26. ――― 裁判
「水の神ヒノーエア様、私の召喚に応えなさい。私に霊の源泉を与えたまえ!降臨せよ!水属性下級魔法《水流》発動!」
魔法陣が現れて水が噴き出した。
「できた!」
人民は自分が《水流》の発動に成功したのを見て嬉しくなった。
今、人民たちに魔法を教えている。
それに騎士のニュースも待っている。
でも、俺はただ人民たちに実用的な魔法だけしか教えない。例えば、《水流》など。
魔法を発動する時、まず人々に説明しながら手本を示した。
だが、魔法を勉強する前に、まず体内の魔力の流れを自由自在にコントロールすることを学ばなければならない。
俺は《魔糸》を人民たちの手首に結びつけ、《魔糸》を通じて俺の魔力を注ぎ、彼らの体内に伝導し、魔力を誘導して流れさせた。
そして、人民たちに魔力の流れを試しにコントロールさせて、魔法の呪文を教えて魔法を発動させてみた。
けど、人民たちの魔力が少ないので、魔法を発動できる回数も少ない。だから、俺は必ず彼らの魔力を俺の魔力で補足しなければ。
「水の神ヒノーエア様、私の召喚に応えなさい。私に霊の源泉を与えたまえ!降臨せよ!水属性下級魔法《水流》発動!」
魔法陣が現れて水が涌出した。
「やった!」
ひとしきり練習して、皆はもう魔法を発動するのができるようになった。
その成果を見て俺も嬉しくなった。
「ノルス様は我々に魔法を教えてくださり、感謝の言葉もありません」
カヲンは頭を下げて謝意を示した。
「いいえ。しかし、この方法は干ばつをしばらくの間解決できるだけだ、永久じゃない」
「そうですか……」
「けど、安心して。現在、クラースファ領には水利工事を継続している。完成予定は年末だ。その時には絶対、水不足の問題を完全に改善できるんだ」
「それを聞いて安心しました、ノルス様」
工事が完成すればきっと、水資源問題を解決できるだけでなく、クラースファ領をいっそう繁栄させ豊かにすることもできる。
「でも、ノルス様は私たちを助けてくださるが、我々はどのようにノルス様の大恩に報いるべきか分かりません……」
「俺は何か報酬を求めようと考えたことはないよ。お前たちが幸せならそれでいい」
「やっぱりノルス様は慈しみ深いです。もし将来、ノルス様が私たちの助けを必要とした時には、私たちは必ずノルス様をお助けします!」
「その時は頼むぞ」
「はい!」
みなの表情にはもう悲しみはなく、楽しい笑顔であった。
人民たちからありがとうと言われると、なぜか心中に満ち足りたものを感じた。
ふっと、人民たちを守りたい氣持ちが湧いてきた。
なんで……?
こんな気持ちは初めて。
俺は人民たちの笑顔を守りたい。人民たちが笑顔を失うのを見たくない。
「お知らせです。騎士団の人たちがグロス伯爵を取り押えて営所の外に来ました」
この知らせを聞くと、俺の口角が上がった。
いよいよかな。
「分かった。彼らを入らせてくれ」
「はい!」
その人は帷幕を出て俺の命令を伝達し、騎士団の者たちが入ってきた。そのあとには、 麻縄に縛られて強引に連行されるグロス伯爵。
「ノルス様」
騎士団の人々はみな、俺に跪いたが、グロス伯爵は跪かなかった。
そして見下げるかのように俺を見た。
グロス伯爵を見て、周囲の人民たちは不満な顔になった。
「私たちはノルス様の命令に従ってグロス伯爵を連れてきました」
「うん、わかっている」
グロス伯爵の前に行った。
これから、俺はグロス伯爵に対して裁判を行なう。
「グロス伯爵、何故俺を見て跪かないのか?」
「―――ペッ!」
いきなり、俺につばを吐いた。
「ノルス様の偽者め!どうして俺はお前に跪くのか!」
こいつめ、こんなに俺を蔑視するとは、到底許すことはできない。
グロス伯爵の所作は俺を腹立たせた。
こいつを許すわけにいかない。
《器具生成》。銅の棒を生成した。
《器具生成》は無属性王級魔法だ。どんな器具でも生成できる。
「この無礼者を押さえつけてくれ」
騎士たちはグロス伯爵を押さえつけた。
《火》発動。銅の棒を《火》で焼く。
「おっ、お前、何するつもりだ?」
「烙印のことを知ってるな?」
「らっ、烙印って……まっ、まさか!?」
グロス伯爵は俺の意図を知ったようだ。
前世で情報を集めたために、よく剥皮・烙印・鼻削ぎ・耳切りや針刺しなどの肉刑を行なって、人を痛めつけて自白させていたことを知っていた。
この世界で初めて烙印を行なう。
銅の棒が真っ赤になっている。
「グロス・ムリン・テヤダ。さっきの無礼の罪でお前を焼き印刑に処する」
「まっ、待て、ええええええええええーーー!」
真っ赤に焼ける銅の棒をグロス伯爵の額に当てると、苦痛に大声で叫んだ。
それから、炭火焼きのような香ばしい匂いがした。
この匂いを嗅ぐと、俺の空腹はぐうぐうと鳴り、さらに力を込めた。ついでに、腹いせをした。
烙印の苦痛に耐えられずグロス伯爵は気を失って倒れた。
弱虫め。ただ一回で気絶するなんて。
《水玉》発動。
グロス伯爵の顔に撃った。
《水玉》にむせられてグロス伯爵が目を覚ます。
「お前、烙印はどうだ?」
「わっ、私が間違っていました。かっ、勘弁してください、ノルス様」
許しを請うグロス伯爵。
さっき俺を辱め、意地を張って屈服しなかったのに……。
「お前を許すのか?許さないのか?うんん、少し考えよう」
「ゆっ、許してください。わっ、私の無礼の罪を許してください、ノルス様」
と、土下座した。
こいつを許すなんて、そんなわけないだろう。
多くの無辜の民を殺したのだから、そんなに簡単には許せない。
再度《火》を発動した。
「こいつの服を脱がせろ」
騎士たちはグロス伯爵の服を脱がせた。
「また一回」
「ゆっ、許してください、ノルスさまああああああああああーーー!」
胸に烙印を行なった。
果たして、また倒れた。
「……っ」
《水玉》を発動してグロス伯爵を目覚めさせた。
「お前、三回目が欲しい?」
「ほっ、欲しくないです、ノルス様」
「欲しくなかったら、俺の質問にちゃんと答えろ」
「はっ、はい」
「じゃ、お前。干ばつが起こっていたのを知っていたくせに、なぜ救済を行わなく、かえって租税を上げたのか?そしてなぜお父さんに許可されることなく、無断で鎮圧命令を下したのか?」
「わっ、私はただブッレイモントの提案によって実施したのです」
ブッレイモントって……誰?
「そのブッレイモントは誰だ、カヲン?」
「はい、ノルス様。ブッレイモントはテヤダの奸臣です。このすべてはブッレイモントが発案したものです」
「そうなんだ……」
しかし今、騎士たちを派遣してブッレイモントを逮捕するのは遅い。
そいつ、おそらく逃げただろう。
でも、大丈夫だ。
《飛行》や《疾走》を使って全速力を出せば、追いつける。まだ間に合う。
そして―――暗殺する。
「そっ、そうです。ぜっ、全部はブッレイモントの策略です、ノルス様。わっ、私とは関係ありません」
こいつ、全然反省していない。全部の責任をブッレイモントに転嫁するつもりだ。
「俺はお前の答えが気に入らない」
「なっ、なぜですか、ノルス様?わっ、私が言うのはすべて本当の話です」
「……っ」
うるせぇな。
こいつを黙らせて欲しい。
「三回目」
「うううううぅぅぅ……」
こいつの口に烙印をした。
この光景は実に見るに忍びなく、人々は目を閉じた。
気絶したグロス伯爵を《水玉》に気を戻らせた。
三回の烙印で俺は鬱憤を晴らした。
「さて、グロス・ムリン・テヤダ、お前の虐殺の罪の判決処分は、まず、ムリン家の爵位を子爵に降爵する。そして罪人、グロス・ムリン・テヤダは残忍な手段で無断に無辜の人民たちを鎮圧した罪によって死刑を言い渡す!」
この判決は人民たちの期待に沿うものだった。
「こいつを斬首せよ」
「「はっ!」」
烙印されたグロスには抵抗する力もなく、二人の騎士は彼を連行して斬首を執行した。
グロスが斬首されたのを見て、人民たちの憎しみがついに消えた。
「それにテヤダのみな、今年はテヤダ政府に納税する必要はない。詳細については俺がクラースファに帰り、告文を書く」
「我々を助けていただき、心より感謝いたします」
テヤダのみなは俺にお辞儀した。
「そうだ、ノルス様、危うく忘れそうになりました。ノルス様の身分証です」
団長は身分証を俺に渡した。
「ありがとうな」
「お役に立てて嬉しいです。正直、私もグロス様の行為に不満を感じていました、ノルス様」
この団長の言葉は本意じゃない、ちょっと偽りだ。
多分、彼は俺に近づくつもりだろう。
「まあ、俺はそろそろ帰るぞ。早く帰らないと、お父さんが心配するから」
「わかりました。さようなら、ノルス様」
話を短く切り上げ、団長が俺に媚びる隙をあたえなかった。
俺は軍営を出た。
「さようなら、ノルス様」
「さようなら、みな」
みなに手を振って別れを告げ、《飛行》を発動した。
でも、終りではない。
暗殺任務があるから。
俺は俺に対して有害である人を全員殺す。
初めてこの世界で暗殺を執行する。
高空から俯瞰し、《周囲感知》発動した。
……いた。
やはりそいつは逃げている。
そいつを逃がすわけにはいかない。
《風》をかけて追う。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




