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アカルディアの森で

「お前たちなんてことをしてくれたんだ!」

ロリエルフが弓矢を構えたまま、木の上でぎゃんぎゃんわめいている。うるせぇ。

「なんだ、もしかして殺しちゃいけない生き物だったのか?」

「当たり前だ!こいつは私が倒すつもりだったんだ!!」

ぷはーとタバコをふかしていると、ロリエルフが目を吊り上げて叫ぶ。

「は?お前が倒す?」

「そうだ!琥珀の牙を持つ主を倒せれば、私が森のエルフの後継者になれるはずだったんだ!!」

「そりゃー残念だな。」

「ほんとに残念だな。」

「ほんとにな。」

同じくタバコを吸い始めたニアといつのまにか立ち上がり、イノシシの肉をごりごりと削っているラグが続く。お前、顔のことはもういいのかよ。

「お前たち!私をなめてるだろう!私はこの森のエルフの後継者だぞ!」

「今、こいつ倒したら後継者になれるって言ってたじゃねーか。ならまだ後継者じゃねーんだろ。」

「うるさい!黙れ!」

頭に血がのぼったのか、ロリエルフが弓矢を放ってくる。それをやすやすと手で受け止め、へし折ってやった。

「何すんだ、このクソガキが!」

ちょっとにらんでやると、すぐ涙目になったが「うるさい!」と虚勢をはりやがった。

「お前たちのせいで!せっかく妹に勝てる絶好の機会だったのに!お前たちのせいで!」

「妹?妹がいるの?」

肉を切り取り終わって、俺に持ってきたラグがロリエルフに話しかける。

「黙れ!人間風情が私に話しかけるな!」

「じゃあ話しかけてくるなよなー。」

俺から肉を受け取ったニアが皮肉っぽく言ったあと、すぐに調理を開始した。

「妹に勝てるってなんでー?」

ラグが戦闘で汚れてしまった鎧を脱いで、布で磨きながら尋ねる。もはやだれもロリエルフの方は見ていない。

「うるさい!」

「お前がうるせーよ、用がねーならさっと帰れ。」

弓矢の矢じりをロリエルフの足元めがけて投げつけると、「ひっ!」と短い悲鳴を上げてバランスを崩した。

「きゃああ!」

悲鳴を上げながらロリエルフが木から落ちる。おー、このままだと頭から落ちるな。でも攻撃してきたやつ助ける義理ねーし。無視するかとニアの方に向き直ると、ラグが急いでロリエルフの方に駈け出した。

「おい、助ける必要ねーだろ。」

「だぁぁぁああ!」

一応声をかけたが、ラグは全速力でロリエルフの下に滑り込んでクッションになった。

「ぐえええ!」

「きゃあ!」

ラグの背中に落ちたロリエルフが驚いてラグの上から降りた。

「あっ!あの!えっと!」

ん?ロリエルフの様子がおかしいな。さっきの毅然とした様子は全くなくなってなんだかおろおろしてやがる。

「うごおおお、怪我ないみたいでよかったわ。」

ラグがロリエルフを見てにっこりと笑う。

「ひっ!ひっ!ごめんなさあああああい!」

ラグの笑顔を見たロリエルフはとうとう幼女らしくわんわん泣き出した。


「ご飯までいただいてごめんなさい。」

「え?いいよ、別に俺らじゃ食べきれねーぐらいあるし。」

ラグ、お前は口に食べ物入れたまましゃべるのいい加減やめろ。

ニアが作ってくれたのはアカルディアボアの香草焼きと骨を炊いてとった出汁を使った山菜スープ。柔らかいパンと森の果物だった。ほんとにうまい。

「ほんとに、怪我でさせてしまった、ほんとに、ほんとにごめんなさい。」

おい、ロリエルフ。お前、鼻水がスープに入っているぞ。泣き止め。

「…妹に勝つとかの話はなんなんだい?」

もしゃもしゃと飯を食う俺たちの姿を満足そうに眺めていたニアがロリエルフに尋ねる。

「あ、あの、私、この森を管理しているエルフの娘なんです。森のエルフは豊かな自然や管理している財宝を守るために、戦闘能力の高さがもっとも必要なんです。本来なら今の森の管理者の第一子である私がその後継者のはずなんです…。」

でも、とまたロリエルフが涙を流す。

「私は戦闘がからっきりダメで。妹のニコーラの方が強いんです。見た目が成長しない私と違って、森のエルフとして十分な体格と容姿を持っています。それで、仲間から、私は後継者としてふさわしくないと言われたんです。」

「ふーん、それで?」

「おい、ラグ!勝手に俺の肉まで食うんじゃねー!!」

「えっと…。でも私はこのきれいな森を守りたいんです。死んでしまった母との約束でもあるので。でも、私が後継者になることに多くの人が反対して、それで父が『琥珀の牙を持つイノシシを倒したら認めてやる』と言ってくれたんです。」

「それを俺が倒しちゃったのかー。」

飯を食い終わったラグがげふっとゲップをして、ニアに「うまかった!」と声をかけた。

「それじゃあ、このイノシシ持って行けよ!」

「…父の部下が見張っていて、私が倒していないということはすでにばれています。後継者にならなければ、この森に私の居場所はないんです…。」

ロリエルフがまたひんひんと泣き出す。

「なんだ、お前。ほんとは弱いのに強いふりかよ。くだらねえ。」

弓を放ってきたこと忘れてねーぞ俺は。意趣返しのつもりできついこと言ったらさらにひどく泣き出しやがった。

「おい、オレグ!幼女いじめんなよ!」

ラグがよしよしとロリエルフの頭をなでる。

「とりあえず、今日はここで休めよ。明日、エルフの村まで送ってくからさ。小さい子が夜の森をうろうろしたらあぶねーし。」

腹いっぱいになったし、俺は寝る!といってラグは早々に寝袋にくるまって寝息をたて始める。

「あたしは料理の片づけしてくるよ。あっちに川があったしね。」

鍋などを抱えたニアもいなくなった。

「…ラグがそういうなら俺が言うことは何もねーよ。ガキはさっさと寝ろ。」

「えっと…私エルフなので年齢は1000歳超えてるんですけど…。」



臨時加入メンバー

ロリエルフ

レベル:不明

身長:120㌢

年齢:1034歳


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