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「……なるほど、そんなことがあったのか」
応接室ではアルノルトがここまでの経緯を説明し、貴族の男が難しい顔をした。
「それで、フランツさんが今日中にランドルフ家に行かなければいけないとおっしゃっていたので、急いで村を出てきたんですが...」
「…今日がお嬢様の登校日だと聞いて、今日までにと思いまして」
ランドルフ家に騎士として呼ばれたフランツという男は、ばつの悪そうな顔をしながらつぶやく。
「しかし、灰狼に飛び出した挙句、けがしただけではなく、周りに迷惑をかけるとは、騎士として雇うにはどうかと思うが… シモンよ、お前の推薦した人物であるがどうだ?」
「はい、申し訳ありません。故郷からの手紙でよい人物がいると聞いたものですから、私も実力は把握できておりませんでした。誠に申し訳ありません」
貴族の従者らしき男は頭を下げる。
「謝罪が聞きたいのではない! おそらくこの者ではソフィーの従者としてはやっていけぬであろう。帰りの駄賃でも渡して帰ってもらえ!」
「そんな! けがまでしてここまで来たのに…」
「黙れ!自業自得であろう」
フランツが驚き、シモンに連れられて部屋を追い出されると、貴族の男はアルノルトへと向き、話しかける。
「アルノルトといったか? おぬしは、騎士団に入りたいのであったか?」
「は、はい。エイベルさんが貴族の方であれば騎士団への推薦状を書いていただけるかもしれないといっていたので、フランツさんについてきたのですが」
「ふむ、分かった。推薦状の件は任せておくがよいが、相談があってだな...実は、今日はわしの娘が王都にある魔法学園に行く予定なんだが、同行させる騎士がおらんのでな、おぬしに頼みたいと思っておる」
貴族の男は、そういうとアルノルトをみつめる。
「少しの間だけでいいのだ。その、わしの娘は少々癖があってだな… 学園が休みになる前にいた騎士を弱いといって解雇してしまったのだ。もしおぬしが娘の騎士をしばらくやってもらえるなら、その分の賃金も出すし、後続が決まれば騎士団への推薦状も書くと約束しよう。悪い話ではなかろう」
「え、と、あの、僕なんかでいいんでしょうか?」
「ふむ、話を聞く限り戦闘面では問題もないであろうし、見ている限りよこしまな考えも起こさぬであろうと私は思うのだが」
「わ、わかりました。僕も今日は行くところがなかったので、しばらくよろしくお「お父様!」
突然、応接室の扉が開かれ、少女が入ってくる。
「騎士などいらぬと、何度も、申しましたでは、ない、です……か」
勢いのまま大声を上げていた少女は、小柄な少年を見て、その思考を止めた。
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