第八話
学校から帰り道、途中まで一緒の道だと分かったので、桜木は私の隣を歩いている。
5、6限をサボってしまったが袖中先生の仲介の元お咎めがなくなった。日頃の真面目な生活で信頼を勝ち取った。だが、全く寝顔を見るなんて乙女心を分かってない。まぁ、そのまま寝てしまった私の責任もある訳だが。こう言う時は全面的に男が悪いとお母さんが言っていたな。
「機嫌なおしてくれない?」
「別に機嫌悪くない」
そう別に機嫌が悪い訳じゃない。ただ気恥ずかしいだけだ。その上、素顔さえ見られたのだから。
「この前見つけた和菓子専門店の『月見』で奢るから許して」
月見か……………お母さん高校生の頃バイトしていた。そして親戚でもあるから顔は通っている。美味しいのだが…………………若干月見の店長が苦手だ。
「それで手を打つ」
「分かった。いつ行く?」
「今から。しかし、目立つんじゃないか?」
「それは大丈夫」
桜木はイタズラを成功させたような顔で鞄から黒い物体と黒いフチの眼鏡を出した。
「変装道具はしっかり持ってるから」
「……………色々ツッコミはあるが準備がいいな」
「学校から帰る時に役立つよ」
遠い目をしながら空を見つめている。女子に囲われる訳だな。
変装してくれるならバレなくていいか。目立ちたくない私としても嬉しい。でも店の中に入ったら目立つだろうが。
変装道具を身に付けていくとモッサリした髪と目がカツラで若干隠れて、黒いフチの眼鏡で俳優の桜木圭から地味目な高校生になった。
「印象が結構変わるな」
「これなら騒がれる心配ないし、坂雪さんも安心だよね」
「え?」
「その容姿だし、伊達眼鏡をしてるって事は目立ちたくないんだよね。それを分かった上で一緒にいる俺だけど」
私の事を気に掛けていたのか。気を使ってくれるのは嬉しいが……………ならなぜ関わって来ようとする?まぁいいか、奢ってもらうのだから。
月見では食べ過ぎないようにしないと…………最近彩希とのお茶会が増えてるので………増えるとかシャレにならない。
「これってデートに入るかな?」
「だったら友人関係の男女が出掛けたらデートになるのか?」
「ならないね」
しかもこんな風な初デートは私にはごめんだ。




