表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

アカルディアの森で④

「なんだ?あの女に惚れでもしたのか?」

「んなばかな。だってあの武器かっこわりーよ。」

「は?」

「だから、弓矢なんて俺のかっこいい戦闘スタイルには合わないっていってんだよ。」

またアホがアホなこと言い出した。

「何いってんだ、お前。魔王倒すには神聖武器が必要なんだぞ!」

「だとしてもあんなかっこ悪い武器いらねーよ。ただ増えるだけだぞ?増えるだけ!なぁ、増えるだけ!増えるだけだ!スライムみてーじゃねーか!スライムだぞ!スライム!スライム!」

「うるさい!スライムスライム言うな!」

ニコーラが顔を真っ赤にして抗議してくる。

「俺はもっと、ビームが出る杖とかさ、雷を切れる剣とかさ!そういうかっこいいのを想像してたんだよ!だいたい色だって黄色で地味だし。」

「琥珀色だ!」

ニコーラが再び叫ぶ。

「あーあ、無駄足だったな。帰ろうぜ、みんなー。」

すっかりやる気をなくしたラグが道を引き返す。

「おいしそうな、食材もゲットしたし、あたしも帰るわ。」

ニア、お前は何しに来た。

「お前ら!私を馬鹿にするなーーーー!」

とうとう頭がぷっつんしたニコーラが弓矢を放つ。勇者様が「待て!」と制止したがもう遅い。何百にも増えた矢が空から俺たち目がけて飛んでくる。

「ぎゃあああああ!」

ラグが真っ先に走って逃げる。お前がいらんこと言うからだろうが!

「ちっ!たまには使わねーと鈍るかね。」

身体を低くして背中の大剣をすらりと抜く。

「いっちょやりますか!」

目をつぶり、炎魔法の詠唱を開始する。発動直前で目を開け、炎を剣にまとわせる。一応、技の名前があるが恥ずかしいので省略。

「だぁあ!」

「おおおお!オレグの『フレイミング・ドラグーン』だ!」

「言うなぁああああああ!」

俺が技の発動準備に入ったことに気づいたラグが振り向いて恥ずかしい技名をばらす。俺は叫びながら魔法を発動。それと同時に大剣を振るい、魔法で作った炎龍を襲いくる弓矢の方向に飛ばした。

「きゃああああ!」

空中で激しい爆発が起こり、聖女様が甲高い悲鳴を上げる。俺がふっと短い息を吐いて、天井を見ると、弓矢は全て炎龍に食べつくされていた。

「んだよ、神聖武器も大したことねーな。」

「オレグにやられるぐらいの武器なんかいらねーな。」

ラグが近寄ってきて「よくやった」と言うので殴っておいた。


「そんな!神聖武器が!」

ニコーラが悔しそうに唇をかむ。

「仕方ありません。オレグ様は本来勇者パーティーにいるべきお人。いずれは戻ってきてくださるはずです。」

聖女様がちらちら見てくる。こっち見んな。

「とりあえず、神聖武器もいらねーなら行くぞ。」

「うぃーす。」

俺に殴られた頭をさすりながらラグがついてくる。ニアに至っては先に行ってしまってもう見えない。

「おーい、サフィーナも行くぞー。」

うつむいていたサフィーナにラグが声をかける。

「え?」

「この森に居場所ねーんだろ?なら俺と行こうぜ。んで魔王倒すぐらい強くなってまた戻ってきて、村の奴らぼこぼこにすればいいだろ?」

「私…でも…。」

「大体こんな小さな森でずっと暮らすなんて面白くねーよ。もっとでけー世界見ようぜ、俺みたいに!」

次だ次ー!と叫びながらラグは走って道を戻る。

「…んでどうすんの?」

「…行きます。」

目に光を宿したロリエルフがはっきりと宣言する。

「っ!姉さんみたいな役立たずついて行ったって無駄よ!」

「あー?」

ニコーラが余計なこというので一発お見舞いしてやろうかと思ったが、ロリエルフが「うるさい!」と返したのでやめといた。

「私は!私は!絶対に強くなる!あなたを倒せるくらいに!そしてこの森を歌と動物であふれた豊かな森にするの!神聖だからって通行を制限したら、この森は衰退するわ!だれもが癒される森にするの!」

「そんな森にしたら、エルフの伝統が穢される!」

「そんなことで伝統は穢されない!森のエルフは気高くて!優しくて!強いのよ!!」

「んあ?」

ロリエルフが絶叫すると、俺の胸元から琥珀色の光が漏れる。

「なんだ?牙が光ってんぞ?」

確認すると、金になるかと思って死んだイノシシから切り取ってきた琥珀色の牙がまばゆい光を放っている。しかも、ロリエルフの言葉の強弱に合わせて光も強くなったり、弱くなったりする。

「おいおい、いったいなんだってんだ!」

「私は!お母様みたいな強くて優しいエルフになるのぉぉぉ!」

「ぐっ!」

目も開けられないほどに光が牙から溢れ、俺はそれを地面に落とす。「俺の後ろに隠れろ!」という勇者様の声が聞こえた。

「ぅあ、あ…嘘…。」

すると戸惑ったような女の声が聞こえだした。まるで鈴が鳴るような聞いているだけでうっとりとするような声だ。

「っ!お前!」

目が回復してきたので、声がした方向を見ると、そこには絶世の美女が立っていた。琥珀色の艶のある髪に、蜂蜜色をしたとろりととろけそうな大きな瞳。ニコーラと同じぐらいの身長で、スレンダーな体格。しかしその肌の色はニコーラよりも透けるように白い。

「どうして!?どうして幼体から覚醒するの!」

ニコーラが怒声を上げる。

「え?は?お前あのロリエルフか?」

「はい…。そうみたいです。」

こんな美女の申し訳なさそうな顔見たらちょっと興奮するな。

「嘘よ、嘘!姉さんはずっと幼体のままなんだからー!」

「ちっ!」

なんかよくわからんが、ニコーラが錯乱してまた神聖武器の弓矢をつがえる。ロリエルフを後ろに下げさせ剣を構ようとするが、ロリエルフは「やめて!!」と声を出した。

「きゃあああ!」

その瞬間、がくりとニコーラの体から力が抜ける。

「ニコーラ!」

勇者様がその体を支え「ニコーラに何をした!」とにらんでくる。いや、最初に攻撃してきたのそっちだからな。

「いや、私は…。」

ロリエルフがおびえたような顔でこちらを見てくる。仕方ないので、意識を切り替えそのステータスを確認してやった。

「ん?お前、歌姫ディーバだったのか?」

歌姫ディーバだと!?そんなはずあるか!!」

うるせーな、勇者。

エルフが持つ能力の中でも、もはや廃れて久しいと言われている歌姫ディーバ。その美しい声を聞くだけで、敵は戦意を喪失してしまう。

「ひゃ!」

ロリエルフが悲鳴を上げたので、視線を向けると、いつのまにかロリに戻っていた。それと同時に光とともに消えていた琥珀色の牙が現れる。

「…変身能力付きって知ったらあのアホが興奮してうるせーから黙っとけよ。」

「あ、はい。」

「んじゃ、さっさとズラかるぞ。あいつらうるせーから。」

「はい!」

ロリエルフ、サフィーナを小脇に抱え、俺はその場を後にした。



サフィーナ

性別:女

種族:エルフ

職業:ロリ(歌姫)

技:聖なる歌声

スキルレベル:99(99)

特徴:変身機能付き


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ