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アカルディアの森で③

「次どっちだ!」

「あ、右です!」

「ラグ、行くぞ!!」

ロリエルフを抱えて走るのに1分でバテたラグと交代して、俺が抱えて走っている。

エルフの野郎どもはしつこく、後ろからずっと矢を放ってくる。しかも俊敏で、ひょいひょいと木の上を走り回ってやがる。

「あああああ!めんどくせええ!」

俺が叫ぶと、ロリエルフが小さい声で「すいません」と謝る。

「私のせいで…。」

「悪いと思ってんなら、俺たちを無事に祠まで送り届けろ!」

俺が怒鳴ると、ロリエルフは涙目になりながらも「はい!」と元気な返事をした。

「いい返事するじゃないか。」

鍋を頭にかぶって攻撃から身を守っているニアが近づいてきて笑う。お前、そんなもんかぶらなくてもエプロン着れば攻撃なんて当たらねーぞ。

「ぎゃああああ!」

「うるせええ、ラグ!」

わめきながら後ろから走ってくるラグの首根っこを掴んで、ロリエルフが指示する方向に走る。何とか攻撃をかわしながら走っていると、崖が見えてきた。

「おい!行き止まりじゃねーか!」

「いいんです!飛び込んでください!」

「できるか!おい、ラグ!Uターンする…。」

「ぎゃあああああああ!死ぬぅぅぅ!」

「くそばかやろおぉぉぉ!」

崖のギリギリで止まった俺を抜いて、崖へと飛び込んで行った。

「…ちょっと、どうするんだい?」

ひゃあああと悲鳴を上げながら崖に吸い込まれていくラグを冷たい目でみながらニアが尋ねてくる。

「…ほんとに大丈夫なんだろうな!」

「私を信じてください!」

「しょうがねー!行くぞ!!」

「ついていくパーティー間違えたかね。」

「今更だろ。」

にやっと笑いあった俺とニアは意を決して崖へと飛び込んだ。


びゅんびゅんと風が通り抜けていく。崖の下は真っ暗でどこまでが底なのか検討もつかない。

「ニア!離れんなよ!」

「わかってるよ!」

少し離れていたニアのそばまでなんとか近づき、その手を握る。少し先にラグがいるが、あいつのことはどうでもいい。

「おい、ロリエルフ!この先どうすんだ!地面についたら全員お陀仏だぞ!」

「任せてください!」

ロリエルフは自信満々で言うと、俺には聞き取れない言葉をぶつぶつと唱え始める。おそらくエルフ語だろう。

「―――!!!」

唱え終わると同時に、ラグを含めた俺たちの体をまばゆい光が包む。

「うっ!」

その光がカッと弾け、思わず目をつぶった。ゆっくりと目を開けると、いつのまにかじめじめとした洞窟内に移動していた。

「なんだってんだい、これは!」

ニアがよろよろと立ち上がる。

「…試しの洞窟ってのはそういうことか?」

俺が聞くと、ロリエルフが「はい」と答える。

「神聖武器のために命を懸ける覚悟があるのか。それが試される入口です。この先を行けば神聖武器が納めてある泉に着きます。」

「じゃあ行くぞ!」

考えなしに崖に飛び込んだラグが先頭をきろうとしたので、げんこつを入れて後ろに蹴とばしておいた。


俺が先頭になって洞窟を進むと、向こうから光が漏れているのが見える。

「あそこです!」

ロリエルフが駈け出したので、急いで後を追う。そこには案の定、勇者御一行様がいた。

「あ、ニコーラ!」

その中に見慣れないエルフの女がいる。真っ黒でストレートの長髪にエメラルドグリーンで少し吊り上った瞳。ニアと同じくらいの長身に真っ白な肌。

「え?ニコーラって妹?え?なんで?」

ラグが混乱しているが無視する。

「姉さん、なんでここにいるの?」

ニコーラとやらが小馬鹿にしたようにロリエルフに話しかける。

「わ、私は!」

「へったくそな歌しか能がないお姉さまがこんなところで何をしてるのって聞いてるの。こんなところまで来て!また村のみんなに迷惑をかけてるのね!」

「ちがっ!」

「いい加減にして!この森の後継者は私なの!」

「…これ修羅場ってやつなのか?」

「黙ってろ!」

ラグが声をかけてくるが、また変なことを言いそうなので手で口をふさぐ。

「姉妹ってのは複雑だね。」

「一足遅かったな、偽勇者!」

勇者様が口をふさがればたばたと暴れるラグに向かって叫ぶ。その手には矢じりが琥珀色に輝く一本の弓矢があった。

「これが神聖武器の一つ、『射抜きの弓矢』だ。一本放つだけで、何百にも分身し敵を一掃する。」

「へぇー、すごいもんがあるんだね。」

ニアは勇者様の方をむこうともせず、泉に生えてる植物や魚を物色している。

「偽勇者には使いこなせない代物ですわ。」

聖女様も自信ありげに笑う。

「…だとよ、ラグ。残念だったな。…奪い取るか?」

「はっ!やれるものならやってみなさい!そんなことをすれば、全員ここで死ぬことになるわ。」

勇者様から弓矢を手渡されたニコーラが俺に向かって弓を構える。

「お前、殺されてぇのか?」

ちょっと痛い目見せてやるかと背中の大剣を抜くが、俺の拘束から抜け出したラグが俺の腕をぽんとたたき止める。


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