19. ――― 婚約と継承権
いきなり俺は大勢の前でプロポーズされ、頭が真っ白になってしまった。
前世では恋をしたことがなく、プロポーズどころか、告白さえされたことがなかった。
ちらっと見ると、お父さんも彼女たちの行動に驚いたようだ。
目の前に跪いている二人の少女はとても美しい。俺の好きなタイプだ。
「あの……その……」
話せないほどドキドキしている。心臓が激しく鼓動している。
雰囲気がすごく重くなった。
グロルートス王国の法律には結婚できる年齢は明文で規定されていない。つまり、未成年でも結婚できる。
結婚制度では、グロルートス王国は一夫多妻制だ。
「お前たち、何をしているの?」
一人の男は大声で叫び、素早く人ごみの中から進み出て、俺の前に土下座した。
この男の声は以前聞いたことがある。けど、誰だ?
「お父様?」
「おじ様?」
彼女たちは男が土下座したことに戸惑っている。
「お前はホードマン?」とお父さんが聞いた。
「はい、私です、ラフィダート様」
ホードマン……この名前も聞いたことがあった。……思い出した!彼は俺が魔狼の群れから助けた馬車のあの男だ。
なるほど、彼女たちはその時に救った少女たちだ。
「申し訳ございません、ノルス様。彼女たちはただ冗談を言ったまでで、真に受けないでください」
「お父様、私たちは本当に心からノルス様を愛しています。冗談ではありません」
「アンティの言ったとおりです、おじ様。私たち、本気です」
「……っ」
反駁されたホードマンはさらに頭を下げて黙った。
状況はますます複雑になった。
「では、お前たちがノルスを好きになった理由を教えてもらえるか?」
ちょうどお父さんは俺が知りたいことを聞いてくれた。彼女たちにプロポーズされた理由が全く分からない。
「ノルス様は私たちを助けてくれました」
「その時、私たちはノルス様に一目惚れしました」
「ノルスがお前たちを助けた?」
お父さんは納得できない顏をした。
「それはどういうことだ、ホードマン?」
「はい、ラフィダート様。私たちがクラースファへ向かっている時、魔狼の群れの攻撃に遭いましたが、一人の子供が現れて、すべての魔狼を退治しました。その子供の姿と声は、ノルス様によく似ています。ですから、私はノルス様が私たちを助けてくれたのではないかと思っています」
やばい、魔物を倒しに行ったのを見られてしまった。
人々はホードマンの話を聞くとざわつき始めた。
「子供が魔狼の群れを退治したなんて……」
「それに、ホードマン卿はその子供がノルス様だと思い込んでいる」
「そんなわけがないんだよ!」
お父さんは振り向いて俺を見た。
「ホードマンの言ったのは本当か、ノルス?」
お父さんの表情がとても厳粛に見えた。
「たっ、確かに僕です、お父さん」
冷や汗を流しながらお父さんに答えた。
「本当に!?ノルス様が魔狼の群れを倒した?……っ」
「信じられない。……ノルス様は神童だ」
「ノルス様は大いに見込みがある」
皆がショックをうけているが、彼女たちはかえって嬉しくなった。
「やっぱり、あの人はノルス様です」
「ノルス様はお強い!」
少女たちがさらに愛慕する目で俺を見つめてくるので、思わず再び顔が赤くなった。
「……まあ。ここでは話しにくいことだから、お前たち、そしてノルス、私と会議室へ行こう。皆様、続いて美酒と佳肴を楽しんでください」
お父さんは振り向いてステージを去った。
ホードマンたちは「はい」と言って立ちあがり、お父さんの後ろについて行った。
ため息をつき、会議室へ行った。
途中、少女たちは絶えず俺を振り返って、時々俺に微笑みかけてくれた。
彼女たちが本気で俺を好きなら、彼女たちを利用して俺の勢力を強化できると思った。
会議室に入ると、お父さんはソファーに座った。
「立ってないで、座ろう」
「はい」と俺たちもソファーに座った。
少女たちは俺の両脇に座り、恋人ように俺に腕を絡めてきた。
ホードマンと俺は苦笑するしかなかった。
早く童貞を卒業したいけど、五歳の男児なので性欲がない。
「お前たち、本当にノルスのことが好きなのだね」
少女たちは「はい!」とはっきりと答えた。
「……ええと、お前たちの名前は?」
俺はまだ少女たちの名前を知らない。
「はい、私の名前はアンティレーナ・サクッサスです。アンティと呼んでください」
「私の名前はジェリス・カーオミタです。ジェリと呼んでください」
左側に座っている少女はアンティで、右側に座っているのはジェリだ。
「カーオミタ……そうだ、なぜさっきコールシュに会えなかった?」
「すみません、ラフィダート様。お父様は用事があり、ノルス様の誕生日パーティーに来られなくなってしまいました」とジェリが言った。
「そうか。用事があって来られない以上、しょうがないな」
「ご理解いただきありがとうございます、ラフィダート様」
「なぁ、ノルス、彼女たちのプロポーズについてどう思う?」
お父さんがそう聞いたが、どう答えたらいいかわからなかった。
急にアンティとジェリは俺の腕を強く抱きしめ、同意して欲しいと哀願する目で俺を見ている。
よく考えると、今彼女たちのプロポーズに応じたら、おそらく俺の計画の邪魔になるだろう。でも、彼女たちは俺にとって利用価値があるかもしれない。
「嬉しいけれど、今は結婚する気はありません」
「えー!?どうして?」
「えー!?どうして?」
アンティとジェリは大声で言って悲しく泣きそうな顔をしている。
「しかし、よかったら、婚約したいです」
婚約を結ぶのは、一番よい方法だ。彼女たちを俺の支配下に入れることができる。
それにアンティとジェリのことをよく知らない。だから、軽率に結婚してはよくないと思う。
「婚約を結ぶのか?」
「はい、お父さん」
「うむ、わかった。婚約なら認めよう」
「でも、ラフィダート様、これはっ……」
ホードマンはお父さんに睨まれて口を閉ざした。
「アンティ、それとジェリ、ノルスと婚約したらどうだい?」
「ノルス様と婚約しますか?」
「すみませんが、ラフィダート様、婚約とはなんでしょうか?」
「婚約は簡単に言えば結婚の契約だ。この契約を結べば、お前たちとノルスは婚約者関係になる。この契約によってお前たちは将来ノルスと結婚できるようになる」
「本当ですか?!」
「本当ですか?!」
「本当だよ」
アンティとジェリはもとの可愛い活発な顏になった。
「それなら、私は婚約を結びたいです」
「私も契約したいです」
彼女たちがそう言うのを聞いてお父さんも嬉しそうに笑った。
「じゃ、ノルス、いつ結婚するかを決めるか?」
「僕たちが成人になる時です」
「そうであれば、しばらく時間を待つことになるね」
この世界では18歳が成人だ。成人になる時パーティーを催して祝う習慣もある。
18歳まではまだ13年ある。その間に彼女たちを完全に支配することができる。
お父さんは紙とペンを取って書き始めた。書き終わるとその書類を俺に渡した。
これが婚約の契約書か。內容を確認して俺、アンティ、ジェリがサインした。
こうして、アンティとジェリは俺と婚約を結んだ。
「これでいい。お前たちはすでにノルスの婚約者になった」
彼女たちは有頂天になり、もう一度俺の腕を抱きしめた。
「だが、コールシュはまだ婚約を結ぶことを了解していない……」
「ご安心してください、ラフィダート様。帰ったら、コールシュ様に伝えます」とホードマンは言った。
「お父様は私たちとノルス様が婚約することを聞いて、きっと喜んでくれます」
ジェリは満足したように頷いた。
「そして、私はお前たちだけに教えたいことがある」
俺たちだけに教えたい?どうやら、お父さんには非常に重要なことがあるようだ。
「それはノルスを私の継承者としたい」
お父さんが突然俺を継承者にしたいと言い出したことに驚かされたし、うれしかった。
「ですが、ラフィダート様、どうしてこのことをみなに知らせないのですか?」
「彼らに知らせたらきっとノルスを特別視するに違いない」
なるほど、俺を天狗にしないために俺たちだけに教えたのだ。
しかし、俺は他人からおべっかを言われるのが嫌いだ。
「僕は絶対にお父さんの期待に背きません」
お父さんは俺がはっきりと誓いを立てたのを見て安堵したようだ。
継承権を手に入れたけれど、計画はまだ終わらない。
すべてが俺の計画どおり。さあ、次のステップに進もう。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




