20. ――― 誕生日プレゼント
やがてパーティーは終わり、人々は互いに別れを告げて次から次へと馬車に乗り屋敷を後にした。
今、俺は屋敷の門に立ってホードマンたちを見送っている。しかし、アンティとジェリはまだ俺の両腕に抱き着いている。婚約を結んでからずっとこの状態だ。
名残り惜しいような目で俺を見ている、別れたくないみたいだ。
「アンティ、それとジェリ、そろそろだよ」とホードマンが言った。
しかし、彼女たちは手を放さなかった。かえって俺の両腕をきつく抱きしめた。
「嫌です!私はノルス様と離れたくないです!」
「アンティの言うとおりで、私もノルス様と別れたくないです!」
アンティとジェリは泣き始めた。
ホードマンはこれを見て思わずため息をついた。
「……はぁ~」
何と言ったらいいか分からないので、俺は黙るしかなかった。
だが、このまま両腕を抱きしめられていては、まずいと思った。
それ故に力を入れてアンティとジェリの手を振り払った。
「あっ!?」
「あっ!?」
と、俺の振る舞いに驚き顔を上げるアンティとジェリ。
「俺は両親の言うことを聞かないやつが嫌いだ」
俺に嫌いだと言われた彼女たちはショックを受けて頭を下げた。
効を奏した。
俺はこうして彼女たちの心を傷つけるかもしれないとは思いながら、彼女たちをずっとわがままにさせないために、そうせざるを得なかった。
「でも、安心して。俺たちは将来、永遠に会えないわけじゃない。ただしばらく別れるだけだから。正直、お前たちと別れるのは俺も辛いよ」
「ノルス様……そうですね、またノルス様に会えますよね」
「先ほどノルス様にとんだ失礼をいたしました。本当に申し訳ございません」
彼女たちが頭を下げ謝ったのを見て、俺はほっとした。
「気にしないで。そうだ!お前たち、ミルコノを買った?」
「はい、ノルス様、私の部下に買ってくるように命令しました」
「安心した」
ミルコノがあるなら、魔物の攻撃が受けることもないだろう。
「お気遣いいただき、ありがとうございます、ノルス様。さあ、アンティ、ジェリ、帰ろう」
「はい、お父様」
「かしこまりました、おじ様」
彼女たちは馬車の方に歩き出したが、馬車に乗ろうとした時、振り返り走ってきて俺の頬にキスをした。
その瞬間に顔が赤くなった。女の子たちに頬にキスされるのは初めてだった。
彼女たちは微笑み、馬車に戻って手を振って別れを告げた。
「さようなら、ノルス様」
「さようなら、ノルス様」
「さようなら」
俺も手を振って別れを告げた。
馬車のドアが閉まり、車夫が手綱を引いて馬車を進めた。
その姿が視界から消えるまで、彼女たちを乗せた馬車を見送っていた。
その姿が消えると、突然、心にわけの分からない寂しさが湧いてきた。
『まさか、俺は彼女たちが好きになった?』と胸に手を当てて自問してみた。
答えはYesのようだ。
この時、俺はやっと分かった。なるほど、これが恋人と別れる時の気持ちなんだ。
好きになるなんて……、思わなかった。でも、この感じは悪くない。
心を整え、振り向いて屋敷に戻った。
今度彼女たちに会えるのが楽しみだな。
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相続権を入手し、婚約をし、誕生日パーティーも成功裏に終えたのも喜ばしいけれど、疲れがどっと押し寄せ睡魔に襲われた。
もう真夜中になり、自分の部屋に戻った。
「坊ちゃま」
「ノルス様」
いきなり、誰かが俺を呼んだ。
振り向くと、そこにはケールとロアがいた。
「どうしたの?」
「その、坊ちゃま、誕生日おめでとうございます」
「誕生日おめでとうございます、ノルス様」
「ありがとう、ケール、師匠」
「ノルス様に誕生日プレゼントをあげると言ったではありませんか?」
ロアがそう言うのだから、そのようなことがあったのだろう。
そうだった、彼らは俺のためにプレゼントを準備すると言って屋敷をしばらく離れていたのだ。
「そうだったね……」
ケールとロアはどんなプレゼントを準備したのか?期待している。
「はい」
まず、ロアは俺に一つの木の箱を手渡した。
俺は木の箱を受け取ったが、この箱はちょっと重い。
箱の中のものが気になる。
「開けてもいい?」
「いいですよ」
箱を開けると中にはたくさんの本があった。
本を取ってタイトルを見ると、全部が王級魔法に関する本だ。
これらは俺にとって実に素晴らしいプレゼントだ。
ロアに王級魔法を教えてくれるかと聞いたことがあったが、次の授業でプレゼントを準備すると言って、返事をくれなかった。
サプライズをしたかったのか。
「どうですか?気に入りましたか?」
「はい、とても嬉しい」
「ノルス様がこんなにも喜ぶのを見て、私もうれしいです!中には私が書いたノートもありますので、多分ノルス様の迅速な理解を助けるはずです」
「ありがとう、師匠、俺は絶対に大切にする」
ロアは笑った。ロアがこんなに嬉しそうに笑うのを見るのは初めてだ。
ロアを見て俺も嬉しくなった。
「俺もプレゼントがあるよ、坊ちゃま」
ケールも俺に木の箱一つを手渡した。
「開けよう」
「はい」
箱を開けたら、中に十本のかっこいい匕首が見えた。
試しに一本を取り出してみると、すごく軽く、重さをほとんど感じられなかった。
鞘から匕首を抜いてみると、匕首の刃先は非常に鋭い。匕首を振ると、とても使いやすいと思った。
「坊ちゃま、どうだい?」
「とても軽く、鋭く、品質もよく使いやすくて、気に入った」
「気に入ってもらえて嬉しいよ。しかし、坊ちゃまが匕首に興味があるなんて思わなかった」
「変か?」
「いいや、変じゃないけど……」
匕首は俺にとって不可欠なものだから、ケールに匕首があるかと聞いたのだが、答えは「すまん、匕首はない」だった。
だから、ケールが匕首をプレゼントしてくれるとは思いがけなかった。
「その匕首は一般的な匕首じゃないぞ。エンチャントがあるさ」
「なんの魔法がエンチャントされている?」
「確か……《速度増加》、《斬り鉄》、《堅固》と《軽量化》だと思う」
多重エンチャントか。これらの匕首はおそらく高いだろう。なぜなら、多重エンチャントができる人が少なく、成功率も非常に低いからだ。
「ノルス様、よろしければ、私もそれらの匕首にエンチャントさせられますが、よろしいですか?」
「師匠がエンチャントする?」
「はい」
ロアがエンチャントするとは思わなかった。
「わかった。いいよ」
ロアは魔法の杖を上げて詠唱する。
「神様よ、私はここで祈ります。私に魔法を防御する力を!」
床に魔法陣が出現し、光が10本の匕首を包んでいった。
この光景を見て、内心では賛嘆してやまなかった。
「無属性超級魔法《魔法防御》」
それで、すべての匕首に魔法陣が現れた。
もしかして、ロアは一回で直接にすべての匕首をエンチャントするの?!それに超級魔法をエンチャントするのか!
どうやら、そうだ。
「エンチャントせよ!」
ロアが杖を下に振ると、魔法陣は一瞬にして強烈なまぶしい光を放った。
数秒後、光が消えた。
ロアは《天眼》を使い、エンチャントが成功したかどうかよく確認した。
「……よかった。エンチャントは成功しました」とロアはほっとした。
ロアの言葉を聞き、やはりエンチャントの成功率は低いと思った。だけど、俺もエンチャントを学びたい。チャンスがあったら、ロアにもエンチャントを教えてもらおう。
「エンチャントをありがとう、師匠。そしてプレゼントありがとう、ケール」
「どういたしまして」
「いいえ」
《収納箱》発動してこの二つの箱を入れた。
「朝は早く起きて兵士たちを訓練しなければ、俺は先に寝る。おやすみ」
「もう遅くなりました。私も寝たいです。では、おやすみなさい、ノルス様」
「おやすみ、ケール、師匠」
俺たちはそれぞれ自分の部屋に戻った。でも、なぜか疲れが消えた。むしろ興奮して心が弾んだ。
さあ、徹夜して王級魔法を勉強しよう!
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




