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時は遡り、アルノルトが王都への道中である。
「エイベルさん! ここなら周囲に魔物の気配もないですし休憩できますよ」
「いや~、助かるよアルノルト君! 商人の僕じゃ魔物の気配とかわからないからね。いい護衛を雇ったよ本当に」
「いえ、僕も方向音痴だし、王都まで迷わず行けるんで助かってます」
「まあ、ほぼ一本道なんだけどね…」
アルノルトはエイベルと呼ばれる商人の護衛として王都へと向かっていた。そこで馬車をひく馬を休ませるため、休憩するために木陰へと入った。
「それにしても護衛は僕一人でよかったんですか? 普通ならもっと雇うんじゃないですか?」
「冒険者のパーティだとどうしても高くなるし、僕も商人だからね安いに越したことはないし、君のことは信頼してるし、大丈夫だよ」
「ふぁ、あの、ありがとうございます! その信頼に応えられるよう全力を尽くします!」
「あはは、そんなにかしこまらなくてもいいよ。実力はオークに襲われたときに知ってるし、あの時もすごかったね。刀だっけ? その剣。あのオーク達を一撃とは…」
オークとはDランクに数えられる魔物の中でも群れる習性があり、群れの際は、Cランクの討伐以来としても出されることがある。
「い、いえ、僕なんてまだまだで刀の扱いも未熟で、これも祖父から未熟者にはちょうどいいといわれて頂いたものなんです。だから騎士団に入ってしっかりと実力を身につけないと…」
「へえ、まだ強くなりたいんだねアルノルト君は、僕も王都出身だから騎士はよく見るけど君みたいな身のこなし方をできる人は多くないんじゃないかな」
「そうなんですか、しかし、騎士団に入るための試験は厳しいと聞きますし、油断はできません!」
「うん、その心構えがあればきっと騎士になれるよ! 応援してるよ!」
「あの、ありがとうございます! あ、馬たちももう大丈夫みたいですよ。十分休めたみたいです」
馬を見ながらアルノルトが言うと
「そういえば、アルノルト君は精霊魔法も使えるんだっけ? 精霊も使役できるなんてすごいじゃないか。それこそ騎士団にはなかなかいないと思うよ」
精霊魔法とは自身の魔力を精霊たちに与えることで精霊の力を行使するものである。魔法には精霊魔法のほかに一般的な呪文を唱えて行使する詠唱魔法、魔道具などに使われる魔法陣を描く描写魔法に広く大別される。
「い、いや、そのかわりに僕は詠唱魔法とかは使えないですし、精霊を使役というよりは友達として助けてもらっている感じなんです」
「精霊と友達か、森に住むエルフみたいなことを言うんだね… さて、じゃあ行こうか」
「はい!」
休憩を取ったのち、2人はしばらく馬車に揺られていると、何やら狼たちに苦戦している人達を見て、アルノルトはすぐさま駆け出していた。
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