3.迫り来る脅威
お手柔らかに…
森へ入りどれくらい経っただろうか…
ときおり風が騒めき、圧倒的な樹々に畏怖を感じる。荒野であんなどでかい生物を見てから未だに他の生物に遭遇してない。それがまた恐怖心を煽っていた。
自分が向かう先に何があるか分からないというのは、こんなにも怖いものなのだろうか。方向も分からず歩みを進める。
どうやら自生している植物の種類は多くなさそうだ。
ここまで、森へ入るときに作った腰巻きに使われた植物の他に4種類ほど見つけていた。見つけた植物は全てパッチテストをし、口にした。
中でも地球では珍しいであろう赤・黄色の縞模様の葉を付けた植物は、皮膚につけるパッチテストは問題無かったが少し口にした瞬間に意識を失いそうになった。口にしてからだいぶ時間は経つと思うが、一向に口の感覚は戻らない。
どうやらこの世界にも夜が在るらしい。空に薄い雲が覆われ始め、世界が徐々に暗くなる。星
は見えず、二つの太陽はいつの間にか月のように見えていた。
自分の持っている唯一チートだろうか、サバイバルの動画で火の起し方を知っており火を燈すことにする。
結局食糧確保も水辺も見つけることが出来なかった。どうやらこれ以上先へ進むのは難しそうだ。
“夜行性”
それは夜間に活動し昼間は休む性質のことだ。
明るい昼間は天敵にねらわれやすく、危険が大きい。黒い体色の動物や表面積の小さな動物などは、昼間の直射日光で体温が過剰に上がってしまいやすい。そのため、これらの動物は、昼間は物陰や地中などに隠れて休み、夜間活動を行うのだ。
自分は今、動物除けにと気持ち多めに火を焚いたまま、樹の上に登っている。
どうやら遠くに何かがいるようだ。必死に目を凝らすが何がいるか分からない。
「ブブブブ!ブブブブブ!ブブブ!」
動物が鼻で息を噴き出している音がする。猪系の巨大動物でも居るのだろうか…
罠でも張って食料に出来たらいいのだが。
「ゴヴゥゥゥゥゴヴゥゥゥ!」
「ミューん!ミューん」
訳の分からない鳴声の生物もいそうだ。
しばらくして少し目を閉じたときとんでもない音が此方に迫るのが聞こえて来た。
……ドドドドドドドドドド!バキバキバキ!ドドドドバキバキバキ!
どうやら大きな何かが樹樹を薙ぎ倒し此方に来てるようだ。
どうすることも出来ない。樹の上で恐怖に身を縮こませる。
空に月が二つ浮かんでいるので地球よりも明るい森だが、流石に夜にこの火のある場所から逃げる気にはなれない。
その音が迫る時間は死の瞬間を待つようでとても長く感じられた。
バキバキバキ!
ドドドドドドドドドド!
迫るのが轟音が限界に達した時、とうとう視界に捉えることができた。
それは黒の巨大なダンゴムシの様で、ただひたすらに複数の脚が地面を蹴り上げ、目の前を突っ切って行った。
火が消え、巨大な樹々が薙ぎ倒された場所を前に生き残った安堵とともに極度に高まった緊張が途切れ意識を失った。
「クク、おもしろいね。感じたことのない生物がいると思ったらニンゲン…クククッ」
誰かの声で目が覚める。いつの間にか寝ていた(というよりも意識を失ってただけだが)焦りから緊張が高まり声の元を探す。
当たりを見渡しおかしな所に気がつく。薙ぎ倒されていた樹の根本から新たな樹が生え、まるで何事もなかったかのように薙ぎ倒される前と同様の大きさに成長していたのだ。
「クク、生きてる世界一弱き者…ククク、おもしろいね」
「だ、誰!?どこにッ!?」
「…ククク」
「声が聞こえるのに何処に…」
「クク、ココだよ。ニンゲンが寄り掛かってた」
「えッ!?」
後ろを見ると樹の木目が顔の形に浮かび上がり根が地面から飛び出し二足歩行体勢をとっていく。
……
「樹が…喋ってる…」
次話:森精霊




