夏に飲み込まれそうになる。
窓から見える夏の空は酷く淋しげで、何気なく私は外へ出た。もわっと熱気が体を包み込み、引き返そうか悩む。が、歩き出した。宛てもなくぶらぶら歩き、辿り着いたのは案の定いつもの階段だった。
ピンク色の、不自然な空は美しい。ただ、眺めていれば不思議と虚しさを覚える。耳に嵌めたイヤホンからボーカルの今にも泣きだしそうな声が聞こえた。ため息が零れる。いつから、こんな空に同情するようになったのだろう。蝉の鳴き声が煩かった。野良猫の逃げる音も。嗚呼、嫌われ者だな。そんな下手な慰めを自分に呟いた。
あの空に自分を重ねてしまうなんて。悔しかった。惨めだった。蔑まされているみたいだった。
あの空はいずれ夜になって暗くなる。
私はいずれ大人になって夢を殺される。家族に、世間に、自分に。
それをどうしようもないことだと諦められる訳が無かった。なのに時間が進むのは早くて、私はどんどん置いて行かれる。みんな、自分で精一杯だから私に手を差し伸べてくれない。
来年の今、私はどうしているんだろう。夢を殺された私は、夢という質量を失ってプレス機に掛けられた空き缶みたいになっているのだろうか。
・・・・・・私はそれで奮起出来る漫画の主人公でない。そんな強い決意抱けずに、今まで沢山の人を裏切った。慈愛に満ちた神なんていない。もう、どんな言葉も私を救わないだろう。
段に膝を抱えて座り、顔をうずめた。音楽はリピートされ、心の中に虚無だけが広がっていく。はじき返す勇気も力もなく、死んでしまったそれらを思って瞼の奥が熱くなる。
この涙も思いも、夏に飲み込まれて溶けていく。
遂に夕焼けにまで見放された気分。
何にも感動出来ないから、心に溜まった何かを吐き出そうと思って書きました。
いつも暗いのばかりですみません。