第六話
桜木が司書室に入って行くがドアが開けっ放しだった。閉めようと思い立ち上がると桜木が止めてきた。
「寝るまで話し相手になってくれる?」
「それ位なら構わないよ。作業しながらとなるが」
続けていた作業に戻ってゆく。薬を飲んでいるならすぐにでも寝てしまうよな。
バーコードを貼ってそれをスキャンする。本のタイトルとジャンルを入力してゆく。
それをしてる内にフッと疑問があった。
「どうしてこの学校に来たんだ?」
「事務所の社長から伝説がある高校に行ってあやかってこいと言われた」
「伝説?」
「なんでも文化祭のステージで告白成功したら幸せに暮しているカップリングがいる。あと実話だが3年の男子が2年の女子を妊娠させたけど男子は卒業して女子は中退したけど二人とも幸せに暮らしてるだって」
あ~……………………その伝説か…………………………それは身内なんだがそれを話していいのか疑問に思う。
だが、真相を調べて何か言って来られても面倒か。なら最初から話した方がいいか。
「その通り幸せに暮らしているな」
「知ってるんだ。知り合いか?」
「知り合いじゃなく……その2つは両親と兄さんの事だ」
「身内かよ!?」
そのツッコミが来るのは想定していた。彩希や慎にも話したら同じツッコミが来た。
「文化祭のは事実か。思い切りがいいのか………フラれる可能性考えていなかったのか?」
考えるまでなく間違いなく成功するだろう。告白は告白でもまたプロポーズの方なんだから。しかも、超ラブラブな状態だったらしい(由々おばさん談)。
「兄さんの方は卒業が近かったのと教師からも助けもあって無事卒業出来た」
「漫画やドラマの世界だけだと思ってた」
「それを言うならこの状況もそうだと言える」
「それもそうだね」
そもそもあまり目立ちたくないのに寝床を提供したり、ちゃっかり話し相手になってる。自分から関わりあってるなんて、どうかしている。
「こんなに気軽に接してくれるなんて、嬉しいモノなんだね」
何を言ってると言いたかったが、今まで俳優の桜木圭として接してこられたからか。なら普通に接してやろう……それで心を保てるならば。
「いつでも来てくれてもいいぞ」
何も反応が帰って来なかったので見に行くとスヤスヤと眠っていた。無防備な寝顔は見ていてよかったが、私のブレザーを掛けて司書室の扉を閉めた。閉め際に小さく声を掛けた。
「おやすみなさい」