第七話
優しい香り………なんか落ち着く。もう少し寝ていたいが、チャイムがなっているので起きるか。
「ん……ふぁ~」
上半身を上げると何かがズレ落ちていった。どうやらブレザーのようで、誰が掛けてくれたかはすぐにわかった。どうやら気を使ってくれたみたいだ。そういえばさっきの…………優しい香りって……………………ダメだこの先は考えてはいけない。
しばらく振りに熟睡出来ていたらしい。倦怠感や眠気がない。
時間を確認しようとスマホを覗くと固まった。
「げっ、もう放課後じゃないか」
5、6限は完全にサボった事になるが教師たちは事情知ってるから多めに見てくるかな。でも、坂雪さんはブレザーを回収しなかったな。
司書室から出るとカウンターで腕を枕にして寝ている坂雪さんがいた。その様子からするなら俺と一緒か。なんか悪い事をしてしまったな。
起こそうと思い近寄ると坂雪さんは眼鏡を掛けたまま寝てしまったようだ。壊れたら危ないと思い眼鏡を取った素顔を見ると……………………凄く綺麗だった。
「眼鏡するなんてもったいないな」
眼鏡を良く見ると度が入ってない………これは俗に言う伊達眼鏡か。なるほど、容姿を隠す為か。男に言い寄られたり、告白とかで迷惑してたんだな。ある意味俺と一緒か。だから気に掛けてくれたのかな?
寝顔を見ていたいが、もう帰宅の時間になっているから、起こしてやらないと。肩を揺らして起こしてた。
「ん………ん……………もしかして寝ていた?」
「寝てた」
坂雪さんは背を反らしつつ腕を伸ばしていた。背を反らしてある物が強調されるが小さい山しか出来てない。
「その頭を本で殴っていいか?」
「何モ考エテマセン」
冷気を感じさせる目で見てくる坂雪さんが言った。若干怖くて怯んだ。そしてしょうがないと言う顔をしてきた。
「まぁ、桜木くんも男の子なんだな」
「その納得の仕方は些か不本意なんだが」
俺も男なんだが………………なんとも言えないこの感情はどうすればいいんだ。
立ち上がってカーテンを閉めようする坂雪さんに持っていた眼鏡を差し出した。坂雪さんの視線が眼鏡と俺の顔を往復してから坂雪さんが受け取ってかけ直した。
「見た」
「眼鏡が壊れると思って」
「だったら後は言わんとする事はわかるな」
言い寄るなとかかな……………安心して寝れる所だったんだが、空き教室になるのかな?と考えていたら頭上から衝撃が来た。痛くてじゃがみ込み坂雪さんを見上げると顔を赤くした坂雪さんとその右手に四cmほどの幅の本を振り下ろしていた。
「寝てた女子の顔を見るじゃない!」
素早くカーテンを閉めていく坂雪さんを眺めながら思った。良く予想を裏切ってくれる。