表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スターダスト・オデッセイ2  作者: わびすけ
第一章 異世界へ
12/51

#01-12


 はい。サヤの予想通りでした。

 赤毛のバーコードさんが川岸に打ち上げられた状態で身動きひとつせず倒れていた。

 緑の点なので生きていることは確かなのだが、助けようと動き出したところをサヤに止められた。


「待ちたまえ。気を失ったフリをして待ち伏せしているかもしれない」


 その考えが俺の頭からはスッポリ抜けていた。


「おぅ、そう言うもんか。どうしたら良いと思う?」


すると、サヤは辺を見渡し2メートル程の枝を持ってきた。


「君は鉄砲を構えていたまえ。ボクがこの棒でつつこう」


 立ち位置を決めるとサヤが枝、いや棒で叩く。あ、結構強く行くのね。


「う、うぅ」


反応があった。


「おい! 大丈夫か! どこか痛むところとかないか?」


「ガッ! ガハッ! ゴボコボ」


相当水を飲んでいたのか、四つん這いになって水を吐き出している。大丈夫だと俺達に伝えたいのか、俺に向かって手のひらを向けている。


「や、やぁ、やっと人に会えたよ。いやぁ、一時期はどうなるかと思ったよ。なぁ、君たち携帯とか持ってないかい? 会社に連絡取らなきゃいけないんだ」


 ああ、この人、まだここが異世界だと認識できていないか、認めたくないかだろうか。

 顔だけ見ると20代後半に見えるが、実際の年齢はどれくらいなんだろう?


「自分の年齢、わかりますか?」


ダメ元で聞いてみた。


「え? 年齢? 歳? 私か? 私は54になったばかりだが、それがどうかしたのかね?」


俺はマスクを取って素顔を見せた。


「俺、何歳に見えますか?」


「18から22といったところか?」


「俺、32ですよ」


「ボクの年齢は秘密だ!」


うん。サヤは好きにさせておこう。まだ棒でつついている。


「これから言うことをゆっくり考えて下さい。行きますよ? あなたの名前を教えて下さい」


「わ、私の名前は……私の。こ、これはどう言うことだね!」


「俺達も同じ境遇です。俺はクロウ、こっちがサヤ。二人とも本名は思い出せません」


狼狽えながらも、赤毛バーコードは立ち上がると髪を整え始めた。あ、この人ふだんからこの髪型だったのかな? 動きがナチュラルすぎる。


「で、おっちゃんの名前はなんなの?」


 まだ棒でつつきながら、サヤが尋ねる。


「私の名前は(まんじ)恐怖騎士(テラーナイト)よしお(まんじ)だ。いや、本名は違う名前のはずなんだ!」


 ぐっ。案外マトモな名前じゃないか。俺とは大違いだ。


「そうだ、君のその格好、あれだろ? サバイバルゲーム。芸能人とかもやってる人、多いって聞いたことがあるぞ? 車、そうだこんな山の中まで来てるんだ。車か何かで来てるんだろう? 近くの町まででいいんだ、乗せて行ってくれないか?」


あらら。まだ理解してくれないらしい。俺とサヤは顔を見合わせた。どうしたものだろう。


「えっと、俺達も人里を探してるんですよ。このまま、川沿いに下っていけば見つかるんじゃないかと思ってます」


 その言葉に落胆したのだろう。疲れた顔をしながらネクタイを緩め始めた。


「はぁ、君達も迷子なのか。それにしてもここはどのあたりなのだろうね。奥多摩あたりだろうか」


あら、サヤさんや、そんなに露骨に嫌な顔しなさんな。


「俺、地方の人間なんで東京の方のことはあまり知らないんですが、丸一日たって飛行機の音も聞こえませんし、この辺の植物も見たことないものばかりですよ」


「とんでもない田舎に置き去りにされたということか」


疲れ果てた顔でハァと深いため息をつく。ため息をつきたいのはこっちだよ。

 人の話が聞けない人なんだろうか。それとも長年蓄積された常識が邪魔をして現実が受け入れられないのだろうか。

 どちらにしても、余りここで時間を無駄にしたくない。サヤを見ると彼女もこちらを見た。なぜか首を左右に振っている。どういう意味だろう? 


「俺たち、そろそろ行こうと思いますけど、どうされますか?」


「えっ? どこに行こうと言うんだ?」


あかん。頭痛い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ