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22. ――― 干ばつ

 今、俺は自分専用のオフィスで執務している。オフィスは二階にある。


 俺の机の上は工事についての報告とデータで埋まっている。


 でも、この部屋には俺だけではなく、何人かの幕僚もいる。彼らはお父さんから非常に信頼され、お父さんに対して非常に忠実な幕僚たちだ。

 もちろん、彼らも俺が提出したクラースファ領の水利工事に関する計画を処理することに真面目である。


 クラースファ領の水利改革についての世論調査を見てみると、人民の95パーセントが賛成し、残りの5パーセントは無回答だ。

 次の報告書を読んだ。今月は先月より水源を奪い合うために武力闘争が三割減った。この結果を見て嬉しかった。


 今のところ、闘争を完全にゼロにすることはできないが、俺はいつかきっと闘争事件がゼロになると信じている。


 この時、オフィスのドアが開かれアイラがワゴンを押して入ってきた。ワゴンの上にはアイラが淹れたばかりの紅茶をいれたポットとカップがのっている。


 アイラは紅茶をポットからカップに入れ、その場にいるみなに配った。


「ご主人様、どうぞお飲みください」

「ありがとう、アイラ」

「とんでもありません、ご主人様」


 カップを取って紅茶を飲んだ。


 この紅茶は味が濃くもなく薄くもなく、まろやかだ。


「うまいな」

「身に余るお褒めの言葉をいただき、大変光栄に存じます」


 それにこの紅茶は体にしみわたり俺をすがすがしい気持ちにさせた。

 思わずもう一口飲んで自分を少しリラックスさせた。


 突然、ドアが開かれた。

 一人の男が大急ぎで駆け込んできた。その男もお父さんに従う幕僚だ。


「大変です、ノルス様」

「何があったの?」

「はい、ノルス様。テヤダのグロス伯爵から急信が送られてきました」


 また手紙が送られてきた……。


 俺が政務を始めてからというもの、何度となくクラースファ領の貴族たちは手紙を送ってきて、俺に彼らの問題を解決してくれと助けを要求してきたので、すっかり慣れてしまった。


「お目通しを」


 その男はその手紙を俺に渡してきたので、俺は封筒を開けて読んだ。


『急呈。ノルス・ガルメス様。走り書きのほど、お許しください。実を言うと、テヤダにはもう八ヶ月も雨が降らず、苛烈な干ばつが起こっています。それゆえ、テヤダの民衆が暴動を起こし始めました。ついては、ノルス様にご協力いただけないでしょうか?不尽。グロス・ムリン・テヤダ』


 テヤダはクラースファ領の西の辺境に位置していると覚えている。俺が企画した水道は領都クラースファを中心にして辺境まで延び、ほとんど出来上がっているが、辺境は未完のままだ。


 水道の完成予定は年末だ。でも、年末まで待っていては、暴動は収拾がつかなくなるかも。それに、完成が遅れるかもしれない。

 だから、俺は必ず暴動を静めなければならない。しかし、どうすればいいのか?……雨が降っていないのだから、雨を降らせたらいいだろう……。


「わかった。俺は今すぐテヤダに行く」


 俺の話は幕僚たちを驚かせて全員が俺を見ている。


「でっ、でも、ノルス様、クラースファから馬車でテヤダまで行くのに少なくとも三日間はかかります……」

「いいや、テヤダへは一時間ぐらいだろう」

「……すみませんが、ノルス様、それはどういう意味ですか?」

「飛ぶのさ」


 幕僚たちはまた俺の話に驚かされた。


「とっ、飛びますか?」

「そう、《飛行》を使えば、一時間ぐらいでテヤダに着けるはずだ……多分」


 テヤダに行ったことはないが、俺の計算によるとテヤダまで一時間ぐらいかかるだろうと思った。


「なぁ、アイラ、窓を開けて」

「はい」


 アイラは俺の命令に従い、後ろの大きな窓を開けた。

 俺は《浮游》を発動すると、足下に魔法陣が現れてゆっくりと宙に浮かんだ。


「おっ、お待ちください!ノっ、ノルス様は本当にテヤダに飛ぶのですか?」

「うん、そのとおりだ。残りの報告とデータはお前たちに任せるよ。そしてお父さんに俺はテヤダに行くと伝えてくれ。俺はすぐ帰る。それじゃ」


 《風》を発動して窓の外へ飛びだした。早くテヤダへ到着するために、俺は300の《風》を重ね合わせてスピードを上げた。

 幕僚たちが窓から空を見ると、俺は瞬間的に彼らの目の前から姿を消してしまった。


「言葉だけでなく、ノルス様の行動はいつも人々を驚かせますね」

「でも、僕はノルス様が将来賢明な君主になると確信しています。ラフィダート様はノルス様が継承者であることを明確に示していませんが、ラフィダート様の行為はすでにノルス様を継承者であると示しています」

「確かにね。ノルス様は小さい時からすぐれた才知を持っている。それにふるまいも落ち着いている。君主の風貌がある」

「ノルス様が私たちを心から信頼して任せてくださった以上、失望させてはいけません。さっさと仕事を片付けましょう」

「そうですね。頑張ろう」


 幕僚たちはそれぞれの持ち場に戻って仕事をし始めた。



 ✮✮✮✮✮



 一時間ぐらい飛行してやっとテヤダに着いた。


 グロス伯爵の手紙に書かれたことが事実であるのを確認するために、俺はテヤダの町の周りの農地に降りた。


 やはり田畑の作物はすべて枯れ、土壌も乾いてひび割れている。

 気温が高く、汗をかいた。


 見たところ、グロス伯爵はうそをついていないようだ。

 すぐにここに雨を降らせ、早く屋敷に帰って政務を続けよう。


 《収納箱》からウィンチェスターライフルを取り出し、大量の魔力を注ぎ込むと魔法陣が現れた。

 俺が発動する魔法は《雨降り》だ。


 《雨降り》は水属性超級魔法、天気魔法の一種だ。


 周囲には風が吹き始めた。ウィンチェスターライフルを上げて、銃口を空に向けた。

 だが、引き金を引こうとする時……。


「助けて!」


 誰かが助けてと叫んでいるようだ。


「助けて!誰か僕を助けてくれ!」


 魔法の発動を止めて銃を下ろすと、風も止んだ。

 声は近くから聞こえてきた。一体何が起こったのか?


 助けを求めた声の方を向くと、俺は二人の騎士が馬に乗って一人の二十代に見える男を追いかけて殺そうとしているのを見た。


 犯人を逮捕しようとしているのか?しかし、騎士たちとその男の様子では、そうではないように見える。


 騎士たちの剣が赤い物質に染まっているのを見て、悪い予感がした。そりゃ血か?


 でも、このままじゃ、その男は騎士たちに殺されるかも。俺は見殺しにしてはいけない。


 ウィンチェスターライフルを取り上げ、二人の騎士の顔に《水玉》を二発撃ち込むと、彼らは手綱を引いて追いかけるのを止めた。その男はこれを機に逃げた。

 俺は騎士たちのところに向かって行った。


「誰が?!」

「俺だよ」


 騎士たちは俺が子供であることにびっくりした。


「子供?!」

「まさか、お前も暴民か?」


 暴民?……暴民って、暴動する人民たちか?


 騎士たちは敵意を抱いて俺を(にら)みつけている。


「やれやれ、俺は助けに来たのに、暴徒と見なされるとは……。本当に善意があだになる」


 騎士たちのさっきの行為から推察すると、あのグロス伯爵がきっと騎士たちに暴動を鎮圧するような命令を下したに違いない。

 鎮圧は暴動を解決するよい方法じゃない。かえって人々をさらに怒らせて逆効果を生む。


 俺はグロス伯爵に会って鎮圧行動をやめさせないと。


「俺はグロス伯爵に会いたいことがあるので、お前たち、俺を彼のもとに連れて行ってくれるか?」

「クソガキ、伯爵様はお前が会いたいからって会えるわけじゃない」

「お前はさっき魔法で俺たちを攻撃したので、すでに傷害罪が成立している。お前を逮捕する」


 こいつら……。もっと早く問題を解決して早く帰りたかったのに、想い通りにはいかないな。


 どうやら、悪戦は避けられないようだ。ウィンチェスターライフルに魔力を注入して戦いに備えた。

 騎士たちは手綱を引いて俺に向かってきたので、その一人の騎士を狙って引き金を引いた。

 発射したのは俺自分が創造して《魔網》という魔法だ。


 《魔網》は《魔糸》をもとにして獲物をもっと便利に捕らえるために創造した網狀の魔法だ。


 《魔網》が一人の騎士を包んだ。騎士はもがくが、《魔網》の特性はもがけばもがくほどきつくなるから、もがいて逃げるのはできない。もう一人の騎士。


 その騎士は俺に剣を振ったが、ウィンチェスターライフルを盾として攻撃を防いだ。

 もう一度魔力を注いで騎士に《魔網》を発射し、同じく騎士を包んだ。


「貴様!」とその騎士ももがくが逃げられない。


 ウィンチェスターライフルを《収納箱》に入れた。


「いくらもがいても無駄だよ。お前たちには《魔網》から逃げる術はない」


 今のテヤダの状況はもう最初に考えていたように単純じゃなくなった。徹底的に理解しなきゃ。


「くそ……煮るなり、焼くなり、お好きなように!」

「俺はお前たちを殺したくないので落ち着け。お前たちとじっくりお話ししたいけど、いい?」


 騎士たちはもがくのを止めたが、表情は俺をとても軽蔑しているように見えた。


 俺は《魔網》を解き、騎士たちを釈放した。

 ポケットから手紙を取り出した。そう、これはグロス伯爵が俺に送ってくれた手紙だ。


「実は俺はグロス伯爵の要請を受けてテヤダを救うためにここまでやって来た」


 騎士たちに手紙を渡すと、彼らは手紙を読み目を丸くした。封筒にはムリン家の紋章があるからだ。


「お前は一体何者だ?」

「俺はノルス、ノルス・ガルメスだ」


 騎士たちは俺の名前を聞いて驚いた。彼らはもう俺が現在の公爵の長男であることを理解したようだ。

「とても面白い!」

「読み続けたい!」

「更新を期待です!」


とか思いましたら

是非下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちでまるで構いませんか!

よろしくお願いいたします。




                  白皇 コスノ 拝啓

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