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コムチャン森の住人たち  作者: ぱめ
31/68

茂吉さん

 茂吉さんは人間ではない。江戸時代からタイムスリップして来た幽霊だ。


 彼は東北弁と岡山弁を自在に扱える凄腕猟師である。獲物はキツネかタヌキしか狩らないので、猟師仲間からは侮られている。しかしキツネとタヌキからはひどく恐れられるとともに傍迷惑な目で見られ、キツネとタヌキ以外の動物からは何ということもなく無視されていた。


 茂吉さんは暗い森を猟銃を構えて歩いていた。

 暗闇に目が光る。警戒を強める。黒目が銃口のように左右に素早く動いた。


「何かがオラを見てるだな」

 茂吉さんは引き金をカチャカチャと鳴らしながら、呟いた。

「どっかから何かがオラを見つめてるだ」


 遠くの木の上で見ていた覗き魔がびくっと体を硬直させた。


 しかし茂吉さんを隠れて見ているのは覗き魔だけではなかった。

 森中のキツネとタヌキ達が、復讐に燃える目で木陰から茂吉さんを見つめているのだ。


「ゴンのかたき」

「ゴンのかたき」

「ゴンのかたき!」


「おえんがな」

 茂吉さんは不敵な笑いを浮かべると、素早く懐からホームランバーを取り出した。

「今からゴンの墓参りに行くとこじゃけえ、邪魔すんな」


 無数のキツネとタヌキが夜空を覆い隠した。

 茂吉さんめがけて飛びかかったのだ。

 ありったけの勇気を振り絞っての集団行動だった。


「ぶっしゃけ!」

「かぐれ!」

「血まみれになれやー!」


 キツネとタヌキ達は岡山弁を口々に放つ。

 神は岡山に移住してまだ5年であるので自信はなかった。


 しかし茂吉さんは幽霊だ。

 200年以上生きているプロの幽霊だ。

 岡山弁で言えばでーれーなげーこと生きとるゆーれーだ。

 幽霊は実は100年以上生きると実体化する。

 キツネとタヌキ達の攻撃は茂吉さんをすり抜けず、すべてクリティカルヒットした。


 三日月が見下ろしていた。

 後にはぺちゃんこに潰れた茂吉さんが這いつくばっていた。



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