロエちゃんだ。みんな、仲良くするように。小生はメイドの百合も好きですぞ。ぐへへ」



 とみんなの前で、グレフォード公爵に紹介される。


「クロエよ。よろしくね」


 わたしも頭を下げる。


 さすが可愛い子ばっかり集めてるだけあるわね。メイドはみんな、可愛かった。メイドにしてはじゃっかん、幼い子が多い気がする。それに渡された制服も露出が多い。こういうところもグレフォード公爵の趣味が反映されているようで、わたしは気色悪さを感じた。


 メイドのみんなはわたしに様々な視線を向ける。

 中にはわたしを憐んでいるメイド。わたしに分かりやすく敵意を向けてくる者もいた。


 まあ仲良くするつもりなんてないけど……早く、ここのメイドとして認めてもらう必要がある。そうじゃないと、情報収集がしにくくなるからだ。


「それでは、メイドちゃんたち! お仕事にかかるように! 今日は新人のクロエちゃんもいるから、親切に教えてあげてね。ぐへへ」


 グレフォード公爵がガマガエルのような笑い声を上げる。


 嫌なことは嫌だが……これもハワードのためだ。

 割り切って、仕事をしよう。


 こうしてグレフォード公爵家のメイドとして働き始めたが、早くもわたしは頭角を現したのだ。



「信じられない! 君一人で館内の全ての掃除と洗濯が終わらせただと! こんな逸材がいたとは!」

「まるで魔法を見ているかのようね! 料理が一瞬で完成して、しかも美味しい! まるで伝説の料理人と魔導士が融合したかのような。あなたはどこでこんな技能を身につけの!?」

「公爵様のスケジュールを完璧に管理するどころか、予定に合わせての準備も文句のつけどころがない!? まさに天才メイドじゃない!」


 

 ……と、わたしの働きっぷりに対して、みんなが賞賛と驚きの声を投げかける。


 だけど、この程度でどうして驚くのかしら?


 わたしはハワードのためになれるよう、彼の専属メイドになってから必死に努力をした。


 今となっては《ディアボリック・コア》も大所帯。

 必然的に雑用の数も増えてくる。

 それをわたしはほとんど一人で、こなしていたのだ。


 全てはハワードに褒められたいがため。


 わたしが仕事を終わらてハワードに報告すると、彼は決まって「やっぱりクロエは優秀だな。君が仲間になってくれて、本当によかった」と褒めてくれるのだ。

 そのために頑張っていると言っても過言ではない。

 だから他の人たちがわたしのことを褒めても「で?」としか思わないわけ。



「ほほお? なかなか動きのいいメイドがいるじゃねえか」



 そんなことを考えていると。

 一人、周囲の雰囲気とは浮いた女性がわたしに声をかけてきた。


「あなたは?」

「オレはリーナ・バトルハートだ。グレフォードの野郎の護衛として臨時で雇われている」


 野暮ったい口調。

 女性なのに「オレ」っていう一人称。

 公爵を呼び捨てにするどころか「野郎」と呼んでいる。


 明らかに怪しい女だ。


 しかしその出たちから、護衛というのは嘘ではないよう。


「そんなことより、オレはお前のことが気になるな」

「どういうことかしら?」

「メイドにしては動きがよすぎる。そう……まるで人間じゃねえみたいにな」


 と眼光を鋭くして、リーナが言った。


「あら、わたしみたいな美少女を見つけて『人間じゃない』って言うのは、ちょっと失礼じゃないかしら? わたし、ただのメイドよ」

「ハハハ! そりゃ失礼した。オレはここに護衛として雇われる前は、旅をしていてよ。その時に魔族とも戦ったんだ。何故かお前を見ていると、その時を思い出しちまう」

「ちなみに……その魔族はどうしたの?」

「決まっている。血祭りに上げてやったよ。オレに歯向かうヤツは全員敵だ。いや……歯向かわなくても敵かな?」


 ニヤリとリーナは口角を吊り上げる。

 リーナが嘘を吐いていなければ……だけど。彼女、相当な実力者みたい。魔族と戦って生きてられるなんて、並の戦士じゃ出来ないことだ。


「変なこと言って、すまなかったな。お前は仕事を続けてやがれ。だが……変な真似はするなよ? そうなったら、お前を敵として見なす」


 そう言って、リーナは大股で歩き去ってしまった。


 リーナ・バトルハート……。

 ただの護衛というわけではなさそう。

 警戒対象ね。



「クロエちゅわ〜〜〜〜〜ん。疲れてないかなあ?」



 わたしが謎の護衛、リーナのことを考えていると。

 不快な声が耳朶を震わせた。


「大丈夫ですよ、グレフォード公爵。こんなのでダメになるほど、柔な鍛え方はしていないので」

「さっすがクロエちゃんだね〜〜〜〜。君を一眼見た時からピンときたんだよ。君は最高の()()()だって」


 褒められても全く嬉しくない。


 そんなことより、脂ぎった顔で迫ってこないで欲しい。

 本当にこいつとハワードは同じ人間なのかしら? ……なんて感想も浮かんでくる。


 ハワード本人はそう思っていないけど、彼は間違いなくカッコいい。

 彼の嬉しそうに笑う姿、ふとした時に見せる寂しげな表情……そのどれも至高で、その度にわたしの胸の鼓動は早くなる。


「それに……仕事だけじゃなく、可愛いしね! 胸はちょっと控えめだけど……上向きの良いお尻をしてる。どれどれ……」


 とグレフォード公爵はさり気なく、わたしのお尻に手を伸ばした。


 パシンッ!


 わたしは反射的にそれを払いのけてしまう。


「失礼。虫がいたもので」

「う〜〜〜〜〜ん、こういう気が強いところも素敵だね! ツンデレってやつかな? ふふふ、小生はツンデレメイドも好きですぞ。ぐへへ」


 ちょっと不用意な行動を取ってしまったと肝を冷やしたが……よかった。怪しまれてはいないようだ。


「君のすることなら、なんでも許してしまいそうだよ! あっ、でも。館の地下にだけは行ったらダメだよ?」

「館の地下……ですか?」

「うん。長年手を付けていないせいで、下水道みたいに汚くなってるからね。気持ち悪い虫なんかもいっぱい出てくる! か弱いクロエちゃんだったら、悲鳴を上げちゃうかもしれないから」

「はあ……」


 曖昧な返事をする。


 汚いっていうだけで、わざわざ警告してくるのは不自然だ。

 あとで捜査する必要があるわね。


「そうだ。夜になったら小生の部屋に来なよ。()()()体に教えてあげるから!」


 グレフォード公爵はそう言い残し、スキップでわたしの前から去っていった。


 絶対に行くもんか。

 心の中で、グレフォード公爵に唾を吐き捨てた。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ