第6話 初めての告白―彼女の場合―
別の人物視点でのお話になります。
………ピピピピピピピピピピ
朝5時に目覚ましが鳴る。私の朝は早いの。
パジャマを着替えて、日課のランニングに出かけるわ。
ランニングの後は、朝のトレーニング。メニューをこなして汗をかいたら…お風呂でしっかり汗を流すの。お気に入りのトリートメントをしてヘアケアもバッチリ。
お風呂を上がったら、ドライヤーで髪を乾かして…うん! 今日も髪型きまってる!
清潔な下着を着けて……次はアイロンのかかった真っ白いブラウスを着て、スカートを穿いて……、制服のリボンを絞めて、上着を羽織ったら着替えは完了!
最後に鏡で最終チェックだぞ。女の子だから、身だしなみは大事だよね。
うん。私、今日もかわいいぞ。
支度が整ったら、リビングでパパとママと一緒にブレックファーストだね。
私の部屋から階段を下りると、すぐそこがリビングなの。
「あんた! 何? この一緒に写っている女は?」
「何、勝手に人のスマホいじってんだよ!」
「この女は誰だって聞いてるの!」
「ただの俺のファンだよ…。先週、スポンサーの接待で、たまたま…。」
「たまたまで、こんなに顔を近づけるのか! あんたは!」
「あー、そうだ! 親睦の証さ! スポンサーさんとは上手くやらなきゃいけねーからな。」
「開き直ったね! ファンの娘に手を出したの何回目だい? もう許さないよ!」
「それは、こっちの台詞だ! いつも勝手に俺のスマホいじりやがって!」
「あんた。また、あたしの鉄拳を食らいたいみたいだね!」
「俺にケンカ売るとは上等だ! 表に出ろ!」
バキッガコッガシャン……ドキャ……
パパとママ、二人とも今日も飛び切り元気だね。朝から二人でじゃれあってる。本当に仲良しさんなんだね。
こんなに愛し合ってるパパとママが羨ましいぞ。
さ、私は朝ごはん朝ごはん。
最近食べ過ぎちゃってるから朝ごはんは、ちょっとだけにしておこうっと。
卵焼きとウインナーを少しと、ご飯をどんぶりで3杯。昨日よりちょっぴり少な目かな。腹八分が体に良いって、誰かが言ってたわ。
朝食を食べながら、朝のニュース番組で占いをチェック。
―― 今日、一番ラッキーなのは、魚座のあなたです。――
―― 意中の異性に告白されちゃうかも。――
やったー。魚座の私、今日はラッキーデーみたい。きゃは。超嬉しい。意中の異性に告白されるかもだって。
意中の男子はいるにはいるけど……
きゃー。本当に告白されたらどうしよう!
そろそろ学校に行かなくっちゃ。
「いってきまーす。」
「おお、いってらっしゃい。気をつけて行くんだぞ。 …そりゃっ!」
「おらっ! …いってらっしゃい。気をつけてね。 …とりゃ!」
じゃれあっていても、パパとママはいつも私の声に答えてくれるね。パパ、ママ、いつもありがと。私、今日はとっても良い日になりそうな予感ビンビンなの。
こうして私、竜宮寺 可憐の素敵な1日はスタートするの!
+++
学校では、私に話しかける人はとっても少ないの。男子なんて、私が視線を送ると、すぐ目を反らしちゃう。みんな恥ずかしがりやさんなんだね。
私は学園のアイドル。だからみんな、私のこと高嶺の花って思ってるみたい。だから、話しかけ辛いのかもしれないね。もっと頑張って、気さくに話しかけられるようコミュニケーションとらなくちゃだね。
今日の占い当たるといいな。だって私、最近モテ期到来みたいなの。
この前も、学校で一番目立っている秋葉くんに迫られちゃった。タイプじゃなかったからお断りしたのに、時々呼び出されて、迫ってきて困っちゃう。もう強引なんだから。でも、私には心に決めている王子様がいるの。ごめんね秋葉くん。
秋葉くんだけじゃない。つい最近、柔道部とボクシング部の男子たちに囲まれて、みんなに迫られちゃった。みんな、私の奪い合いはやめてって、止めたんだけど………途中から先生も来ちゃって、もう大変だったんだから。プンプン。
モテ期もホント大変なんだね。私が、かわいいからみんなを争わせちゃうのかな。ホント私って罪作りな女の子ね。
でも、本当は一人だけ。私の王子様だけに思われたい。今は私の片思いだけど、きっと思いは通じるよね。占いでも、今日はラッキーデーって言ってたから、ちょっと期待しちゃう。
私の王子様は、最近、私がフッた秋葉くんと仲が良いみたいなの。いっつも一緒にいて、仲良くじゃれあってるみたい。
そうだ。次の授業は理科だから理科室に移動だね。教科書を持っていかないとね。
教科書を取るために、机に手を入れたら……
あれ? 何か落ちたぞ。これって、ラブレターじゃないかしら。モテ期だから、時々あるのよね。
ラブレターを開いたら、放課後に体育館裏に来てって書いてあるわ。きゃー。これってもしかして、告白の呼び出しなの! もしかしたら、もしかしたらだけど、朝の占いで言っていた、意中の男子からの告白かも。私の王子様からだったらいいな。
今から放課後が楽しみ。早く授業、終わらないかしら。
+++
キーンコーンカーンコーン…
いよいよ放課後ね。告白の呼び出しは慣れっこだけど、今日はなんだかドキドキしちゃう。占いのせいで、私ちょっぴり緊張してるみたい。
体育館裏に来たわ。ここで待ってれば良いのよね。
私を呼び出した相手は誰かしら。もう心臓が壊れるくらいドキドキしてる。神様、もし期待はずれの人だったら、私、神様をぶん殴っちゃうんだからね。覚悟してね。
「待たせてごめん。竜宮寺さん。」
後ろから声がして、私は振り向いたの。
期待してた訳じゃないけど……いいえ、とっても期待してたわ。本当に、本当に、彼がそこには立っていたの。
――私の王子様が。
夢みたい。
嬉しい。やっぱり、占いが当たってたのね。
待って、可憐。まだ告白されると決まった訳じゃないわ。
早とちりしちゃダメよ。もし違ってたら、痛い目見ちゃうんだから。
深呼吸。深呼吸。
彼、すごく震えてる。きっと緊張してるんだわ。
私の王子様が、ゆっくりと口を開いたの。
「あ…あの、お…おれ、おおおお…俺と……
…付き合ってください。」
ああ。なんて素晴らしい日なの。私と彼が、両思いだったなんて。私、今日死んでも良いわ。神様、ありがとう。今日はホント最高の日。だから神様をぶん殴るのはやめるわ♪