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スターダスト・オデッセイ2  作者: わびすけ
第一章 異世界へ
15/51

#01-15


 まだ、村までは到達していない。あのゾンビが来た方向に進んでいると、1キロも行かないうちに他のゾンビに遭遇した。

 今度は複数だ、まばらに散っているものの、探知範囲に9体の反応がある。

 空腹が限界だが、焦りは禁物とお互いに声を掛けあう。良い相棒だ。彼女と出会えたのは本当に幸運だった。

 俺達はここまでの道すがらにいくつか準備をしていた。長い蔦、石ナイフ、先を尖らせただけの木の槍、先を尖らせた短いが丈夫な枝。

 俺達の作戦はこうだ。木と木の間に蔦ロープをスネの高さで張り、草で隠す。その先には逆茂木代わりに尖らせた枝を地面に刺す。それを二段構えに設置し、少数を誘導。足を奪い、槍で刺す。単純だが今の俺達の精一杯だ。

 準備を済ませると、俺は囮になるためにゾンビの群れへと進んだ。

 4体固まっている場所に近づく。何も接近する必要はない。ある程度近づくと、そこからは少し足音を立て近づく。

 1歩づつ近づくと、俺に気がついたのか3体が近づいてきた。まだ距離はあるので余裕がある。ここで俺が走りだせばもう少し離れた連中も気づいてやってくるかもしれない。あまり多くに囲まれると2人では対処できない。

 良し、ついて来ているのは3体だけだ。しかも、歩いてきている。俺を見つけてはいないのだろう。他の群れからある程度離れたことを確認して俺は走りだした。

 走りだすと俺を認識したのか、ゾンビも走りだす。先に戦った時は早いと思ったが、足の速さは俺の方が圧倒的に速かった。

 1つ目のロープを飛び越したところで、一旦待つ。

 しばらくするとゾンビが走りこんできた。

 良し! 2体が転倒した!

 俺はロープに引っかからなかった1体の胴に槍を突き刺す。この槍は先が三叉に分かれており、どこまでも刺さっていくという事はない。

 俺はその槍を手放した。そうすると石突部分が地面に引っかかり、つっかえ棒のように働きゾンビをその場に縫い止めた。

 転倒した2体を確認すると1体が起き上がっていた。

 俺は踵を返すと2本目のロープを目指す。

 その先にはサヤが待ち構えていて、近づいた俺に予備の槍を投げてよこす。

 この槍も先が三叉になっている。俺は受け取ると同時に振り返ると、後に迫っていたゾンビの胸元に突き刺す。

 ゾンビとの力比べだ。穂先の影響でその場で縫い止められている。そこにサヤが近づき狙いを定めて槍を繰り出した。

 その穂先はコメカミを突き破り脳深くまで達したのか、電池が切れたかのように動かなくなった。

 1体を処理した俺達は残りを処理するために移動する。先ほど胴に槍を刺した個体は一度転倒することで槍から脱出していた。もう1体は転倒した場所から動けないようだ。

 動けない個体は放っておいて、迫り来る方を対処する。やり方は先ほどと同じだ。俺が縫い止めサヤがトドメを刺す。

 2回目という事もあってか、すんなりと終わった。

 3体目の転倒した個体は足があらぬ方に向いており、胴体に逆茂木が突き刺さって縫い止められていた。これを近寄って頭を突き刺しトドメを刺した。


 蔦ロープを使って死体を脇に退ける。直接触るのは躊躇われた。でも、退けないとこの罠をあと数回は使わないといけない。足場は確保して置かないと命に関わる。


 この作業を結果3回行った。途中だいぶん慣れてきたので1体でうろついていたのは誘導せず、俺1人で倒したりもした。


 取り敢えず一段落したところで1体、気になる個体がいたのでサヤとその死体の前に来ていた。


「こいつ見てくれ、マントに革鎧、腰には剣の鞘らしいのを持っているんだ」


 年の頃は30歳ぐらいだろうか、髭面で筋肉質だ。


「むぅ。冒険者っぽいね」


「だろう? 俺もそう思ったんだよ!」


そう言って木の槍を使って仰向けにする。


「剣は持ってないんだよな、ん?」


その腰にナイフが差されていた。


「おお! ナイフげっと!」


鞘もなくベルトに無造作に差し込まれていたので、木の槍でなんとか取り出すと、足を使って土を刷り込む。

 何度か繰り返し、臭いが消えた事を確認してから手に持ってみる。


「鋳造、軟鉄かな」


「そんなの分かるのかい?」


「うん、造りは荒いね。でも、軟鉄って刃物にしようと思うと良い素材なんだよね、よく切れるんだ。まぁ、すぐ切れなくなるから、その度に研がないといけないけどね。それとその革鎧は牛か馬の革だと思うんだよ。あと、マント。それ綿かな」


「そこからどんなことが分かるの?」


「えっと。まず、牛や馬みたいな大型哺乳類を育てるにはある程度の面積が必要。綿も布にしようと思ったら、かなりの面積の綿花畑が必要になってくるよ。広大な面積の敷地を維持できるほどの治安維持機構がある、えっと、警察みたいな組織を作れる団体、国がある。で、鋳造の軟鉄。これらを考えると、あぁ、俺の感でだけど10世紀ぐらいの技術レベルかな?」


「デザイン的にも、西洋っぽいよね。中世って何世紀ぐらい?」


「13世紀から、どれぐらいだっけか17世紀とかじゃなかったかな? あれ大航海時代から近世だっけ? あれ? 大航海時代って何世紀からだっけか?」


うおお、昔、世界史で習ったはずなんだけどなぁ。


「じゃ、この世界は中世ヨーロッパ風じゃなく古代ヨーロッパ風なのかな」


古代ヨーロッパって、なんだかイメージが沸かない。古代って言うと俺の中ではエジプトとかギリシャとかローマとか、地中海ってイメージなんだよな。


「まぁ、文明レベルから察するに美味い飯は期待薄かなぁ」


ぐーぐーと暴れる腹の虫を上から撫でて宥めてみるが、まるで効果がない。


「よし、少し前進して飯に近づこう!」


 道々、槍を作り直し、蔦ロープを補充しながら先に進んだ。


 しばらくすると柵に囲まれた田畑が見えてきた。ゆるい斜面に作られた集落のようだ。


 探知画面には先程から赤い点が4つほど映っている。

 もう4体ぐらいならワナを使わずとも倒せる気がする。それをサヤに伝えると、さやも同意してくれた。


 俺達は柵へと近づくと、その柵を木の槍で軽く小突く。それに気がついたゾンビが俺達に向かって走りこんでくる。

 あ、点が増えた。え? 黄色い点だ。しかも動いてる!


「サヤ、黄色い点が動いて近づいてくる!」


そう言い終わるや、1番近くにいた1体が接敵する。そいつは狙っていた通り柵に阻まれて近づけないので、2人がかりで槍を突き出すと呆気無く倒すことができた。


「黄色い点てなんだっけ?」


もう1体、接敵したので槍を突き出す。


「プレイヤーの遺体が黄色だったよ」


話しながらも接敵する端から倒していく。


 そして、黄色い点の姿が俺達の視界に飛び込んでくる。


 ああ、あの頭部には見覚えがある。



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