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スターダスト・オデッセイ2  作者: わびすけ
第一章 異世界へ
17/51

#01-17


「サヤ、プレイヤーがいる!」


サヤはガタリと椅子を鳴らして立ち上がりかけるが、思い直したのか座り直した。


「すぐ近くにプレイヤーの死体もある。どちらも動いていない」


 この2日の間に簡潔な報告ができるようになった。今まで生きてきてそこまで必要なスキルじゃなかったのだけど、人間て慣れる生き物なんだな。


「あとはゾンビが4体。それと不明な白い点が4つ。ゾンビはこの家の周りをうろついてる」


 家を戸締まりした時に派手に音を出したからな。ゾンビの気を引いてしまったのだろう。白い点は時々動いてる。これが現地人じゃないかということはサヤには伝えてある。


「どうしようか。俺はまずゾンビを片付けてから確かめにいきたいと考えてる」


「その考えにボクも賛成さ。あとボクなりの推理なんだけど、今回のゾンビはそのプレイヤーが犯人じゃないかな?」


人をゾンビ化させるチートか、どうやったら人をゾンビ化できるんだろう? 魔法とか薬物とか考えられるが、それは正直どうでも良い。問題は生きてる人間を直接ゾンビ化できるかどうかだ。

 俺が好きだったアメリカのゾンビドラマは死なないとゾンビ化できなかった。もしゾンビにするのに死ぬまたは殺すというワンクッションが必要ということなら相手は人を殺したことがあるかもしれない。

 俺達も散々ゾンビは倒してきたし、ヨシオにトドメを刺した時も人を殺してるとは思わなかった。

 人殺しと相対するってのに不安しかない。

 次にさっき捨てた人を殺す必要がなくゾンビにできるって場合だ。これは薬物か、細菌兵器か、それともそんな魔法か。今のところ俺達に異常は見られない。空気感染の生物兵器とかなら、すでになんらかの異常がでてもおかしくないはずだ。すると、ある程度接近する必要があるか、射程距離が短いかだろうか。今、俺達の持ってる武器で一番の射程を誇るのは弓だろう。だがそれも腕が伴わないため強みとは言いにくい。ケルベロスも有効射程距離ならば風魔法とドッコイと言ったところだ。むぅ、これ捨てる考えじゃなかったな。

 取り敢えず俺の考えをサヤにぶち撒けてみる。


「相変わらずキミはよく考えるな」


「かなりビビってるんでね」


「ふふふ。私には心強いよ」


あ、今、私って言った。ボクはどこ行った?


「そこまで予測がたったんだ。ボク達のやることは決まったね。偵察だ。さっきの考えを元にすれば遠くから見ただけでも対策は立てられそうな気がするよ」


あ、ボク戻った。ダメだ気になりだすと止まらないな。


「な、なぁ。全然関係ない話なんだけどさ。なんで、ボクって言うの?」


「今更だな! いつツッコミが入るかと結構気にしてたんだからな!」


そう言われても。


「いやね。この世界に降り立った時、姿が変わってたのにはすぐ気がついたの。

 ここ数年、ネット上では異世界転生とか、異世界転移モノって流行ってたしね。そんなの見てたら私も今までのくだらない人生を全部やり直せるんじゃないかって憧れてたの。

 でね、変わった私を見て、小さなことからで良いから自分を変えようって思ったのよ。

 その迷走の結果がボクっ娘になっちゃった。あんなイキナリな出会い方するとは思ってなかったからとっさの選択だったんだ」


サヤはうつむいて恥ずかしげに微笑んだ。


「はじめは(くるわ)言葉とか考えてたんだけどね」


「廓言葉!」


なにか、グッと込み上げてくるものがある。


「ワッチに斯様(かよう)な言葉を望みんすか?」


「イイ! 凄くイイ!」


俺、大興奮。


「ゴメン、勘弁して。一回一回考えて話すのは無理があるよ」


俺、しょんぼり。


「いや、なんだかゴメン。根掘り葉掘り聞いちゃたみたいで」


「いいよ。私が自分で話したんだから」


「でも、自分を変えようって凄いよ。俺なんかここ5年は変化がなかった。変わらない生活ってさ。楽でさ。ホントは結婚して子どもだっていておかしくない歳なんだけどさ。せめて彼女ぐらい作らなきゃとか、やらなきゃいけない事、沢山あるはずなんだけど楽な方に流されちゃって」


俺の言葉にサヤは目を丸くして驚いた様子をみせた。何か俺、失言でもしたかな?

 そう考えていると、一転ニヤニヤしはじめる。


「そうかそうか……じゃ、君もやってみると良い。廓言葉は君に譲るよ」


「え? あ? わ、わっちはー。ゴメン、これは無理だわ。ってか、これ女性専用じゃなかったっけ?」


 俺達は顔を見合わせると声を上げて笑った。

 すると、その声に釣られたのか窓からドンドンと叩く音が響く。


「あ、やべ。忘れてた」


「まったく。無粋極まるな」


「まずは、ゾンビを片づけて次に偵察な」


「ふむ。チャッチャとやってしまおう」


俺達は槍を手に立ち上がり、先程からをノックされている窓辺に近寄る。


「えっと、俺が紐を外すから、その槍で戸を上にあげて。で、顔を出した奴を俺が刺すから」


「うむ!やってみよう!」


サヤは心のつっかえが取れたのか、なんだか楽しそうだ。今から戦うってのにね。


 さぁ、チャッチャとやるとしますか。

 

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