第一話
春………新入生の入学の時期。
桜の花びらがゆっくりと散って中で、私は歩いていた。かつて両親や兄さんが歩いた道………そう思うと微笑ましく思える。世代を越えた不思議な感覚。
やがて見えて来たこれから三年間通う事になる学校。パリッした新品の制服に身を包まれながら門をくぐった。
クラス表が貼り出されて新入生たちが見ては友達と喜んだりしている。
私も見に行こうとした時に後ろから抱き締められた。こんな事をする人間は一人しか思い付かない。
「危ないじゃないか彩希」
「まぁ、いいじゃん。また同じクラスになってたよ」
……………確認する楽しみがなくなった。でも、人混みに入って行く手間が省けたのでよしとしよう。
志藤彩希。中学からの友人で明るくてクラスでは人気だったが告白とかはなかった。彼女の実家が問題ある訳で………………893さんである。当主の一人娘で溺愛されている。そうゆう訳であとはわかるだろう。
「あれ、知華ってメガネ必要だった?」
「平穏な生活の為に」
「あぁ、これなら普通に見えるね」
中学時代、自慢じゃないし鬱陶しいだけだったがそれなり告白受けた。全て断ったけど。
お母さんも使っていたメガネで若干ダサくて、私が掛けると普通に見えるようになった。
「巡はこっちに来ないだね」
「お母さんの友人の所に下宿しながら向こうの学校に通うみたい」
私と双子の兄さん巡……絵を描くのが好きで景色がいい所に行った。これには両親兄さんも呆……苦笑していた。
他愛な話をしながら廊下を歩いていると正門から歓声が聞こえてきた。
興味が出て覗いて見たら、男子生徒が女子に囲まれてたり男子に写真を撮られていた。
「おぉ~、桜木圭じゃない!」
「知り合い?」
「マジで!? イケメン俳優の桜木圭じゃん」
「聞いた事もない」
スマホで調べてみると事務所からプロフィールが出ていたが、事務所のサイトよりもう一つのサイトが気になった。
「役者を殴って謹慎となってる」
「ニュースでも出てた………マジみたい」
笑顔で接してる所を見るととてもそうには思えない。実際に彼の事を知ってる訳じゃないからなんとも言えない。
それに私には関係ない事だろうね。
「さて教室に向かおう」
「前の席は知華に決まってるから後ろと左右は誰になるかなー?」
坂雪の『さ』と志藤の『し』では最初の席は離れる事出来ないと思ったのは口に出さないでおいた。