森でありきたりは通用する
「そんな攻撃がこの俺に通用するとでも思っているのか?」
いけさんが鼻で笑う。
「なにっ!?」
かぶとむしはたじろいだ。
「見切っていると言うのか? ぼくのこと?」
「予告してやろう。次にお前が攻撃した時、その立派なツノはもう折れている」
「うっ……迂闊に動けない!」
かぶとむしは呻いた。
「こっ、このぼくのこととしたことが……! すっ、隙がない!」
蟻や蝶が周りに集まり、息を飲んで2人のバトルを見守っている。
「来ないのならこちらから行くぞ?」
いけさんが動いた。
「しっ、仕方ねえ! ぼくのことの力を見せてやる!」
かぶとむしも動いた。
数秒後、2人は互いにボロボロに傷つき、それでも立っていた。
どちらももうあと一撃喰らったら倒れてしまうだろう。
「行くぜ」
「行くぞ」
「死ね!」
「勝つのはぼくのことだァーッ!!!」
ドガッ!!!!!
「や、やるじゃねぇか……」
いけさんは笑った。
「この……俺を倒す奴がいるとは……な」
ツノを振り上げたまま止まっていたかぶとむしの後ろでいけさんの膝が崩れ、地面に顔から倒れ伏した。
しかしかぶとむしも口から血を吐いた。
「げぼっ……くのこと!」
相討ちだった。2人は赤く染まった戦場に背を向け合ったまま倒れ、そのまま起き上がらなかった。
風が元から真っ赤な赤土の広場を吹き抜けた。
蟻や蝶はこんな熱い結末は初めて見たのだったが、何しろ蟻や蝶なので、口々にこう言うしかなかった。
「蟻きたりやな」
「蝶ちんぷ」




