目玉焼きにしよう②
「許さんぞ、人間ども!お前らが我が子を盗んだのだな!!」
黒龍は怒りで我を忘れているみたいだな。その場で何回も足踏みをして、大きな翼をはばたかせる。そのせいで、洞窟の天井がぱらぱらと崩れている。あぶねーぞ、これ。
「おいおい、生き埋めなんて勘弁してくれよ。」
とりあえずこの狭い場所から逃げるのが先決だな。
「ラグ!いったん外出るぞ!」
「おぎゃああああ!」
声かける前に出口にダッシュするラグの背中が見える。
「オレグ!お前のことは忘れないぞぉぉぉおお!」
俺に手を振りながら去っていく。
「てめぇ!俺を囮にしてんじゃねーぞ!!」
「っ!待て人間ども!」
ラグを追う俺に黒龍がついてくる。ドシンドシンという地響きと同時に洞窟が少しずつ崩れていく。
「くそがぁああ!」
久しぶりに全速力で走り、洞窟内から出る。そしてすぐに炎魔法を詠唱し、洞窟の入り口付近に狙いを定める。
「え!どうしたんだい!?」
「入口から離れろ!」
状況がつかめていないニア達に指示を出した後、魔法をぶっ放す。
「待て、人間ども!!」
黒龍が洞窟の外に顔を出した瞬間に、天井が崩落した。がれきが黒龍の首を埋める。
「ぐあああ!」と黒龍がうめき声をあげたところを見ると、体ごと地面にたたきつけられたみたいだな。
「危ないところだったな…。」
キメ顔で俺の肩を叩いてくるラグに足払いをする。「うぎゃあ!」と言ってラグが倒れる。お前、後で覚えとけよ。
「おい、黒龍さんよ。」
「くそ!人間め!」
「そうカッカするなよ。卵を洞窟から持ってきたのはあそこでうめいてる馬鹿野郎だ。悪かったな。」
こっちが悪いからな。一応頭を下げたが、黒龍様の怒りは収まらない。
「ふざけたことを言うな!お前らが都から我が子を盗み出したことは分かっている!!」
「あ?」
何言ってんだこいつ?黒龍の頭の近くにしゃがみこんでその眼を見つめる。
「都って何の話だよ?そんな所行ったことねーよ。」
「嘘をつくな、いやしい人間め!」
「…言葉に気をつけろよ、このトカゲ野郎。」
「な!」
俺が頭を足でぐりぐりと踏みつけると、黒龍が目を見開く。
「貴重な黒龍様だと思ったから礼を尽くしてやったのにいやしい人間風情とかふざけたことぬかしやがって。トカゲの丸焼きにしてやろうか、この野郎。」
「黙れ、この盗人め!我らが龍の都に無断で立ち入り、我が子を盗み出したことは分かっているのだ!しかもいやしい人間領のこのような場所に卵を隠すとは!」
「…。何いってんだお前。」
「やめろ!頭に足を乗せるな!!」
何言っても通じない黒龍の頭をぐりぐりと踏み続ける。
「なぁ、俺が持ち出したのはこの洞窟からだぞ。」
ラグが恐る恐る近寄ってくる。
「嘘をつくな!」
「嘘じゃねーよ。散歩してたら洞窟の中から変な音が聞こえたんだよ。これは伝説のお宝でもあんのかと思って入っていったら。よく分からん魔法がかかった卵があったんだよね。」
ラグが黒龍の近くにしゃがみこむ。
「…。」
黒龍は黙り込んでラグを睨みつけている。
「そのままにしてもよかったんだけどな。俺、腹が減ってたから目玉焼きにしようと思って、頑張って魔法解いたんだよね。」
「貴様!我が子を目玉焼きにしようと思ったのか!」
「もち!」
ぐっと親指を立てるラグを黒龍が怒鳴りつける。おい、余計なこと言うな。
「大切な我が子を食べようとは!愚か者めぇええ!」
怒りに震えた黒龍の力がどんどん高まっていくのが分かる。体を左右にゆすり、がれきの中から這い出ようとしている。
「おい、こりゃーやべーぞ。さっさと始末したほうが良さそうだ。」
俺は後ろに下がった後、目をつぶって大規模雷魔法の詠唱を始める。
「お前ら後ろに下がってろー。」
貴重な黒龍だけど、ここまで怒ってたら話なんか聞かねーだろうし。まともにやりあうのもめんどくさい。さっさと殺した方がいいな。
「オレグ、ちょっと貸せ。」
「え?ちょ、おい!」
俺が詠唱に集中しているうちに、ラグが俺の鞄の中から卵を奪って這い出そうとしている黒龍の前に立つ。
「人間め!お前なんぞに我が子を渡すかぁあああ!」
黒龍は今にも口から炎をふき出そうとしている。
「おい、ラグ!下がれ!」
俺が怒鳴りつけると同時に、ラグは黒龍にげんこつを喰らわせた。
「うごぉ!」
黒龍が殴られたことによって、口を閉じうめき声をあげる。
「な!何を!」
黒龍がわめくとラグが「うるせぇ!」ともう一発げんこつをくらわした。
「話聞け!」
「ちょ!痛い!やめろ!」
ラグがごんごんとその拳を何度も黒龍の頭にたたきつけている。よく見ると、その手に雷魔法をまとわせているようだ。
「おぉ、前教えた技ちゃんと習得したみてーだな。」
ラグの説教タイムが始まったみたいなんで、俺はタバコタイムに入る。
「自分の子供なら死ぬ気で守れ!何盗まれてんだ!」
「いや、盗んだのあんただろ。」
傍に寄ってきたグィンガンがもっともなことを言うと、ラグがこっちを振り返る。
「俺は捨てられた卵だと思ったんだよ!」
「う!うるさい!盗人猛々しいとはこのこと、うごぉ!」
「うるせぇ、言い訳すんな!」
ラグは黒龍が「分かった!話を聞くからやめろ!」と白旗を上げるまでげんこつを繰り返した。




