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スターダスト・オデッセイ2  作者: わびすけ
第一章 異世界へ
19/51

#01-19


 男の服の胸ポケットからカードが見つかった。レアリティSR、カードの名前は『ネクロマンシーLv1:経験値6%』、下の四角枠の中には『・ゾンビ作成』と書かれていた。


「レベル1って、何かするたび3%入ったよね。という事はコイツ、2体しか作ってないんだね」


 外にいたプレイヤーゾンビと、さっきの女性か。やはりゾンビはゾンビを作れるみたいだな。


「サヤ、外の奴のカード漁ってきてよ。俺、こっち片付けるから」


「ん。お願い」


 2人の視線が一度女性の遺体の方を向き、それぞれ作業に取り掛かった。

 サヤにこの汚い体液を触らせたくなかった。俺は家の中を漁り体を拭くのに良さそうな布を見つけると、水瓶の水で湿らせて全身を拭いた。

 俺も男だ。レイプ物のアダルト動画は見たことがあった。たが所詮はフィクションだ。

 現実ってこんなになるんだな。何をどうやったらこんなアザがつくんだよ。

 全裸の女性を目の前にしてもまったく性欲がわかない。わくのは怒りだけだ。

 何度も水を変え綺麗にしていく。表面の汚れは取れるがアザが消えない。クソっ胸糞悪い。

 ある程度綺麗にすると服を着せようと室内を探す。家具なんて僅かしかない。すぐに見つかった。タンスなんかない。ちょっと大きめの木箱を開けると服が畳まれて入っていた。

 箱の中には女性以外の服も入っていた。成人男性のものだろうか。男物の服とあと、子ども服。毛糸で編まれた小さな服も箱の底にあった。

 倒したゾンビの中には小学生ぐらいの子どももいた。あの中の子が小さかった時に使ったものだろうか。

 俺は箱の縁に額を押し付け、その小さな服を握りしめ泣いた。どうしたらこんな酷いことができるんだ。


「クロウ」


 俺の肩に、戻ってきたサヤが優しく手を置いた。

 俺は涙を拭うと泣き顔を見られたくなかったので慌ててマスクをかぶり直した。


「サヤ、この人に服を着せたいんだけど、着せ方がよく分からない。手伝ってくれないか?」


「いや、後は私がするからクロウは休んでて」


 ありがとうと礼を言うと俺は外に出た。外に出たのは大して意味はない。あまり女性の裸体を見続けるのもどうかと思っただけだ。

 俺はゾンビの残党がいないかどうか探知画面を睨みつける。すると探知画面に変化があることに気がついた。下の方に飾り枠に囲まれて設定の文字が書かれている。

 俺は慌ててカードケースを取り出すと探知のカードを見る。

 『探知Lv2:経験値14%』、レベル上がってた。

 何気にケルベロスの経験値が90%になってる。え?ケルベロス、そんなに使ってないぞ?どんな経験値の入り方してるんだ? プレイヤー倒すとゴッソリ入るとか? あとでサヤに相談してみよう。

 まずは探知の検証だ。これ、どうしたらいいんだろう? この設定を押せばいいのか? これ、空中に浮いて見えるけど、マスクのゴーグル部分に投影されてるんだよな。マスク外してゴーグル部分を押すのかな? 

 取り敢えず、空中から試してみよう。これ(はた)から見たらマヌケに見えないかな?

 探知画面は1メートルほど先に見えるようになってるから壁からそれぐらいの位置に立って押してみれば壁を弄ってるように見えるだろう。俺、天才じゃね?

 ぐっ。1メートルは遠いな。よし、届いた! うお、プルダウンメニューが開いた。

 あー、あったよ。プレイヤー、プレイヤー死体、エネミー、NPC。その下は???ってのが続いてて、それぞれの先頭にはチェックマークが付けられるようになってる。今は全部にチェックが入ってるな。

 人が多い都市とかに行ったらNPCのチェックは外さないといけないんだろうな。


「クロウ、終わったよ」


 色々考えてた内にサヤが作業を終えたようだ。

 室内に戻ると先ほどとは別のベッドに被害者の女性は寝かされていた。

 室内は犯人が食い物を漁ったのか、散らかされたままだ。俺達は二人がかりで犯人の死体を広場まで運ぶと、そこに放り投げた。


「さて、生存者と接触ですかね」


 言葉が通じるかが問題だ。俺、英語もダメだぞ?


「ボクは外人さんとか無理だからな?」


 クッソ、先手を取られてしまった。てか、外人ってむしろ俺達だよな。まぁ、しかたない、俺が行くとしよう。

 先ほどチラリと女の子がいた家だ。玄関の前に立ってドアをノックする。


「あろはー」


「まさかのアロハチョイス!」


 うっせ。状況が状況だからなごむかなとか思ったんだよ!


「あんた達、誰なんだい!」


中から大人の声が聞こえてくる。まさかの日本語……、いや、違う。理解したんだ。まったく違う言語のはずなのに日本語レベルで理解したんだ。

 思わずサヤと顔を見合わせる。サヤも驚いてるようだが、すぐに考えこむように顎に手を当ててうつむいてしまった。


「えっと、旅の者……と、言うか遭難者です。言葉、通じてます?」


「今、外はどうなってるんだい?」


お、言葉、通じたようだ。俺、思いっきり日本語で話したつもりなんだがな。


「外にいたゾンビは倒しました。ゾンビ使いも殺害しました。まだゾンビの取りこぼしがあるかもしれませんが、取り敢えず安全と思ってください」


「ゾンビを倒しただって? そんな事できるのかい?」


あ、ゾンビの弱点が頭って知らなければ意外と強敵なのか。

 ん? 今、現地語でもゾンビはゾンビって発音したな。この世界ってゾンビがよくいたりするのか?

 それとも、あのドラマがこっちでも放送されてるとか?


「えっと。ゾンビって頭が弱点なんですよ。頭を攻撃すれば簡単に倒せます」


……、あら? レスポンス切れちゃったよ?


「あんた達、どこも噛まれたりしてないかい?」


「あ、それは大丈夫です」


中からゴトリと音がした。カンヌキを外したのだろうか。しばらくカチャカチャと音がしていたが、その後、少しだけドアが開いた。

 俺は慌ててマスクを外す。コレ、怪しいからね。


「入りな」


 中から顔を覗かせたのは40代後半ぐらいの女性だ。その足元にはさっき見た女の子がしがみついていた。


「おじゃまします」


俺達が入ると女性は素早くカンヌキをかける。この家も窓をすべて閉め切っているので中は薄暗い。


「あ、クロウと言います。こちらはサヤ」


紹介するとサヤは小さく頭を下げる。あら? 人見知りですか?


「私はマーサ。こっちは孫のエイラ」


孫! 若いお婆ちゃんだな。そうか、結婚年齢が低いのか。この世界、人生50年とかだろうか。

 その孫のエイラはマーサの影から顔だけだして、目が合うとニッコリ笑顔を見せた。あらかわいい。状況わかってるのかな?

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