10. ――― 師匠が到来
今、俺はお父さんとともに屋敷の門の外に立って、俺に魔法を教えくれる人の到来を待っている。
彼女は一体どんな人だろうか?
ちょっと期待したり緊張したりした。
早く彼女に会いたいな。
「だだだ」と音を立てた。それは馬蹄の音だ。
馬蹄の音の方向を見ると、一台の豪華な馬車が向かって来た。
その馬車には俺に魔法を教えてくれる人が乗っているはずだ。
馬車が俺たちの前に来て止まった。
心臓がドキドキして唾を飲み込んだ。
馬車のドアが開き、一人の年若い美少女が馬車から降りた。
綺麗な翡翠色のセミロングを三つ編みにして、比較的整った目鼻たち。
しかし、彼女の瞳はオッドアイだ。左目は翡翠色、右目は蜂蜜色。
ふるまいが落ち着いており、年齢は高校生ぐらいに見えた。
魔法使いっぽい白色のローブに身を包んでいる。
彼女は右手に杖を持っている。それは魔法使いが持っていそうな杖だ。
そして左手にかばんを持っている。
「おはようございます」
彼女は挨拶をした。
「おはよう」
「おはようございます」
俺たちも挨拶した。
彼女は俺に魔法を教えてくれる人か……美しすぎる!
思わず見とれてしまった。
ダメだぞ、気を許すな。俺は彼女を自分の支配下に入らせなければならない。
さあ、行動開始だ。
彼女に《鑑定》を発動した。
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【ロアシース・セーニスド】
称号:グロルートス王国王家宮廷魔法使い護衛隊隊長・グロルートス王国首席魔法使い・王級魔法使い・魔法天才・天眼の持ち主・精霊使い・Sランク冒険者
年齢:十六歳
性別:女
レベル:167/∞
HP 17534/17534
MP 473968110500/473968110500
力 D 水 SS
体力 D 火 SS
知性 SS 風 A
防御 D 岩 A
速さ E 土 S
精神 A 草 A
器用 SS 雷 S
運 D 光 S
闇 A
無 B
固有スキル:
《天眼》LV.10 《王級魔法》LV.7 《多重詠唱》LV.1 《治療魔法上級》LV.6 《精霊召喚》LV.8 《多重エンチャント》LV.1
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すげえ、と感じた。
突然、彼女は鋭い目で俺を見た。
「先ほどあなたは、私に《鑑定》を使っていましたね!」
彼女の言葉にびっくりした。
どうして彼女はわかったのだ?
「はっ、はい」
俺がそう言うと、お父さんはびっくりした。
「いつからだ?」
お父さんが言った。
「やっぱり。私は公爵様がうそをついていたと思いました。詠唱なしで魔法を発動するなんて。でも、本当のようですね」
こんなにすごい魔法使いでさえ、『詠唱しなければ魔法を発動することはできない』と信じている。
この世界の書籍の間違いは、既にすべての人の心に深く入り込んでいるようだ。
「先ほどは先礼しました。ロアシース・セーニスドと申します。ロアと呼んで頂いても結構です。よろしくお願いいたします」
「はい、僕の名前はノルス、ノルス・ガルメスです、よろしくお願いします」
「そうして、あなたはきっと私の目に気づいたはずですよね?」
「はい、左右の瞳の色が違いますね」
「私の右目はとても特別です、天眼と呼ばれます。周りの変化をすぐに察知することができるので、もし周りに動静があれば私にはわかります」
なるほど、だから彼女は俺が《鑑定》を発動したのを知ったのか。
まずいと感じた、彼女の天眼は。
俺の行動は彼女の天眼に注意しなければならないようだ。
「魔法を勉強するなら、杖は必要あります。ノルス様は杖をお持ちですか?」
「あります」
《収納箱》を発動すると、魔法陣が現れた。
手を伸ばして魔法陣の中からウィンチェスターライフルを取り出した。
お父さんとロアがこれを見て驚いた。
「ノルスは空間魔法を発動できるの?」
「はい」
「その魔法は無属性上級魔法《収納箱》……ですか?」
ロアが言った。
「はい」
上級魔法を発動できるが、まだ上手ではない。
そして、《収納箱》の空間には限りがある。だから、無限収納はできない。
俺の答えを聞いたお父さんはさらに目を丸くした。
「……ノルス様も上級魔法が使えるとは思いもよらなかったです。それにノルス様は先ほど杖がない状態で、《鑑定》と《収納箱》を発動しました」
ロアも俺が杖のない状態でも魔法を発動できることに気づいた。
「……言われてみれば、確かにノルスはさっき杖がない状態でも魔法を発動した……。やはりノルスは神童だな……」
お父さんが苦笑した。
「そのような杖は初めて見ますけれども、本当に特別に見えます」
ロアは俺が持っているウィンチェスターライフルを見て、言った。
「ありがとう」
「ロアさんはわざわざ王都から来たのだからお疲れだろう。今日は先に休んで。明日から授業を始めよう」
「かしこまりました」ロアが言った。
彼女は王都から来たのか……。王都か、行きたいな。
突然、「グー」という音がした。
この音はロアから出たようだ。
俺とお父さんがロアを見ると、ロアの顔が赤くなった。
「すみません、失態をしました……」
「お腹が空いているでしょう。ちょうど、使用人たちは昼食を準備している。一緒に食堂へ行こう」
「はっ、はい、どうもありがとうございます」
ロアがお父さんの言葉を聞いて、嬉しそうに礼をした。
俺たちは食堂に行った。
✭✭✭✭✭
お父さんはさっき起こったことを全部お母さんに話した。
「ノルスはすごいわ!杖がなくても魔法を発動できるのね。それに上級魔法も発動できるのよね」
「いいえ、まだまだです」
「じゃあ、ロアちゃんはノルスについてどう思うの?」
お母さんがロアに聞いた。
「はい、ノルス様の魔力はとても強いと思います。魔法にはきっと強力な潜在力があります」
「やはりノルスは神童ね」
お母さんがロアの言葉を聞いて、嬉しそうに言った。
「そうだな。魔法でも剣術でも、いつも驚かされる。行く末が楽しみだ、ノルスは」
お父さんも嬉しそうに言った。
ロアを見てみると、なんだか嫉妬と羨望の眼差しで俺を見ているような気がした。
ロアを俺の支配下に入れるなら、俺はロアの青眼を受ける必要がある。
でも、ロアとの間には少し距離があると感じる。
この距離を消さなきゃ。
「僕はロアさんの魔法もすごいと思います。ロアさんはグロルートス王国の首席魔法使いと呼ばれて、ここへ来られたのだから、きっと強大な実力がある、立派な人でしょう?」
「いいえ、私は……」
「王級魔法も使える。そして天眼もすごい。僕が魔法を発動するのを見つけることができます」
ロアの話を中断して、続けて言った。
俺の話を聞いてロアは赤面した。
「確かにロアさんは幼い時に魔法天才と呼ばれていたのを覚えている」
「そんなことはたかが知れています……」
お父さんの話を聞いてロアの顔はさらに赤くなった。
「ならロアちゃん、ノルスのことはあなたにお願いするわね」
「……はい、任せてください……」
ロアは口もとに微笑をたたえた。
「ロアさん、いや、師匠。これからはよろしくお願いします」
俺はロアを師匠と呼んだ。
「師匠……ですか……」
と、笑顔を見せて嬉しそうなロア。
✭✭✭✭✭
もう夜だ。
夕食を食べて、お風呂に入った。就寝時間になった。
魔法を教えてくれる間、ロアはここに住むことになる。
ロアの部屋は俺と同じ3階にある。
ロアの部屋のドアの前に行き、ドアをノックした。
「どうぞお入りください」
「はい」
ドアを開けてロアの部屋に入った。
一つのろうそくの明かり。
ロアは机に向かって座り、何かを書いているようだ。
「師匠は何かを書いているのですか?」
「私は日記をつけています。今日の出来事を全部書きます」
「なるほど」
突然、ロアはペンを置いた。
「ちょっとうらやましいですね」
「ん?」
「ノルス様の能力はすごく強いです。感じますよ、ノルス様の強大な潛在力。将来はきっと私を超える存在になることと存じます。それにノルス様はとても幸せだと思います。公爵様と奥様はとても親切です……」
ロアは悲しい表情になった。
「どうしましたか?」
「……実は、私の父上と母上は5年前の戦争で命を落としました」
「5年前の戦争……ですか?」
「はい、我らグロルートス王国とジルドラース帝国との戦争です」
グロルートス王国とジルドラース帝国との戦争、俺は本で読んだことがある。
あの戦争は王国の勝ちだったけど、多くの王国民は犧牲になっただけじゃない、戦争の上での経済的損失もあった。
そしてあの戦争は北方のデロシア王国と連合して帝国軍を攻撃して、辛うじて勝利したのだ。
それと我国とデロシア王国は国交があったので、この2つの王国は経済的にも政治的にも良好な関係だった。
だから、ともに挙兵して協力した。
なんだ、ロアのお父さんお母さんはあの戦争で犧牲者となったのか。
「安心しろ、師匠。僕はずっと師匠のそばにいて、難関を突破して助けます」
俺の言葉を聞いてロアは顔を赤らめた。
「……どっ、どうもありがとうございます」
「もう遅いですから、僕は寝ます」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみなさい、師匠」
俺はロアの部屋を出た。
このようにすれば、きっと距離をすこしづつ縮めることができるだろう。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




