9. ――― 銃のような杖
剣が折れた。そして慣性で床の上で転げ回った。
「いてぇ……」
俺は起上って、手に持っている折れた剣を見て、折れたところに焦げ跡があった。
この木剣は俺の放った炎に耐えられなかったみたいだ。
「負けた……」
俺は負けた。初めて負けた。悲しい。
「……すっ、すごい!」
ケールは大声で叫び、振り返って俺を見た。
「坊ちゃまは強すぎる!詠唱なしで剣技を発動するなんて」
「でも、俺は負けた……」
「いいや、木剣ではなく本物の剣を使ったなら俺が負けていたさ」
そうかもしれない。もし本物の剣で対戦したら俺が勝っていたかも。
ケールの言葉がちょっと俺を慰めた。
この時、お父さんが寄ってきて、突然俺の両肩をつかんだ。
「お父さん?」
「ノルス、君はどうして剣技が使えるのだ?しかも詠唱することなく!」
「自分でもわかりません。……体が勝手に動きました」
「なんと、無意識に剣技を発動したのか……?」
「はっ、はい……」
書斎で魔法を勉強していたということがばれないように、お父さんに嘘をついた。
「では、ノルス。君は魔法に興味があるのか?」
「あります」
しっかりとお父さんに答えた。
「うむ、わかった。魔法も勉強すれば、きっと魔法でも頭角を現すはずだ」
「はい」
「坊ちゃま、魔法の勉強ばかりしないでください。なぜなら俺は、お前をグロルートス王国、いいや世界最強の剣士にしたいから」
ケールはとても情熱的に言った。
「はい」
ケールの支持を得て、とても嬉しくなった。
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今は昼食の時間だ。
お母さんもお父さんから俺が無詠唱で剣技を発動できると聞いてびっくりした。
魔法や剣技を発動するには詠唱が必要だ。この世界の人々にとって、それは常識だ。
だから、無詠唱で剣技を発動できる俺は特別な存在のようだ。
「すごいんだね、ノルスは。見直したわ」
お母さんが言った。
「私も。詠唱せず剣技を発動したのを見たときは、本当に驚いたよ」
「もしノルスが魔法を勉強したら、きっと詠唱することなく魔法も発動できるわね」
「そうだな」
お父さんお母さんの言うことを聞きながら心の中でひそかにほほ笑んだ。
「そうかなぁ?魔法を勉強するには、杖が必要じゃない?」
俺は素手で魔法を発動することができるが、精度を上げるために杖が欲しい。
「そうだね。では、ノルスはどんなタイプの杖が欲しい?魔法の効果倍率を上げるのか?魔法に変換する速率を上げるのか?それとも魔力を蓄えて攻守兼備ができるのか?」
「いや、僕は命中率を高める杖が欲しい」
「命中率を高める杖?……始めて聞く。それはどんなタイプの杖だ?」
お父さんは疑惑の表情で俺を見た。
「僕は魔法を発動したら相手に命中させることが一番重要だと思います。上級の魔法を発動させても、相手に当たらなかったら無駄になります」
「なるほど。じゃ、どんな形の杖を作るべきだろう?」
「銃の形がいいです」
「じゅう?」
お父さんはまた疑惑の表情で俺を見た。
どうやら、この世界には銃のようなものがないらしい。
「紙とペンがありますか?」
メイドが紙とペンを持ってきてくれた。
ペンを持って紙にウィンチェスターライフルを描き、銃に関するいくつかの説明も紙に書いた。
ウィンチェスターライフルはレバーアクション式のライフルだ。
このライフルは戦場や西部劇でよく見られる。
俺の好きな銃の一つ。
連発や狙撃できる。
俺は図をお父さんお母さんに手渡した。
お父さんお母さんは俺が描いた図を見る見る訝しげな顔が浮かんでくる。
「……この杖はおかしい」
「変な杖だ」
「ノルス、君はこのような杖が欲しいのか?」
「はい、お父さん」
「わかった。鍛冶の技工にこの杖を完成させてもらおう」
「ありがとう、お父さん」
嬉しかった。
「でも、お父さん。できれば、あと二つ、銃が欲しい」
「いいよ」
「ありがとう」
またペンを持って紙にデザートイーグルとジェリコ941を描いた。
この二つの銃はショートリコイル式の拳銃だが、威力がとても強大だ。
この二つのピストルは自己防衛用として、そして近距離戦闘用としても使用される。
図を完成させ、それもお父さんお母さんに手渡した。
「やはりおかしい」
お父さんが苦笑した。
で、昼食を食べ終わった後、レーリナとレーリアと一緒に遊びに行く。
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2週間後、俺専用の武器ができてきた。
ウィンチェスターライフルの外観は黒く、尾筒が弾倉に近いところには紫色のような宝石をちりばめられている。
デザートイーグルとジェリコ941は、外観は銀白色で、撃針のところには灰色のような宝石をちりばめられている。
持ってみると細工が丁寧で、触感も良く、とても使いやすいと感じた。
「どうだい?」
「とても気に入りましたよ。お父さん、ありがとう」
お父さんに心から感謝した。
「それは当然だ。その黒い杖は魔竜の鱗でできていて、中に嵌め込まれているのは魔竜の体内にあった魔石だ。そして、あとの2つの白い杖はミスリルでできていて、中に嵌め込まれているのは純魔石だ。AランクやSランクの魔物の体内にあった魔石を精錬して不純物を取り除いてあるんだ」
俺はそれらが多額の金をつぎ込んで作られたことを知っていた。
さすが王家に次ぐ地位の家。
「さてノルス、それらはどうやって使うの?」
「ここでは使いにくいので、屋敷の訓練場に行ってください」
それから、俺たちは屋敷の訓練場に行った。ケールは依然として兵士たちを厳しく鍛えている。
「おはよう、ケール」
「おはよう」
ケールは振り向いて俺たちを見る。
「おはよう、旦那、坊ちゃま」
ケールが挨拶したけど、俺が持っているウィンチェスターライフルを見つめる。
「坊ちゃま、手に持っているものはなんだか?」
「こりゃ俺の杖だよ」
「杖?……おかしいだけど、かっこよく見える」
「ありがとう」
ここに来た目的は、この銃を試してみることだ。
「ケール、標的があるか?」
「あるよ」
ケールは俺たちを射的場に連れてきた。
「今日は弓兵が休みだから、ここは俺たちだけだ」
「そうなんだ」
俺はウィンチェスターライフルを取って、照星で標的の中心を狙った。
「杖を持つ姿がおかしい」
お父さんが言った。
銃に魔力を注ぐと、銃身のところに魔法陣が出現した。
《氷弾》発動。
引き金を引いた。
「―――バン」と音がして、《氷弾》は飛ぶように前へ向かって進んだ!
標的のど真ん中に命中した。
見ると、とても嬉しかった。
振り向いたらお父さんとケールの顔がこわばっていた。
びっくりしたようだ。
「大丈夫?」と聞いた。
彼らはやっと我に返った。
「ノルス、さっき君は詠唱なしで魔法を発動した……」
「すげぇな、坊ちゃまは。剣術だけでなく、魔法にも相当な才能がある。神童と呼んでもいい」
「そうだな。ノルスは神童だ」
お父さんとケールが俺を神童と呼んでくれたことが嬉しかった。
すべてのことが俺の計画どおりに進んでいる。
やがて、俺が公爵の相続権を得ることができるはずだ。
✭✭✭✭✭
今は朝食の時間だ。
お父さんがお母さんに俺も無詠唱で魔法を発動できることを教えると、お母さんも俺を神童と呼んだ。
彼らは俺を神童だと信じ、大きな期待を持った。
そこで字の読み書きを教えてもらった。けれど、俺はとっくにこの世界の文字を理解していた。だから、両親は俺が神童だと深く信じ込んでしまった。
「そうだ、ノルス。私はすでに君に魔法を教えてくれる人を招いた」
「本当ですか?」
「もちろん本当だ。彼女は王級の魔法を発動できる魔法使いだ」
彼女?女の子?
魔法は7つのレベルがある。低い順に、下級・中級・上級・超級・王級・聖級・神級だ。
彼女が王級の魔法を発動できるとしたら……魔力値は高い!
彼女はどんな人だろうか?俺は楽しみだ。
是非とも彼女を俺の支配下に組み入れたい。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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よろしくお願いいたします。
白皇 コスノ 拝啓




