21. ――― 政務
あっという間にもう二年が過ぎ、七歳になった。
俺は将来、お父さんの公爵の地位を受け継ぐため、この二年間ずっと領地の内政を勉強してきた。
前世の記憶のおかげで、理解するのに時間はかからなかった。
内政の主な学習内容は、領地内がどのような状況にあり、それに対してどのような政策を実施するべきか、それによってどれほど民心を得て敬愛を博せるのかを考察することだ。
俺の知る限りでは、多くの諸侯の中でガルメス公爵家が人々に最も喜ばれている。領地内の犯罪率が最も低く、しかも勢力範囲は最大だ。
実は、ガルメス公爵家には約700の諸侯が従属し、クラースファ領の面積はグロルートス王国の面積の4分の1ぐらいを占めている。
お父さんが支配しているクラースファ領は王国の東南に位置する藩国だ。每年王国に税金収入総額の三十パーセントをもたらす。
我らクラースファ領には十分な力があり王国から独立できるが、お父さんは王族に非常に忠実で戦争が嫌いだから、独立しようとしない。
内政の勉強にはより多くの時間がかかるが、魔法と剣術の授業は必ず受けた。
俺の剣術は、速さではすでにケールとほぼ同等であり、戦えばかろうじて引き分るが、俺は依然としてケールに勝つことを目標として続けている。
魔法なら、すでに王級魔法を習得し熟練の域に達している。しかし、王級レベル以上の聖級と神級魔法は神様に選ばれた者だけが使える。今この世界には聖級と神級魔法ができる者は聖女だけだ。
聖女、神様の代わりに人々を助ける存在。聖女は現在、リオラーキット教皇国にいて人々のために病気を治療しているし、彼女も現在の教皇の娘だそうだ。
魔法はこれ以上に上達することはないが、ロアの話では、この世界においては人族は王級魔法までが限界だそうだ。ロアがそう言ったのを聞き、慰められた。
それでも俺はまだあきらめてない。必ず聖級と神級魔法を習得する。
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誰かが俺の体を揺すっている。柔らかい手だ。
「ご主人様、起きてください」
女の声だ。
もう朝なのか?まだ寝続けたいけど……。
目を開けると、目の前に一人の女が立っている。その女はメイド服を身に纏っている。そう、彼女は俺専属の使用人、アイラだ。
アイラも七歳になった。すごく可愛く、いつも元気があふれている。それに人に対して優しく、事を捌くのも用心深くて慎重である。
俺にとってアイラはとても適任の助手だ。
「おはよう、アイラ」
「おはようございます、ご主人様」
俺は起きて背伸びしてベッドから立ち上がり、アイラは俺が普段着に着替えるのを手伝ってくれる。
最近、ずっとお父さんと政務を処理して手が離せなく、体がなまってしまっていた。
「はい、終わりました。ご主人様、まず顔を洗いに行きましょう。そのあと朝ごはんを食べていただきます。ご主人様、今日の朝ごはんはわたくしの自信作です!」
「それは楽しみだな」
アイラも料理できるようになった。アイラが作った料理はいつもすごくうまかった。
「行こう」
「はい」
俺たちが部屋を出て裏庭へ向かおうとすると、レーリナとレーリアに会った。
「おはようございます、お兄様」
「おっ、おはようございます、兄上」
「おはよう、リナ、リア」
レーリナとレーリアは四歳になり、金色の長い髪、青色の瞳と健康的な肌をしており、可愛らしい女の子たちだ。色で区別しないと、見るだけではどちらがレーリナかレーリアかはわからない。
でも、彼女たちの性格は異なる。レーリアは明るくて活発なのに、レーリナの性格は内気で照れ屋だ。
まさかレーリナとレーリアがこんなに早く起きてくるとは思わなかった。通常この時間、レーリナとレーリアはまだ寝ているのに。
「リナ姉様と私は裏庭に行きます。お兄様は?」
「そっか、俺もちょうど裏庭へ行くところだ」
「それなら、お兄様と一緒に行ってもよろしいですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます、お兄様」
レーリアは言い終わると、俺に抱きついた。
「お兄様が大好き〜」
その仕草がとても可愛いと思い、レーリアの柔らかそうな金髪を撫でた。
楽しそうなレーリアの表情を見るのはうれしいが、レーリナは口を尖らして嫉妬しているように見えた。
「リっ、リアはずるいです!わっ、私も兄上に頭を撫でてほしいです!」
レーリナも言い終わると、俺に抱きついてきた。
俺がレーリナの頭も撫でると、レーリナも楽しそうな表情をした。
にわかに俺はまだ重要なことがあることを思い出した。
「さて、そろそろ裏庭へ行こう」
「えっ?!私はまだお兄様に頭を撫で続けてほしいのに……」
「だっ、だめですよ、リア。これは兄上の命令ですから、背いてはいけません」
「わっ、わかりました……。申し訳ございません、お兄様。わがままを言いましたから、お許しください」
レーリアが頭を下げて謝った。
「まあ、気にしないで、リア」
「はい……」
レーリナとレーリアの会話は俺を喜ばせた。
今のところ、「お兄様の命令には背けない」という思想はすでに彼女たちの心に刻み込まれ、洗脳が成功しているようだ。
「じゃ、行こう」
「はい、お兄様と一緒に行きましょう」
「かっ、かしこまりました」
レーリナとレーリアの笑顔はやはり可愛い。
「お兄様、手を繋いでもよろしいですか?」
「いいよ」
レーリアは俺と手を繋いだ。
「わっ、私も兄上と手を繋いでもよろしいですか?」
「いいよ」
レーリナも俺と手を繋いで頬を赤く染めた。
そして、俺たちは廊下を歩き、階段を降り、裏庭に来た。
アイラは井戸まで行き、蛇口を開けてバケツに水を入れた。
実は、俺はクラースファ領の水利工事に関する計画を立てて執行している。
クラースファ領だけでなく、この世界のほとんどの人が水資源を手に入れるのは大変苦労している。
そのため世界中の作物の生産量は毎年のように不足している。また、水源を奪い合うために戦争が起こっている、などなど。
そして、クラースファ領の領民の八割近くは字が読めない。多くの人はお金がなく学校に通えないから、当然多くの人は魔法で水を製造できない。できるとしても、失敗することが多い。彼らはどうやって魔力の流れを制御するのかがわからないからだ。
これらの事情にかんがみ、お父さんに人民の生活用水を改善することを提案した。
なぜかというと、用水不足はずっとお父さんを悩ませていたから、俺はお父さんに水利改革についての計画と目的のすべてを進言した。
それから、お父さんは俺の意見に賛同してくれ水利改革のすべてを俺に任せてくれた。
俺は職人に蛇口を作るように命じて屋敷の裏庭の井戸に設置した。お父さんとお母さんは蛇口を開けると水が出るのを見てびっくりして、「さすがはノルスが発明するものだ。お前に任せれば、用水の問題は改善できると思う」とお父さんが言った。
水道は俺が発明したんじゃないけど……。当然、蛇口だけでは役に立たない。必ず水道施設及び灌漑システムが完備されなければ、改善できない。
領民を幸福にしているように見えるけど、これは俺がクラースファ領を支配していくための第一歩でもある。
「さすがご主人様が発明した水道です。やっぱりとても便利だと存じます」
ちょっと苦笑した。
ちなみに、現在の工事はもう6割ぐらい完成した。うまくいけば、今年の年末に完成するはずだ。
俺たちは顔を洗った後、ダイニングに行った。
ダイニングに着いたら、お父さんとお母さんはもう食事を始めていた。
「おはようございます、お父さん、お母さん」
「おはようございます、お父様、お母様」
「おっ、おはようございます、父上、母上」
「おはよう、ノルス、リナ、リア」とお父さんが言った。
「おはよう、ノルス、リナ、そしてリア」とお母さんが挨拶した。
俺が椅子に座ると、レーリナとレーリアは俺の両側に座った。
「あなたたち、本当に仲がいいわね」とお母さんが微笑んだ。
レーリナとレーリアはすごく甘えん坊だけど、うまく利用すればきっと計画はすぐに完成できるだろう。
今日の朝ごはんはハムを使ったハムクロワッサン、ベーグルと茶碗蒸し、さらにラテもある。いずれも俺の好物だ。
「いただきます」
早く朝ごはんを食べて政務の用事をすませよう。
「とても面白い!」
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白皇 コスノ 拝啓




