24. ――― 解決方法
もう正午になった。乾燥した強い日に直射されてとても暑くて、汗をかいた。
今は昼食の時間だ。早く解決して帰らないと、お父さんとお母さんだけでなく屋敷の人々をも心配させてしまう。
「ほっ、本当にテヤダを助けてくれるのですか?」
「本当だよ」
「あっ、ありがとうございます、ノルス様」
「よかった。これでテヤダは助かる」
全員が深々と頭を下げて礼を言ったが、その中の一人が嬉しくて涙を流した。
グロス伯爵を厳罰に処する以外に、俺もテヤダの人民たちに革命組織を解散させて彼らをそれぞれの元の生活に復帰させる方法を考えなきゃ。
ちくしょう、グロス伯爵野郎。自分が災いの種を蒔いたくせに、なんとこの俺にその尻ぬぐいをさせやがって。
あいつはお父さんになにも知らせず、無断で鎮圧行動の命令を下した。この行為は全然お父さんを無視した暴挙だ。しかも、あいつが鎮圧行動をしたせいでほかの領土にクラースファ領の悪い印象を與えるかもしれない。
本当にクラースファ領の恥だ、あのグロス伯爵は。
怒髪天を衝いた。
「もういい、立ち上がろう」
「はっ、はい」
彼らは立ち上がり、あの人も袖で涙を拭いた。
「さっき言ったように、俺はお前たちの村長に会いので、道案内してくれる?」
「はい、ノルス様を道案内できるなんて大変光栄です」
よし、これで革命軍の根拠地に行ける。でも、次にどうやって村長を説得し組織を解散させるか?
その手段は最良で最速じゃなければ。
……一つの方法を考えたが、どうかわからん。……まあ、やってみよう。
ポケットから身分証を取り出し、そばに立っている騎士に渡したが、騎士は疑わしげに俺を見た。
「ちょっとお前にやってもらいたいことがある」
「はっ!どのような命令でも従います」
「うん、ありがとう。じゃ、まずお城に行ってあのグロス伯爵を取り押えて、革命軍の根拠地に連れて来てくれないか。いい?」
「それは……」
って、騎士は躊躇した。彼は伯爵を恐れるばかりで動こうとしない。やはり伯爵との距離がありすぎて、権勢に怯えるのだろう。
でも、そりゃ心配ない。あのグロス伯爵は俺の身分証を見たら、きっとおとなしく手向かわないで捕らえられる。
だから、騎士に俺の身分証を渡したんだ。
「安心して。ただ、俺の身分証を呈示して、これが俺の命令だと言えば彼は絶対に抵抗しない」
「なるほど、わかりました。私、今すぐ城へ向かいます」
騎士が礼をして馬に乗り、手綱を取って城に向かおうとした時、また一つのことを思い出した。
「待て」
「どうしましたか、ノルス様?」
「もう一つ頼みたいことがある。お前たち騎士団の団長も連れて来てくれ。俺が会いたいからだ」
「はっ!では、ノルス様、行ってきます」
手綱を引くと馬がヒヒーンと一声高く嘶き、城の方へ向かった。
あとは騎士の良いニュースを待つだけだ。
「さてお前たち、道案内してくれ、村長のそこへ」
「はい。じゃあ、ノルス様、こちらへご案内します」
「うん、行こう」と俺は頷いた。
それでテヤダの人民たちに案内され根拠地へ行く……。
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通りには馬蹄の音が響く。あの騎士は顔つきが落ち着かなく、馬を駆ってテヤダの城の方へ急いでいる。
ノルスに重要な任務を委任されたので、彼は自分に与えられた使命を果たすため一刻も早く目的地に到達して任務を完遂しなければならない。また道中襲撃されないようにずっと警戒心を持ちつづけなければならない。
この騎士の名前はアリベル・クシュースだ。騎士団に勤務して、もう三年。
通りの光景を見ると、周辺の家はすべて略奪に遭い、ひどく壊され痛めつけられて血があたり一面に流れ広がっている模様。
アリベルは思わず心の中で感嘆した。『いったい騎士になる意義はなんだ?』と自分が騎士として行ってきたことを悔いた。
騎士になるには二つの方法がある。一つは世襲、もう一つは試験を受けること。そして、その試験科目は三つある、筆記試験、魔物退治、そして対戦だ。
試験は三年ごとに地方政府が行い、総合ポイントの上位の五名は騎士になれる。
しかし、世襲にしろ試験にしろ、領主に冊封されないと、騎士の爵位は与えられない。
騎士たちにとって、栄誉のほうが自分の命より大変重視される。上の指導者の指令に従って自分の命を投げ捨てても任務を完遂する精神。これは騎士たちの行動準則だ。
これ以外、社会の秩序を守って犯罪者を成敗するのも騎士たちの仕事だ。だからこそ、騎士たちも人民たちに尊敬される存在となる。
でも、現在のテヤダはそうではなかった。バランスが崩れた。
テヤダの騎士たちはグロス伯爵が言いつけたことを完遂するために、人民たちを殺戮していた。それゆえ、人民たちは騎士たちを尊敬しなくなり、恨むようになった。
アリベルは時々自分が騎士になったことを自慢していたが、今の気分はあまりよくない。たくさんの罪なき人々を殺して人民から唾棄されたことを思い起こすと、後ろめたく感じた。
こんな気分はアリベルに殺戮がテヤダにとって何のためにもならなかったのを悟らせた。干ばつはまだ解決されていない。
『ノルス様の言ってのとおりにしたら、きっとテヤダに平和がもたらされる……間違いない!』と思った。
ノルスの命令については、アリベルは先に騎士団の団長に報告したほうがいいだろうと思い、一緒に方法を相談してノルスに委任された命令を執行しようと考えた。
アリベルはそう決めると、馬にむち打っていっそう速く疾駆させて、城に進む……。
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やっと城が見えた。アリベルは門の前に馬を止めて降りた。
門に立っている二人の兵士はアリベルに礼をした。
「アリベル様、お帰りなさい」
「お疲れ様です、アリベル様」
「お前たちもお疲れ」
「「いいえ」」
「そして、俺の馬を馬屋へ引き入れておいてくれ」
「「はい」」
「俺はまだ団長に用事があるので、それじゃ」
アリベルは言い終わると、向きを変えて、急いで団長のオフィスに向かった。
城の二階に上がってオフィスのドアの前で立ち止まり、ノックした。
「入って」
部屋からしっかりした男の声がした。
「はっ」
アリベルはドアを開けて入った。
部屋には体格のいい堂々とした50歳くらいの男が一人、机に向かって座り、執務中だった。彼はテヤダの騎士団の団長、名前はフェディグ・ヨセリだ。騎士団に勤務してもう二十七年、ベテランの騎士だ。
「失礼します、団長」
「アリベルか。どうした?そんなにイライラして……」
「団長、まず、これをご覧ください」
アリベルはポケットからノルスの身分証を取り出して渡すと、フェディグはそれを見て驚いた。身分証にはノルス・ガルメスの氏名が書かれていた。
「こっ、これは……」
「はっ。これはノルス様の身分証です」
フェディグは身分証を何度も確認するたびに顔色が蒼くなっていった。
「……偽物じゃない……っ」
ノルスの身分証には透かし・モアレ・クリア・彩文などの偽造防止印刷があるから、本物だと思ったが、フェディグもなぜアリベルがノルスの身分証を持っているのか疑った。
「しっ、しかし、なぜお前がノルス様の身分証を持っているのだ?これはいったいどういうことだ?」
「はっ、団長。実はノルス様が先ほどテヤダにいらっしゃいました」
「なっ、なに!?お前はノルス様がテヤダにいらっしゃったっていうのか、本当か?」
「間違いありません」
ノルスがテヤダに来ることをフェディグは全く予想だにしなかった。
「おっ、お前が言っているノルス様はあの神童と呼ばれるノルス様だな?」
「はっ、そうです、団長」
「でも、なぜノルス様はここにいらっしゃったのだ?」
「ノルス様はグロス伯爵様の急信を見て、こちらに来て人民たちが起こした革命を解決するためだとおっしゃいました」
「なるほど。しかし、暴動を解決するには、まずノルス様はグロス様と一緒に対策を相談するべきだが、どうしてノルス様はお城にいらっしゃらない?」
「すいません。私にも分かりません」
「そうか……まあいい。じゃ、ノルス様は今どこに?」
「革命軍の根拠地にいらっしゃいます」
フェディグは再び驚いた。ノルスが革命軍の根拠地に行くとは思わなかった。
「ノルス様がそんなところに行くとは」
「どころで、団長、ノルス様が我々騎士団に命令を下されました」
「ほう?どんな命令だ?」
「鎮圧を止めて、グロス伯爵様を取り押えて、団長ともども革命軍の根拠地に来るようにとのことです。なにかお二人におっしゃりたいことがあるそうです」
「うんん、鎮圧を止めてノルス様に会いに行くことはできるが、グロス様を取り押えるのはちょっと……」
「安心してください、団長。ノルス様はこの身分証を示せば伯爵を取り押えることができるとおっしゃいました」
「そうか……」
フェディグはノルスが人々に神童と呼ばれて、そして当今の公爵家の長男であり、将来爵位を継承する可能性が大いにあると思い、この機会を利用してノルスに近づくことができれば、出世して金をもうけることができるかもしれないと考えた。
自分の利益のために、やると決めた。
「わかった。お前は何人かの兵士を召集して、グロス様を取り押えろ」
「はっ」
アリベルはオフィスを出て任務執行の準備をした。
フェディグはノルスにグロス伯爵への何の恨みがあるかは知らないが、栄誉のためにもそのとおりにするしかないと覚悟した。
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白皇 コスノ 拝啓




