16. ――― 興味
アイラは体を綺麗に洗い、お父さんは専門の仕立屋を招き、アイラ用のメイド服を作らせた。
リリはアイラの着替えを手伝い、化粧を彼女に施し、基本的な礼儀作法を懇切丁寧に教えた。
「こんにちは、ご主人様」
アイラは俺にカーテシーをして挨拶した。
綺麗な煌めく長い銀髪、三つ編みにして、サイドポニー、ぱっちりとしたサファイアのような瞳、雪のように白い肌、新調したばかりのメイド服を着ている。
アイラはリリの礼儀作法の訓練を受けていたが、立ち居振る舞いにはまだ落ち着きがない。
「うん、こんにちは、アイラ」
アイラは顔を上げて俺に微笑んだ。
やべえ、アイラの笑顔が大変可愛い!
「よくできましたね、アイラちゃん」
「いいえ、これはリリ先輩の教えのおかげです」
俺はアイラとリリが喋ったり笑ったりしているのを見て、安堵した。
アイラはこの仕事に慣れつつあるようだ。恐怖心も薄らいでいくだろう。
これらの結果はすべて俺の計画通りだ。
さて、次はアイラの潜在能力を引き出すことだ。
アイラの潜在能力を引き出したいが、どうすればいいかわからない。
「お知らせです、ノルス様。もうすぐ剣術の授業時間になります」
「うん、わかった。ちょっとあとで訓練場に行く」
「はい」
前にケールと対戦したが、集中にかけ何度となく彼に敗れた。
今度は絶対に勝ってやる。
しかし、ケールの速度と力はまるで異次元のような存在。
《身体強化》と《周囲感知》を発動しても、やはりケールの固有スキル《神速無双》と《剣豪之力》には劣る。
しかも、《冷静判断》、このスキルによってケールは冷静に対戦相手に対処することができる。
ケールはベテラン剣士でもあり、戦闘経験も豊富だ。
ならば、ケールを倒すには彼の隙を見つけて攻撃するしかない。
しかし、ケールには一分の隙もない。
まったく付け入る隙がない。
「けんじゅつ?……失礼ですが、ご主人様、剣術とは何ですか?」
「剣術は剣で互いに戦って雌雄を決することだよ」
「そうですか、剣術とはかなり面白そうですね」
「アイラは剣術に興味があるのか?」
「剣術を見たことはありませんが、少し興味があります、ご主人様」
と、アイラが剣術に少し興味があることは望むところだ。
アイラに剣術をちゃんと教えれば、才能を発揮するかもしれない。
「ならば俺と一緒に訓練場に行こう」
「どうもありがとうございます、ご主人様」
また笑顔を見せたアイラ。すごく可愛い。
アイラが本当に剣術に興味があるならば、俺の願っている通りになる。俺は自分でアイラに剣術を教えるつもりだ。
「でも、ノルス様。私はアイラちゃんを訓練場に連れていくことがノルス様の剣術の練習の邪魔になるのではないかと心配です。それにアイラちゃんへのマナーの指導はまだ終わっていません」
「えっー!リリ先輩」
「大丈夫だよ、リリ。アイラは俺専属の使用人だから、そばにつき従うのは当たり前だぞ。そして俺はただアイラを訓練場の周りにいさせるだけ、全然邪魔にはならないよ。マナーの授業は剣術の勉強が終わってからでも遅くないさ」
「かしこまりました。ノルス様はこう言ったからには、私には異議はありません」
リリの話を聞いて、アイラは笑顔を取り戻した。
「さあ、アイラ、行こう」
「はい」
アイラが部屋のドアを開けてくれて、一緒に訓練場へ行った。
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「お前ら、もう少し真面目にやってくれ!」
相変わらず、ケールは兵士たちを厳しく叱責している。
「こっ、怖いです」
アイラはケールが怒って大声で兵士たちをしごいているのを見て、怖い顔をした。
「ごっ、ご主人様……」
と、俺はケールのところに行ったため、心配そうな顔をしたアイラ。
ケールの訓練の様子はきつく見えるが、人柄に問題はない。
「どうしたの、ケール?」
「あっ、坊ちゃまでしたか。彼らは訓練を蔑ろにしていたので叱っていたのだ」
「兵士たちは疲れているようだ。彼らを休ませよう」
「はい、坊ちゃまがそうおっしゃるのなら……。お前ら、休憩だ。これは坊ちゃまの命令だ」
兵士たちはため息を漏らし、感謝のまなざしで俺を見た。俺は微苦笑した。
それ故に兵士たちは訓練場の端に行って、座って休んだ。
ケールは訓練場の端に控えているアイラを見て、納得がいかない顔をした。
「あのメイドは見たことがないが……新人か?」
「最近買った奴隷だ、彼女の名前はアイラ、俺専属の使用人である」
「そうだか」
「なぁ、ケール。早速俺たちの対戦をしよう」
「それもそうだね」
ケールは木剣を投げてくれた。が、この木剣は普段使うものとは違っていると感じた。
剣を振った。やはり違っている。
いつものものより重く、外観も変わっている。
「今日の木剣は変わっているな」
「わかったか。変えてあるぞ。坊ちゃまはよく木剣を折るから、魔法道具《強靱な木剣》に変えた」
よく木剣を折る、ごめんな。
魔法道具とは、ある品物に魔法を施し、それに魔法の効果を付与した道具。
例えば、一つの袋に魔法《収納箱》を施すと、その袋は《収納箱》のように多くのものを入れることができる。それは魔法道具《収納袋》。
エンチャントのようだ。
俺は《鑑定》を発動した。
この木剣には魔法《堅固》がかけられている。
剣はもう折れない。
「対戦の公平性のために、俺も《強靱な木剣》を使う」
「わかった。さっそく対戦だ」
「あー、もちろん」
俺たちはほぼ同時に踏み出した。俺も《身体強化》と《周囲感知》を発動した。
剣を握りしめケールに向けて振ったが、ケールに剣で防がれた。
両剣が交差した時、《強靱な木剣》の硬さを感じた。前に使っていた木剣より硬い。
俺は剣が折れるのを心配しなくてもいい。
左へ一歩踏み出し、重心を腰に置き、もう一度ケールに斬撃を加えた。しかし、ケールは巧みに身を翻して俺の斬撃をかわした。
ケールの剣術はとても上手だと認めざるを得ない。
だが、人は完全無欠であるわけがない。きっと隙がある。
だけど、どこっ……。
「―――っ!」
いきなりケールは剣を振り、俺の腰の右側に襲いかかった。
剣を盾にしてこの一撃を防ぎたい。
「ウゥ……」
手が痺れた。ケールの力が強すぎるから、剣撃を完全に止められず、左へ足を滑らせた。
靴が地面と摩擦して熱を帯びた。
ケールの一撃をまともに食らっていたら、俺は半身不随になっていただろう。
「ご主人様!」
と、アイラは心配そうに叫んだ。
手が震え、剣をうまく握ることができない。
「くそ……」
俺は自分の手をコントロールできない。
「攻撃してこないのか?じゃ、俺から攻撃するぞ」
ケールは俺に突撃してくる。
俺は負けたくない。ケールの攻撃をブロックしないと。
右手を上げた。《氷壁》と《水霊陣》発動!
床に魔法陣が現れ、水が氷に変わって厚くて大きい壁になり、ケールの前に立ちはだかった。
ケールは足を止めることなく、剣で《氷壁》を破壊した。
よし!俺の罠に陥れた。
《氷壁》を発動した次の瞬間に、俺は二十五個の《雷の矢》を放った。
二十五個の《雷の矢》がケールに一斉に押し寄せた。
この光景を見て、ケールは自分が罠にかかったことを悟った。
「……っ!」
俺も剣を握って、剣技《炎魔剣》を発動して突進した。
ケールは剣で俺の《雷の矢》を防いだが、いくつかの《雷の矢》がケールの腕や足に当たった。彼は何か所か出血し苦しそうな表情をした。
そのために俺はケールの首に剣を突きつけた。
「クゥ……」
ケールはじっとしたまま動かなかった。
勝負がついた。俺の勝利だ。
ケールは剣を下ろし、両手を挙げた。
「俺の負けだ」
俺も剣を下ろした。手の感覚がもうほとんどない。俺は無理して頑張った。
周りの兵士たちは俺たちの対戦を見て、茫然としていた。当然、アイラも例外じゃない。
「坊ちゃまはますます強くなった」
「ありがとう」
「また後日対戦しよう。今度は絶対に油断しない!」
「うん、いいよ。しかし、今度勝つのも俺だ」
「そうとは限りません」
そうだ。自分をよく鍛えないと、ケールに勝てない。なぜなら、ケールの剣術の方が俺の剣術より上手だから。
振り向いてアイラのところに戻った。
「お疲れ様でした、ご主人様。タオル、どうぞ」
アイラはタオルを渡してくれた。タオルを受け取り汗を拭きたかった。でも、手は思うように使えなかった。
「……っ」
「どうしましたか、ご主人様?」
「すまん、俺の手は動かないから、ちょっと汗を拭いてもらえるかな?」
「かしこまりました」
アイラはタオルを持って汗を拭いてくれた。
「ありがとう、アイラ」
「いいえ、どういたしまして、ご主人様。これはわたくしがやるべきことです。ご主人様はかっこよかったです」
「俺がかっこよかった?」
「はい、ご主人様は巨大な氷の壁・雷のような矢と炎に包まれた剣を作りました。それに戦う表情もかっこよかったでした」
「そっか」
アイラが言ったのは、俺が発動した魔法と剣技だ。
俺はかっこよかったか……。恥ずかしいと思った。
「終わりました」
「なぁ、アイラ、もう一度聞く。お前は剣術に興味があるか?」
「はい、わたくしは剣術に興味があります。わたくしはご主人様の戦いを見て剣術が好きになりました」
「わかった」
剣術に興味がある以上、時間を見つけて彼女を訓練しなければならない。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちでまるで構いませんか!
よろしくお願いいたします。
白皇 コスノ 拝啓




