13. ――― 嫉妬
俺はちょうど今レーリナとレーリアの部屋を出た。今まで彼女らと遊んでいた。
もう彼女らは俺の命令に絶対服従の状態になっている。
この結果に満足している。
やはり、彼女らは俺にとって利用価値がある。
もう疲れた。寝よう。
今日は書斎に行かないと決めた。
自分の部屋に向かう途中で、ロアに会った。
「こんばんは、師匠」
「こんばんは、ノルス様」
あいさつを交わした。
部屋のドアを開けようとしたら、ロアは突然俺の名前を呼んだ。
「ノルス様、少しお待ちください」
動きを止めた。
「どうしましたか、師匠?」
ロアの顔は真剣そのものだった。
「一つお聞きしたいのですが」
「……はい」
「どうしてノルス様はそんなに強いのですか?」
「どうしてって……」
ロアの質問が俺を沈黙させた。
彼女にどう説明すればいい?
もし俺がうっかり計画を口にしたら、すべてのことが露呈してしまうかもしれない。
そうなったら、これまでの苦労がすべて無駄になる。
気をつけなければいけない。
「じゃあ、僕にも質問させてください。なんで師匠は王級魔法のような強い魔法を発動できるのですか?」
「精霊と契約し、後天的努力を重ねて、今の自分を作りあげました」
精霊と契約するのか。
俺は本で読んだことがある。
精霊という生き物はとても神祕的な存在。彼らはめったに人前に現れない。
特別な媒体を使わなければ精霊を引きつけることはできない。
精霊と契約すれば精霊の力を得ることができる。魔力値も増える。
ロアの能力と魔力値から推察すると、きっとすごい精霊と契約したのだろう。
なるほど、それがロアが強くなった理由か。
俺も精霊と契約したい。
「僕が強い理由は持って生まれたもの……天賦だろうか」
「天賦ですか」
「はい」
「……」
ロアは俺の話を信じていないようだ。
しかし、俺が言ったことは嘘じゃない。
なにしろ、俺はこの世界に転生したのだから。前世の記憶は持って生まれたものと言える。
「わかりました。ノルス様が強い理由は天賦のものだと信じています」
ロアが信じている?驚きだ!
「でも、ノルス様の天賦は規格外で、ちょっと嫉妬します……」
ロアが俺に嫉妬している……。
そんなこと、俺は前から気づいていた。
「とっくに知っていましたよ、師匠が僕に嫉妬していること」
「どうしてノルス様は感づいたのですか?」
「バレバレですよ。僕を見る目つき、僕に対する口調など、師匠が僕に嫉妬しているのはもう明らかです」
「えっー!?」と怪訝な顔をしたロア。
ロアよ、お前はまだまだ青いな。感情が表情や動作に出てしまっているよ。
「例えば、今朝の試験。師匠は僕に嫉妬しているから、試験をしたんじゃないですか?」
「はい……。でも、私はただノルス様を挫折させたいだけです」
魔法の詠唱には時間がかかる。魔物に攻撃されても、すぐに倒すことはできない。たとえ魔法の発動に成功しても、自分に当たる可能性もある!
彼女は考えてから行動したのか?
いや、全然考えなかったはずだ。
幸いにも俺は魔狼の群れに応戦することができた。できなかったら、俺は死んでいたかもしれない。
俺は徹底的にロアとの距離を縮める。
さもなきゃ、彼女を支配できない。
「実は僕も師匠に嫉妬しています」
「えっ!ノルス様も私に嫉妬しますか?」
「そうですよ。師匠の能力や王級魔法などなど、嫉妬の対象です。僕は師匠を嫉み、師匠も僕を嫉む。でも、僕たちは嫉妬心の処理方法が違います。僕は嫉妬心を力に変えて前進し続けます。けど、師匠は僕に挫折感を与えたいがため、立ち止まって進もうとしない。これが僕たちの違いです!」
俺の話を聞いて、ロアは恥ずかしく思ったようだ。
ロアの性格は自信過剰、そして他人をよく嫉む。彼女は自分の才能に自信を持っている。
しかし、上には上がある。ロアはグロルートス王国最強の魔法使いではあるが、世界にはロアより魔法が強い人がいるはずだ。
ロアのこの悪い性格を直さないと、他人に対する嫉妬心が強大になっていくだけだ。
そうなってはロアをコントロールすることはいっそう難しくなるだろう。
「そうですよね。ノルス様が言ったことは本当に頂門の一針です。私はノルス様を挫折させたいという強い欲望も持っています。本当に申し訳ございません!」
ロアは素直に謝った。
過ちを知ってそれを改めることほど、素晴らしいことはない。
「大丈夫ですよ、僕は全然師匠のことを怒っていませんから」
「お許しいただき、ありがとうございます」
「いいえ」
これでいい。これで俺はロアとの距離を縮めた。
「私はノルス様が他の子供たちとは違うとわかっています。とても落ち着いていらっしゃり、魔法もお強いです。私はノルス様にお会いすることができて、よかったです」
当然だ。俺の身体は四歳の児童だが、魂は中年おっさんよ。
「僕も師匠に会うことができて、よかったです。僕は疲れているのでこれで失礼します。おやすみなさい、師匠」
「はい、おやすみなさい、ノルス様」
ロアは俺に礼をして立ち去った。
嬉しい、とても嬉しい。ロアはだんだん俺の支配下に入り込んでいる。
他の人を支配するために、俺は知識、魔法そして剣術を続け精進しなきゃ。
「ノルス様」
ちょうど部屋のドアを開けて入った時、リリがやってきた。
「どうしたの?」
「旦那様が会議室でノルス様に会いたいとおっしゃっています」
びっくりした。お父さんが今俺に会いたいとは。
「わかった。今行く」
いったいなにごとなのだ?
俺は会議室に行った。
会議室は書斎の隣だと覚えている。
階段を下りて、二階に着いた。
会議室のドアの前に行き、ドアをノックした。
「入りなさい」
「はい」
ドアを開けて会議室に入った。
テーブルに一つの燭台がある。ろうそくが灯り会議室を照らしていた。
お父さんはソファーに座っている。
雰囲気が重いと感じた。
「そんなところに立っていないで、座りなさい」
「はい」
俺はソファーに座った。
「お父さん、僕に何か御用ですか?」
「そう。私は、君の魔力が強すぎるので、専属使用人がそばにいて、君を助けるべきだと思っている」
「リリは僕専属の使用人じゃありませんか?」
「いいや、彼女はただ君の日常生活を世話する使用人だ。まあ、リリが君専属の使用人になるのもよい」
リリが俺専属の使用人になってもいいが、俺は俺の命令に従い正しい情報を収集できる使用人が欲しいので、リリでは物足りない。
この世界にはまだ知らないことがたくさんある。
そして暗殺者の俺には、正確な情報が大切だ。
じゃあ、誰が俺専属の使用人に適しているのか?
考えてみても、屋敷には適合する者がいない。
「いろいろ考えると、僕と同じ年頃で、従順で、絶対に裏切らない使用人が欲しいです」
「むっ……それなら、奴隸だな」
「奴隸ですか?」
「そう」
奴隷は社会の最下層の存在。賤民と同じ。
彼らはよく虐待される。酷使もされる。
それに一生その環境から抜け出せない。奴隷の家庭に生まれたら、生涯奴隸だ。
この世界では結婚は家柄のつり合いを重視する。だから一般庶民・貴族が奴隷と結婚することは絶対にない。
奴隷を俺に従わせるのもよい。おそらく奴隷の中にも人材はいる。
「わかりました。奴隷を僕専属の使用人にしてください、お父さん」
「奴隷を買うのなら、商業都市ディヤヌスに行かなければならない」
商業都市ディヤヌス、それもお父さんの領地内にある一都市だ。
ディヤヌスは商業が非常に盛んな都市だ。
お父さんの税金収入のうち、ディヤヌスは八十パーセントぐらいを占めている。
人族以外に、他の種族がディヤヌスで貿易をしているそうだ。世界各国の商人もディヤヌスで貿易をしているんだ。
思えば思うほど、行きたくなった。
「僕はディヤヌスへ行って最適な奴隸を探したいです」
「じゃあ、明日朝ごはんを食べ終わったら一緒に行こう」
「はい」
俺は自分で奴隷を指導して、俺のために命がけで働くように育てたい。
奴隸が裹切るのを防止するため、完璧に洗脳しなければ。
「とても面白い!」
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白皇 コスノ 拝啓




