【短編版】義理の妹で童貞を卒業した事が親バレしたので、緊急家族会議の結果……義理の姉の家に追い出されました。
「判決を言い渡す」
「はい……」
「死刑」
「減刑を求めても宜しいでしょうか……」
「なら家を出ていけ」
「恩情に感謝致します……」
俺、大倉 夏焼は高校2年の夏休み、実家を追い出される事となりました。
「夏焼、最後に一つ聞いておきたい事がある」
「な、何でしょうか……」
「お前、冬美ちゃんとは何も無いだろうな……?」
「も、勿論であります!」
冬美──俺は冬姉とよんでいる。
彼女は俺の義理の姉に当たる人だ。
2年前、俺の父親が再婚して出来た義理の姉妹の姉の方。
しかし親父……冬姉との仲まで怪しむとは……
だがどうやら、それには理由があったみたいだ。
続く親父の発言が教えてくれた。
「大学進学と共に家を出た冬美ちゃんだが、女の子一人では心配なのもある。だが一先ず美亜ちゃんと距離を取らせる為にも、お前は明日から冬美ちゃんの家で暮らせ。連絡はしてあるから」
姉妹の妹の方、それが美亜。
……俺が童貞を卒業した相手だ。
しかし、どうして冬姉の家で暮らす事になるんだ!?
こう言っちゃなんだが、義理とは言え妹に手を出した男に下す処分とは思えない。
「……冬姉の家……?なんで……!?」
「分かってるな?冬美ちゃんにまで手を出せば──」
「だ、出す訳ねぇだろ!!」
「……1ミリも信用の無い事をよくもまぁ自信満々に叫べたな」
「申し訳ございません……」
「ほらさっさと家を出る準備をしてこい!!」
「はいぃぃ!!」
※
かくして俺は大倉家を追い出され、現在冬姉のアパートの玄関前に立っている。
少し寂れた感じがあるが、赴きがあって落ち着いた印象のあるアパートだ。
「ハハ……これから禁断の義理の姉との同居生活ってか……?なんてエロゲーだよこれ……」
一体どうしてこうなったんだ……
そもそも美亜に手を出したのが間違──いやそれを言うなら、親父が再婚なんかするから……
──違うか。
継母である琴美さんは凄くいい人だ。
親父も、厳しいがいい親だと思う。
二人の結婚は、俺も素直に嬉しかったし、そんな二人を悲しませて本当に申し訳ない。
何かを間違えたのは俺なんだ。
絶対手を出しちゃいけない相手なのに、誘われたからって、美亜を止められなかった俺が悪い。
もう親父と琴美さんを悲しませない為にも、冬姉とは何事も無く、高校を卒業してやる!!
──俺はそう固く決意し、インターホンを鳴らした。
『はーい!』
「あ、冬姉俺だ。夏焼だ」
『ん!ちょっと待ってね!』
部屋の奥から廊下に足が擦れる音が聞こえる。
防音面は少し不安だなぁ。
そんな風に思った時、ドアが開かれ約3ヶ月振りに冬姉と対面した──
「やぁ!義理の妹に手を出して家を追い出されたド畜生の我が義弟よ!!」
「やめろ!!ご近所さんに聞こえるだろうが!?」
再会早々とんでもない事を口走りやがって!?
「え?事実じゃん?私の可愛い美亜ちゃんと大人の階段登りやがってこのこの~」
「冬姉まずは家に入れてくれーー!」
俺の懇願が届いたのか、ふざけて笑っていた冬姉は、ようやくからかうのを止めて、家に招いてくれた。
「はいはい、ほら。荷物持ってあげるよ」
「……さんきゅ」
俺は靴を揃えて脱ぎ、廊下を通りリビングへと迎え入れられた。
そして可愛い猫が刺繍されたカーペットの上に正座で座る。
小さなテーブルを挟み、冬姉も差し向かいに鎮座した。
彼女は薄い金髪で、少し強めの眼差しを持つキレイ系の美人。
そして、豊満な胸を持つパーフェクトな女性だ。
「さてと、それじゃあこれから共同生活を送る上で、二人だけのルールを作ってあるから、まずはこれを読んで」
「わ、分かった」
冬姉が俺に手渡したのは、一枚のプリントだった。
そこに書かれていたのは──
「えーなになに……?"1つ、炊事洗濯等家事は全部冬姉に任せる事。2つ、その代わりに夏君は私のお願いを全て聞く事"……ナニコレ」
「ちょっと、まだ3つ目が残ってるでしょ!」
「あ、本当だ。"3つ、この共同生活で起こった出来事は誰にも言わない事"……いや意味が分からないんだけど……」
要約するとこうだ、身の回りの世話は全てしてやるから、冬姉の言う事は絶対。更に他言無用と。
……なんだこのルール。
とにかく俺は冬姉の説明を待つことにした。
「見たまんまなんだけどねぇ。このルールを守れないなら、夏君をここに住まわせる事は出来ないよ」
「い、いや1と3はまだ理解は出来るけどさ……2のお願いがどういう類いのお願いなのかで変わってくるって言うか……」
冬姉は俺の言葉に、怪しく微笑んだ。
「……教えて欲しい……?」
「あ、あぁ……」
「なら、こっちおいで」
自分の太ももをポンポン、と叩いた冬姉。
え、なにもしかして膝枕……?
……よく分からないが、俺はテーブルを周り、冬姉と膝が突き合う距離にまで近付いた。
「な、なぁ冬姉どういう──」
「えいっ」
「!?」
一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
俺の唇に、何か柔らかい感触がある。
目の前には目蓋を閉じている冬姉の顔。
──キス……!?
「……んっ……夏君ちょ~っと潤いが足りてないねぇ」
「ななな……何で……!?」
「私からのお願い事1つ目、毎朝こうしてキスして私を起こす事。異論反論一切許しません──」
冬姉は俺とのキスの味を楽しみながら、唇を嘗めた後、頬を赤らめて目を細めた。
「──返事は?」
「は、はい!」
「よろしい。誰にも内緒の関係の始まりだね夏君♡」
俺の固い決意は、1日も経たずに瓦解したのだった──
※
「お義父さん!お母さん!どうしてお兄ちゃんを追い出したの!?」
あたしは大倉美亜。
義理とは言え兄で処女を喪失した近親相姦上等な女の子。
そして、只今絶賛激おこ中なのだ!
理由は明白で、大好きなお兄ちゃんを勝手に、お姉ちゃんの家へと追い出されたからだ。
「言ったじゃん!お兄ちゃんがあたしを襲ったんじゃなくって、あたしから誘ったんだって!!」
「美亜ちゃん、とにかく落ち着いて──」
「これが落ち着いて居られるかー!!お母さん!お兄ちゃんを、お姉ちゃんの家にやったんでしょ!?」
「え、えぇ……何かまずかったかしら……?」
あたしのお母さんはのほほんとした人だ。
あの姉の恐ろしい一面を知らないから、お兄ちゃんをお姉ちゃんの家に出せたんだ。
「問題大有りだっての……!」
「み、美亜ちゃん私達の気持ちも分かってくれ。とにかく直ぐに何とかしないと、と思って。……再婚して仲睦まじい君達を喜んでいたら、まさか……」
「うっ……」
それを言われると困っちゃうよ。
……あ、あたしだって本当は最後までするつもりは無かったのに……
でもお兄ちゃんの凄く大きくて、気持ち良かっ──
こほん。
とにかく、今すぐお兄ちゃんを連れ戻さないと大変な事になる。
「二人に心配を掛けたのは申し訳ないよ……でもねあたしは本気でお兄ちゃんが好きなの。だからお姉ちゃんに取られたくないの。分かった?」
「え……と、取られるってどういう意味だい……?」
「ま、まさか冬美も──」
あたしはこくん、と頷いた。
「二人はお姉ちゃんが言ったから、お兄ちゃんをお姉ちゃんの所にやったんだよね……?」
「あ、あぁ……」
「つまりね、二人は騙されたんだよ!!お姉ちゃんはお兄ちゃんとの子供を作るつもりだよ!!!」
『えぇ!?!?』
あたしは邪魔してやるからねお姉ちゃん。
絶対お兄ちゃんは渡さない。
だってお兄ちゃんは、初めてありのままのあたしを受け入れてくれた人なんだから──
※
中学2年の冬頃、あたしに新しい家族が出来た。
厳しそうな強面のお義父さんと、顔はそこそこだけど、なよっとしたパッとしないお兄ちゃん。
初めての顔合わせの日、向こうの家族がせっかくだからホテルでディナーを、と言い出した。
あたしはお母さんとお姉ちゃんに、二人だけで行ってと伝えたの。
その頃のあたしは所謂不登校児で、家から出るのがとても怖かった。
なんで不登校になったか?イジメだよイジメ。
あたしね、すこーし変わった趣味があって、ある日それがクラスの皆にバレちゃったんだ。
よくある話でしょ?
でもそのよくある話は、あたしには初めての体験で、一度逃げるように家に引きこもると、二度と外へは出れなかった。
だから、せっかくの美味しいディナーも、向こうの二人には悪いけどあたしは行くつもりは無かった。
だと言うのに、お母さんとお姉ちゃんが、ディナーへと向かってしばらくが経った頃だ。
──ドンドン!!
「えっ!?なに!?だれ!?」
誰かが家のドアを壊れそうな程に叩いている。
嫌っ……怖い……!!
──ガチャッ
「鍵が!?」
なんで!?お母さん達が戻ってきたのかな……いや、でもあんな風にドアを叩いたりしない……
あたしは、自分の部屋で布団を被り、息を殺していた。
だけど──
「──見付けた」
「ひゃう!?」
「お前、何やってんのこんな所で」
見たことの無い男の子が、布団に隠れたあたしを見付け出した。
あたしから布団をひっぺがすと、男の子はパジャマ姿のあたしを見て、蔑みの眼差しを向けた。
「早く着替えろって。飯食いに行くぞ、顔合わせなんだから家族皆居なきゃ駄目だろ?」
「え……顔合わせって……あなたもしかして……」
「そうだよ、お前のお兄ちゃんになる男だ!」
「えぇ!?もっとイケメンが良かった!!」
「ひ、ひっでぇな……」
し、しまった。つい本音が。
夏焼と名乗ったあたしのお兄ちゃんになるらしい彼は、あたしの肩を持って無理矢理立たせようとした。
「ほら、行こうぜ」
「い、いやっ……!」
「……なんでそこまで……」
……あなたに言っても分からないよ。
家を出る事だけで足が震えちゃうこの気持ちは。
なんて言ったら諦めてくれるかな。
悩みながらも、頑張って告げてみた。
「……家からね、出ようとしたら足が動かなくなっちゃうの、怖いの……」
「……何かあったのか?」
「……イジメ……られてるのあたし。あたしなんかが居たら空気が悪くなっちゃうのっ……」
言っている内に、段々涙が溜まって視界がぼやけてくる。
でもお兄ちゃんになるこの男の子は、優しく頭を撫でてくれたりはしない。
代わりに──
「あー原因ってこの気持ち悪いポスターか?」
「うぅ!!」
──あたしを更に追い詰めてきた。
「そりゃあこんなBL丸出しのポスター掲げて、こんな趣味がバレたら皆遠ざかるよ……」
そう、これがあたしの趣味。
男性同士の絡み合いの絵を描いている所を見られて、皆から距離を取られてしまったの。
分かってるよ。気持ち悪いのなんて。
でもあたしはこれが好きなの!
初対面のくせに、いきなり現れて──
「ば、ばかにしないで!!!」
思わず大声を出してしまった。
ほ、ほらいきなりこんなこと言うから彼がきょとんとしちゃった。
──でも彼はすぐにふっと笑い、あたしの隣に座った。
「ばかになんてしてないよ。お前、これが好きなんだろ?」
「え……?う、うん……」
「気持ち悪いし、俺には興味無いけど……それでもお前が本気で好きな物をばかにはしないよ」
「!」
初めてだった。
友達は皆遠ざかって行った。
お母さんやお姉ちゃんだって、この趣味を辞めさせようとした。
だけど、この人は──お兄ちゃんだけは、あたしの趣味を否定しなかった。
目を見れば分かっちゃったの。
本心から今の言葉を言ってるって。
だから今のたった一言で、あたしの両目から大粒の涙が出ちゃったのは仕方ない事だった。
「お、おい……!?」
「あ、ありがとう……!あたし、今まで……ず、ずっと……!」
「あー……まぁそのなんだ。俺だけはお前の味方で居てやるよ、だから頑張って外に出てみろよ。美味しいご飯が待ってるからさ」
「うん……ねぇお兄ちゃん……」
「お、お兄ちゃん!……いい響きだな……あ、うんなんだ?」
何か感慨深いものに浸ろうとしていたお兄ちゃんに、そっと肩を寄せた。
「……手……握っててくれる……?」
「いくつだよお前……ほら」
お兄ちゃんは右手を差し出して、あたしがそれを掴むと、無理矢理気味にあたしを引っ張った。
「え、待って!?」
「ほらほら!!」
そのまま玄関へと連れ出されたあたしは、体全体が震えながらも、一歩外へと踏み出していた。
──繋がれた左手だけは震えていなかったことに、この時のあたしは気付いてはいなかった。
「ほら、出れるじゃん!」
「はは……強引すぎるよ、お兄ちゃん……」
「おい!?」
あたしは心臓の鼓動がうるさくて、段々と視覚も聴覚も遠ざかり、そのまま意識を失っちゃった。
結局その日はディナーに行けず、気が付くとお母さんとお姉ちゃんが帰って来ていた。
リビングのソファで眠ってたみたいで、お姉ちゃんがあたしの隣に座る。
「美亜、夏焼君はどうだった?」
「え?どうして知ってるの?」
「そりゃ鍵渡したの私だもん。美亜の事教えたら真剣な顔して飛んでったんだよ~カッコいいよねぇ」
「お、お姉ちゃんの仕業か……!」
こうしてあたしがソファで、熱を上げて倒れたのは、この姉のせいだってことだ。
この策士め……
で、でも……悪い出来事じゃ無かった。
そこだけは誉めてあげてもいい。
「いやぁ本当にカッコいいよね。これから義弟として接っさなきゃなんだよね……」
「お姉ちゃん……?」
「ん?あー何もないよ。ほら、グループ作ったから、美亜もそこで謝っときな」
「う、うん」
グループ……と言うことはお兄ちゃんとやり取り出来るように……!?
一緒に暮らすようになるまでの数日、あたしはずっとお兄ちゃんと連絡を取り、その想いを膨らませていく事となる。
左手に残った熱が消える事は無く、あの時の心臓の鼓動は恋心に変わって行く。
あたしがお兄ちゃんにこの想いを告げてしまったのは、2年後の夏の事だった──
お読み下さりありがとうございます!
☆☆☆☆☆に色を付けて頂けたりブックマーク等貰えましたら幸いです!
5/8追記
活動報告にて今後のお知らせを致しております!
ぜひ目を通して頂ければm(_ _)m
5/10追記
あらすじにも書きました通り連載版が始まりました!
加筆修正を加えた第1話と第2話前半までが短編分となります!
第2話後半からが新編となりますので、ぜひよろしくお願い致します!