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冬は恋の季節ですか?  作者: 愛森とき
5/7

気分転換の準備

早起きした日曜日だが

聡美はただ布団に横になって過ごしていた。

やる気も食欲も無なかった。

いっそこんな日は

仕事の方が良かったと思った。


布団に入ったままうつ伏せになって

スマホを手に取った。

俊也から

おはようとメールが届いていた。

おはようと返信した。

シンプルメールはいつもの事だった。


付き合い始めの頃、2人の間で

『喧嘩をしても挨拶メールは欠かさない』

『大切な話は顔を合わせてする』

そんな約束事をしたのをふと思い出し

懐かしく思えた。


聡美「あぅぅ…いやぁぁ…」


更に昨日の事を思い出し枕に顔を埋めて

特に意味の無い声を出した。


何も考えないように

スマホで好きな音楽を聴いたり

面白そうな動画を観たりした。

それでも、完全に気が紛れる事はなかった。

楽しいとか面白いとか

そんな感情が聡美の体から

こぼれ落ちてしまったようだった。


夜の行為が失敗に終わる度に感じるこの喪失感は

何度経験しても慣れる事は無かった。

慣れるどころかどんどんと

蓄積されていくかのように思えた。


もやもやとした頭で仰向けになり天井を見つめた。


天井を見つめながら考え事をしているうちに

頭が疲れて、気付かぬ間に

うとうとしてしまったようだった。

スマホが鳴った音にびくりとして起きた。


電話だった。


聡美「誰だろう」


ディスプレイの表示は


望月紗奈(もちづきさな)だった。


紗奈は会社の同期で聡美と同じ高卒だった。

そして、聡美が特に親しい女性の1人だった。


聡美「もしもし」


紗奈「もしもし、聡美?もしかして寝てた?」


聡美「うん、1回、早く起きたんだけど、うとうとしてたみたい」


紗奈「あぁ、何かごめんね」


聡美「別に大丈夫だけど、どうしたの?何の用事だった?」


紗奈「実はさ、(とおる)とまた喧嘩しちゃってさ」


透というのは紗奈の彼氏で

それと同時に会社の先輩でもあった。

年齢は紗奈より8歳上でバツイチ。

若い頃は女性関係には相当ルーズだったようだ。

紗奈の一目惚れで紗奈が告白したら

即OKで付き合えたという事だったが

こんな風に定期的に愚痴なのか惚気なのか

よくわからない話の相手をさせられた。


聡美「喧嘩したって今回の原因は何なの?」


紗奈「それがさぁ、あ、そうだ聡美、今日これからさ、外に出られない?」


聡美「え?別にちょっと時間もらえれば出られるけど?」


紗奈「じゃあさ、私、車で迎えに行くから準備してて。ちょっと遠いんだけど、新しいパスタのお店が出来たって聞いたから、行ってみたくてさ」


聡美「そっかぁ、いいね、パスタ」


あまり食欲は無かったが、部屋に居るよりは

ずっと良い気分転換になると思い

肯定的な返事をした。


紗奈「じゃあ、寝起きの聡美の為に、1時間後に行くようにするから、シャワー浴びて化粧ちゃんとしなよ。外にどんな出会いが待っているかわからないんだからね!」


聡美「へ?な、何?」


聡美の返事を待たずに一方的に電話は切れた。


以前に、透の事を

女子にとにかく優し過ぎると言って嫉妬して

聡美に電話してきた事がある紗奈だが

紗奈もなかなかに男性に対して

積極的な傾向があった。

決して浮気したいというのではなく

女性としてちやほやされていたいのだろう

というのが聡美の見立てだった。


紗奈と透、この2人は

お互い様でお似合いなカップルだと

聡美は密かに思った。


聡美は布団から出て、シャワーの準備を始めた。

紗奈が来るまであと1時間。

さぁ、ヨーイドン!

と心の中でスタートの合図した。

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