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スターダスト・オデッセイ2  作者: わびすけ
第一章 異世界へ
18/51

#01-18

※注意! 性的な描写があります。


 村の広場までやってきた。辺りにゾンビの反応は見当たらない。

 途中、窓からこちらを覗き見る人影を見つけた。やはり白い点は現地人のようだ。サヤはNPCって呼んでた。

 小さな女の子だった。俺は口元……クチバシ元に人差し指を立てて静かにとジェスチャーを送った。

 その子は分かってくれたのか、両手で口元を押さえる。なんだこのカワイイ生き物。そのとき跳ね上げ戸が落ちて音を立てるがご愛嬌だ。早くこの村から脅威を取り除かないとな。

 最後に残った問題、それは黄色い点と緑の点だ。そのポイントに向かうと、まずは黄色い点の姿を確認することができた。

 民家の玄関先で立ち尽くすその姿は異様なものだった。体中に木の板を紐を使って括りつけてあり、頭には鍋をかぶっている。手には剣を、これも紐で括りつけてあった。

 その下に着込んでいるのは黒いアロハシャツとハーフパンツ。足にはスリッポンシューズを履いていた。やはり、この黒を基調とした服装はプレイヤーだろう。

 俺達の事前の分析では、ヨシオがカードを奪われていなかったことから緑の点のプレイヤーはカードの仕組みを知らないと考えていた。

 なので、このプレイヤーゾンビもどこかにカードをしまっているのだろう。それも気になるが後回しだ。

 生きているプレイヤーは、室内にいるようだ。


「剣、木の槍で刺しても俺達の手に届きそうだね」


俺達の手作り槍は身長より少し短いぐらいだ。なるべく真っ直ぐな枝を探したんだが、これ以上に具合の良さそうな枝が無かったんだ。

 無い物ねだりをしてもはじまらない。俺達は槍を地面に放ると、銃と弓を手に取る。


「まずは弓で攻撃してみる」


 30メートルほど離れた位置でも奴は動く気配がなかった。異様な風体と扉の前という位置から、その場を守るように命令されているんだろう。


 サヤが狙いを十分につけて矢を放った。矢は真っ直ぐに飛んだが胴体に命中し木の板に突き刺さっただけに終わる。

 流石に攻撃されたら反応するのか、こちらに向かって走りはじめる。


「ならば! 〈ウインドスラッシュ〉!」


 近寄るプレイヤーゾンビに魔法が命中する。しかし顎から鼻先まで切り裂くことには成功するも頭の鍋に阻まれて致命傷までは至らなかった。鍋は現代の俺達が見るような薄い物ではなく、羽釜のような分厚い鉄の塊だ。それに風魔法は骨を断てるほどの威力を持つが金属ほどの硬いものがあると、途端に威力が弱まるようだった。


 その姿を見て俺は銃を向ける。一度サヤと顔を見合わせ、お互いに頷きあう。

 銃を使えば中のプレイヤーにも流石に俺達の存在がバレるだろう。そうなったら相手に対応される時間を与えず一気に行こうと話し合っていた。今、そのプランを実行することを確認し合ったのだ。


パカァアアン!


 銃声が村中に響き渡った。

 ゾンビは顔面を撃ちぬかれその場に崩折れる。

 その光景を確認すると俺達は走った。勢いを維持したまま玄関のドアにタックルする。粗末な木製のドアだったので俺のシックスパックの肉体の前に砕け散るかと思ったが、以外に頑丈で跳ね返されてしまった。

 まぁ、こういう自体は想定していた。なに、俺の手には又の名をドアノッカーなんて呼ばれてるモノを握りしめてるんだ。

 俺はマンガで見たように蝶番部分を狙って残りの2発を放つ。狙い通りドアと蝶番の接合部の破壊には成功した。だが中のカンヌキのせいか一気に開くことはなかった。

 俺はサヤとスイッチして後ろに下がりリロードする。その間、サヤがドアを蹴破ろうとするが上手く行かないようだ。

 リロードを終えた俺が代わり、ドアを蹴ると一発で蹴破ることに成功した。

 結果はあまり伴っていないが、俺達の連携は上手いんじゃないだろうか。

 少し自身を持つと一気に中へ突入する。こういう時に探知は便利だな。罠はわからないが、相手の場所はわかるので不意打ちには対応できる。

 俺がまっすぐ反応のある方に銃を向けたのを見て、サヤは一瞬あたりを見回して警戒したあと、俺の向けた銃口の先に目を向ける。

 そこにあるものを見て、俺とサヤの眉間の皺が深くなった。ゾンビを見ても怖いとは思ったが、こんな全身の血の気が引く思いをしたのは初めての体験だ。

 そこにあったベッドの上には20代ほどの全裸の女性。全身に赤黒いアザを作り股を開いた状態で事切れていた。

 NPCの死体だけってのは探知画面に反応がないらしい。だか、この先に緑の点の反応はある。

 さっきまで寛いでいた民家のベッドは藁を敷き詰めた上をシーツで覆っただけの物だった。ここも同じようだ。と、いう事はベッドの下に対象はいない。いるとしたらベッドと壁の隙間だろう。

 俺はソコに銃口を向けると声を掛けた。


「出てこいよ」


 すると、予想通りの場所から黒髪にソフトモヒカン頭の男が立ち上がった。腹立つことにコイツもイケメンだ。

 右手にはバール。左手には黒色の作業用ツナギ。足はトイレにありそうなゴムのスリッパだ。

 素っ裸に粗末なものをぶら下げた状態で、両手はそれぞれを握ったままバンザイの格好でおずおずとでてきた。


「ま、待て! 撃つな!」


 まぁ、俺でもそう言うかな。俺はその言葉に銃口を顔に向けることで応えた。


「ち、違うんだ! 悪気はなかったんだ! 頼む! 撃たないで!」


 悪気のない奴がレイプはしないわな。


「外にいた奴はどうしたんだ?」


「倒したよ」


 ぶっきらぼうに返事をする。なんだかコイツと話してるとガリガリと理性が削れる気がする。あまり話したくない。あぁ、これが軽蔑って奴か。


「そいつだ! そいつが全部悪いんだ! アイツ、俺の後をついてくると思ったらいきなりこの村の連中を襲いはじめたんだ」


ゾンビに襲われたらゾンビになるのかな?


「この村のゾンビなら全部倒した。あとはお前ぐらいだ」


「待て! 俺はゾンビじゃない! 俺も被害者なんだ!」


「ゾンビに襲われたから女性を死ぬまでレイプしたと?」


 どうしよう、この状況。捕まえて警察に? この村の様子から警察とか司法制度とか期待できないんだよな。だから殺すのか? 俺が? 人を?


「ぐっ、お前! 立ち上がれ! 俺を守れ!」


 男はそう言うと女性の死体をバールで殴りつけた。

俺もサヤもその光景をじっと見ていた。サヤもこの事態をどうするか迷っていたのだろう。


 女性は殴られたあと3秒ほどしてムクリと上体を起こした。

 あ、赤い点になった。

 そうやってゾンビを作るのか。じゃ、ゾンビに襲わせて殺害したあとコイツが1体1体バールで小突いていったのだろうか。

 それにしてはゾンビは弱すぎた。おそらく村人でも対処できたんじゃないかな? やはり、コイツはゾンビを作ることができるが、ゾンビもゾンビを作れるんじゃないかな。小さいとは言え村一つを滅ぼすなら住人が対処できないほどのスピードが必要なはずだ。

 いや、俺は何を悠長に分析してるんだ。なんか最近考える時間が増えたな。今は目の前に集中しろ。

 俺はナイフを抜くと、歩み寄る女性になるべく傷をつけないよう、その目にナイフを突き立てた。


「な!」


 あまりに呆気なく手駒が尽きたのが信じられなかったのか、男は目を見開いて驚愕を顕にした。


「う、うおおおお!」


 万策尽きたのか、男はバールを俺に投げつけようと振り上げる。


「〈ウインド―――」


 サヤが俺を守ろうと魔法を使おうとするが、させないよ。


 俺は引き金を引いた。




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