アカイ・ソラ
アカイ・ソラは逃げていた。
別に何も追いかけて来てはいないのだが、何かから逃げていた。
森の木々が彼女が走るスピードで流れる。
「やめて!」
彼女は叫んだ。
「追いかけて来ないで!」
「ごめんなさい」
たまたまそこにいたこむが頭を下げて謝った。
「逮捕する」
罪を認めたこむにぴんが手錠をかけた。
「ストーカーかよ? 恥ずかしいねえ……」
たまたまそこにいた覗き魔が感想を漏らした。
覗き魔の対象は不特定多数だ。
彼は双眼鏡を覗き、一方的に鳥を盗み見ていた。これは『バードウォッチング』とも呼ばれるものだ。
たまたま覗き魔の双眼鏡がアカイ・ソラの胸をとらえる。
たまたま彼はそこに釘付けになった。
「おおっ!?」
覗き魔は声を上げた。
「こっ、これは……凄いですねえ」
彼はいつもは鳥だけを覗き見ていた。一方的に盗み見られる鳥ちゃんが何も気づかずにかわいい姿をさらけ出してくれるのがたまらなかった。
アカイ・ソラの胸は彼を傷つけた。ぼくはこんなものにも興味があったのか、と激しく自分を責めた。
そして持っていたナイフで刺した。
何度も何度も、2本のナイフで交互に樹木を刺した。そうやって登って行った。
「こうなっていたのか」
高い樹木の上から見渡すコムチャン森は、樹海の様相を現した。
遠くにコム山が見え、雪をかぶっている。
遥か遠くに自動車が走っているのが見えた。
「あそこまで行けば人間の世界に戻れる!」
そう言うと胸に希望が溢れたアカイ・ソラは、樹木の上から降りようとしたが、高すぎて怖くて降りれない。
「誰か……!」
「誰か……! 私を見つけて!」
覗き魔は双眼鏡で、まだアカイ・ソラの胸をじっと見ている。




