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もうひとりの訪問者

 その日の夜、僕が自分の部屋のベッドで寝転がりながらスマホを弄っていると、突然電話(ちなみに、この異世界で僕が使っていた携帯電話の機種は僕が元いた世界と同じ機種だった。ただし、その電話帳に登録されている名前には僕の全く知らない名前がいつくかあった。逆に僕の知っている友人の名前が登録されていなかったりした)がかかってきた。まさか電話がかかってくるとは思っていなかった僕は慌てて電話に出た。着信は確認しなかったので、誰からの電話かはわからなかった。電話に出ると、耳元に響いたのは女の子の声だった。聞き覚えのない声だった。


「もしもし、勇気?」

 と、電話をかけて来た声の主は親しげな口調で僕の名前を呼んだ。


「……うん。そうだけど」

 そう答えた僕の声は、相手が誰なのかわからないせいもあって、無意識のうちに警戒しているような響きを帯びてしまっていた。


「……わたしのことわからない?明美だけど。斉藤明美」

「……ああ」

 と、僕は名前を名乗られても、彼女が一体どこの誰なのか記憶になかったので、曖昧に頷くことしかできなかった。


「……」

 電話の向こう側で、何を考えているような間があった。それから、

「やっぱりね」

 と、斉藤明美と名乗った女性は急に声のトーンを落とすと、何かを確信したように言った。


「やっぱりって?なにが?」

 僕は気になったので訊ねてみた。すると、少し躊躇っているような間があって、

「もし、違ってたらごめん」

 と、斉藤明美は前置きしてから、驚くべきことを口にした。

「あなた、武田くんじゃないでしょ?」

 と、斉藤明美は唐突に言った。


「……」

 僕は斉藤明美の発言に驚いて黙っていた。今日はこれで二回目だ、と、僕は思った。一度目は遠藤くん。そして二度目は、斉藤明美という、恐らく、こちらの世界で僕の知り合いだった思われる女性。それにしても、彼女が言った、武田くんじゃないでしょ?という問いの意味を、僕はいまひとつ計り兼ねていた。彼女は、僕のことを異世界の人間だと見抜いてそう言っているのか、それとも全くべつの、意図するところがあってそう言っているのか、どちらとも僕には解りかねた。


「でも、安心して」

 と、僕が黙っていると、斉藤明美は続けて言った。

「わたしはべつにあなたのことを責めてるわけじゃないのよ……何と言うか……わたしも、あなたと同じだと思うの……たぶん……」


「同じって?」

 と、僕は確認してみた。


「ごめん。電話じゃ、詳しく話せないのよ。もしかしたら、盗聴されてる可能性もあるし……」

「盗聴って?」

 僕は奇異に思って聞き返した。盗聴?どうして僕たちの会話が盗聴なんてされにければならないのだ、と、僕は気になった。


「とにかく」

 と、斉藤明美は僕の問いを遮って言った。

「今から会えない?詳しいことは会ってそこで話すから」

「……」

 僕があまりの展開に上手くついていくことができずにいると、

「悪いことは言わないからわたしのアドバイスに従って。……じゃないと、あなた、このままだと、かなり危険よ」

 斉藤明美は諭すように言った。彼女の声のトーンはかなりシリアスで、僕のことをからかって遊んでいるようにはとても思えなかった。ほんとうに僕の身には今何か危険が迫っていて、彼女は本気で僕に警告してくれているのだ、と、感じさせる緊迫感がそこにはあった。

「……わかった」

 気がついたとき、僕は彼女と会うことを承諾していた。




 斉藤明美とは近くのファミレスで落ち合うことになった。僕が指定されたファミレスまで歩いて行くと、斉藤明美だと思われる、若い、僕と同い年くらいの女性が、ファミレスの入り口付近に立っていた。僕には果たして彼女が斉藤明美なのかどうかいまひとつ判断しかねたのだけれど、彼女は僕の顔を知っていたようで、

「武田くん?」

 と、僕に近づいてくると、声をかけてくれた。


 僕たちはファミレスに入ると、窓際の席に向かい合わせに腰掛けた。注文を取りに来たウェイトレスの女の子に僕はドリンクバーを注文し、斉藤明美はドリンクバーといちごのケーキを注文した。僕たちは注文を終えると、それぞれ席を立ってドリンクバーに飲み物を汲みにいった。僕はアイスコーヒーを入れ、彼女はホットの紅茶をいれて席に戻った。


 明るい光の下で見る斉藤明美は結構綺麗な顔立ちをしていた。目はどちらかという細く、綺麗な二重をしていた。鼻筋はすっと通っていて、唇は小さかった。顔の輪郭は綺麗な卵形をしていた。長い髪の毛は薄い茶色に染められていて、ポニーテールにまとめられていた。こちらの世界で僕と彼女は一体どういう関係だったのだろうと僕は少し気になった。


「急に呼び出したりしてごめんね」

 と、斉藤明美は今入れて来たばかりの紅茶を一口啜ると、僕の顔を見て申し訳なさそうな声で言った。

 僕は彼女の言葉に軽く首を振った。そして僕もさっき入れて来たばかりのアイスコーヒーを少し飲んだ。


「ところで、僕に話したいことって?」

 と、僕は用件を訊ねてみた。斉藤明美は少し緊張しているような面持ちで僕の顔を見ると、軽く頷いた。そして軽く迷うように間をあけてから、

「まず、確認なんだけど」

 と、斉藤明美は口を開いた。

「わたしが思うに、あなたはたぶん、わたしの知っている武田くんじゃない?……それは合ってる?」


「……たぶん、合ってると思う」

 僕は慎重に答えを選んで言った。斉藤明美は僕の返答に頷くと、更に言葉を継いだ。

「そして多分……あなたは……もしかしたら変なことを言ってるように聞こえるかもしれないけど……あなたは、こことは違う、べつのところからやってきたんじゃない?……つまり……異世界みたいなところから?」

 斉藤明美はそう言ってから、どう?違う?といような目で僕のことを見た。僕は彼女がずばり、核心を言い当てたので、目を見張った。どうして彼女にそんなことがわかるのだろう、と、不思議に思うというより、僕は単純に驚いた。僕が驚きのあまりに何も言葉を発することができずいると、彼女はそれを否定の意味に受け取ったようで、

「……ごめん。今わたしが言ったことの意味がわからなかったり、違っていたりしたら、気にしないで」

 と、斉藤明美は軽く眼差し伏せると、いいわけするように少し小さな声で言った。


「……いや、違うよ。そうじゃなくて……」

 と、僕はいくらか慌てて言った。

「……合ってるよ。斉藤さんの言ってる通りだよ」

 と、僕はいくらか強張った声で告げた。


 斉藤明美は伏せていた眼差しをあげると、何を検分するように軽く目を細めて僕の顔を見つめた。僕は言葉を続けた。

「……僕はその、なんというか、たぶん、ここではない、世界から来た人間なんだと思う……自分でもそんなことがほんとうにあるのかどうかわからなくて、ときどき、自分の頭がおかしなってしまったのかなって思うこともあるけど……でも、たぶん、僕の頭はおかしくなってないと思うし、だとすれば、ここは、僕の知っている世界とは違うんだということになると思う」


 僕いくらか眼差しを伏せるようにして、自信のなさそうな声で言った。僕はそう言ってしまってから、伏せていた眼差しをあけると、斉藤明美の反応を確認してみた。僕としてはちょっと心配だったのだ。彼女の口から異世界という単語が出て来たので、真実を告げてもまず間違いないだろうとは思ったのだけれど、でも、もしかするとという恐れはあった。僕が早とちりをしてしまっていて、僕は何か全然、彼女が思っていることとは違うことを口にしてしまったんじゃないかと心配だった。でも、どうやらそれは危惧に終わったようで、

「……やっぱり、思った通りだった」

 と、僕の告白を聞いた斉藤明美は呟くような声で言った。そうして斉藤明美は僕の顔を真っすぐに見つめると、

「大丈夫。あなたの頭はおかしくなんかなってないわ」

 と、断言した。


 僕が斉藤明美の言葉にどう答えたらいいのからわからずにいると、

「……武田くん……この呼び方で良いのかわからないけど、武田くんの考えている通り、今、わたしたちが居るこの世界は、武田くんの知っている世界とは違っているの」

 と、斉藤明美は言葉を続けた。


「どうしてそんなことがわかるのかというと」

 と、言って、斉藤明美は言葉を区切った。それから、思い出しようにテーブルの上の紅茶を口元に運んだ。

「実はわたしも武田くんと同じ経験をしているからなの」

 と、斉藤明美は言って、手に持っていた紅茶の入ったカップをまたソーサーの上に戻した。

「同じ経験?」

 と、僕は彼女の顔を見ると、反芻した。彼女も僕と同じ経験をしているということは、やはり彼女も僕と同じように、あの、異世界への行き方というサイトを見てしまったのだろうかと気になった。でも、帰って来た彼女の答えは、僕の予想していたものとは少し違うものだった。


「わたしがこちらの世界にやってきたのは小学校の五年生のとき」

 と、静かな声で斉藤明美は話はじめた。

「……もしかしたら、変に聞こえるかもしれないけど、わたしって、もともと霊感?みたいなものが強い子供だったの。見えないものが見えたりとか、誰かが死ぬのがわかったりとか……」

 斉藤明美はそこまで話すと、僕の反応を気にするようにちらりと目をあげて僕の顔を見た。彼女も僕と同じで、自分が頭の壊れた危ない人間だと僕に思われているんじゃないかと不安に感じたのかもしれなかった。だから、僕は、

「……大丈夫。僕はそういうのに抵抗とか、偏見はない方だから。きっとそういうものがわかったり、見えたりするひとだって実際にいるんだと思うし」

 と、僕は斉藤明美を安心させるように言った。斉藤明美は僕の発言に頷くと、言葉を続けた。

「で、それが起こったのは、友達と公園で遊んでいるときだったの」

 と、斉藤明美は言った。


「そのとき、わたしたちは滑り台で遊んでて、一番最初にわたしが滑り台から滑り降りたんだけど……で、滑り台を降りてから、他のみんなが降りてくるのを見ようと思って振り向いたら、どうしてか、そこにいるはずのみんなの姿が急に消えてしまっていたの」


「……みんなどこかに隠れちゃったとか?」

 僕は斉藤明美の話に、恐る恐る言ってみた。彼女は僕の問いかけに頭を振った。

「……当然、わたしもその可能性は考えたし、だから公園中をくまなく探したんだけど、でも、結局、みんなの姿は見つからなくて」

 僕は斎藤明美の話に、適当な感想が見つからなくて黙っていた。僕が黙っていると、彼女は言葉を続けた。


「それで、わたし、みんながわたしに意地悪して、わたしのことを置いてさきに帰っちゃったんだと思ったの。だって、それだけ探してもみんなの姿が見つからないっていうことは、もうそれしか考えられなかったし。その当時は携帯電話なんて持ってなかったら、電話をして確認するっていうわけにもいかなかったから」

 僕は彼女の話に耳を傾けながら、人気のない、夕暮れの公園で、途方にくれているひとりの少女の姿を思い浮かべた。


「……だから、わたし、仕方なく、家に帰ることにしたんだけど……」

 と、斉藤明美は軽く目を伏せて言った。そう言った彼女の口調は同時の状況を思い出したせいなのか、気落ちしているような、弱い声になっていた。

「でも、家に帰ってみると、更に様子が変になってたの」

 と、彼女は言葉を継いだ。


「まずお母さんの性格が別人みたいになってて」

 斎藤明美は眉間に皺を寄せると、難しい顔つきをして言った。

「……それまでわたしが知ってるお母さんはあんまり勉強のこととかやかまくし言う方じゃなかったんだけど、その日、家に帰ってみたら、急に教育ママみたいになってて……今までどこで遊んでたの?勉強は?ってキツい口調で言われて……それから、あと、存在しないことになっちゃってたの……わたしには二つ年下の弟がいたはずなんだけど、でも、弟なんていないことになってて……」


 僕は斉藤明美が口にした言葉に驚いて、軽く口を半開きにしながら呆然と彼女の顔を見つめた。

「……あと極めつけだったのが」

 と、斉藤明美は僕の顔をちらりと見ると、またすぐに目を伏せて言った。


「次の日、学校に行くと、クラスのみんなの大半が……なかには今までと変わらない子もいたけど……でも、ほとんどの子が、全くの別人みたいになってたの……性格とか、話し方とか……あとはそもそも知らない子がいたりとか……」


 僕は斉藤明美の話に耳を傾けながら、自分が彼女と同じような状況に置かれたところを想像して、恐ろしくなった。というか、彼女がそのとき置かれ環境は、今の僕の状況とよく似ていた。僕の場合は、彼女の場合ほど極端ではなかったけれど。


「……そのときはわたしもまだ子供だったし、異世界とか、そういう知識もなかったし、だから、ただ単にわたしの頭がおかしなってしまったんだって無理に納得させるしかなかったんだけど、でも、それからだいぶ時が流れて、わたしも色々知識とか……あとそれからちょっとしたことが起こって……でも、これは説明すると長くなるから今は端折るけど、とにかく、そういうこと色々があって……確信するようになったの。あのとき、わたしは思いがけず、こちら側の世界へ来てしまうことになったんだって。滑り台を滑り降りた先は、わたしがそれまでいた世界と良く似た異世界になってしまっていたんだって……」


 僕は斉藤明美の話に圧倒されてしまって、上手いコメントが思いつかなかった。僕はテーブルの上のアイスコーヒーを少し飲んだ。

「……なるほど、斉藤さんの体験は、僕が体験したこととすごく似ているね。こちら側の世界へ来ることになった切っ掛けは少し違うけど、あとはだいたい似ているかな……」

 僕はなんとなくテーブルのうえあたりに視線を落としながら、少し小さな声で言った。


 ウェイストレスの女の子が注文していたいちごのケーキを運んできてテーブルの上に置いて行った。斎藤明美はそれをフォークで掬って一口食べた。


「……武田くん場合はどうだったの?」

 少しの沈黙のあとで、気になったのか、斉藤明美は訊ねて来た。僕は伏せていた目をあげて彼女の顔を見ると、自分がここ一ヶ月近くのあいだに体験しことを話して聞かせた。異世界についてインターネットで調べているときに、偶然、異世界への行き方というサイトを見つけたこと。そしてその行き方を試してみたところ、思いがけず、実際に異世界へ来てしまうことになったこと。当然、僕はもとの世界へ戻ろうとしたのだけれど、でも、残念ながら今のところその試みは上手くいっていないこと。


「……斉藤さんは、もといた世界への戻り方を知っているの?」

 と、僕は斉藤明美の顔を見つめると、訊ねてみた。彼女は僕の問いに、目を伏せると、どことなく哀しそうな顔つきで短く首を振った。


「残念ながら、それはわたしにもわからないの」

 と、斉藤明美は呟くような声で言ってから、残り少なくなってきた紅茶を啜った。

「……昔、何度か、わたしも、もしかしたらと思って、自分がこの世界へ来る切っ掛けになったあの公園の滑り台へ行ってみたことがあるけど……でも、効果はなかった」


「……なるほど」

 と、僕はアイスコーヒーを飲むと頷いた。ということは、もし仮に、僕があのホームページを再び見つけることができたとしても、もとの世界へ戻るのは難しいのかもしれなかった。


「……ところで」

 と、僕は斉藤明美の顔を見ると、遠慮がちな口調で訊ねてみた。

「斉藤さんはどうして今日、僕に声をかけてくれたの?というか、どうして僕がこの世界の人間じゃないっていうことがわかったの?」

 斉藤明美は僕の発言に、訝しむようにその綺麗な二重の瞳を細めて僕の顔を見つめた。


「……武田くんは、ほんとうの、ほんとうに、わたしのこと、何も覚えてないの?というか、知らないの?」

 僕は斉藤明美の問いに、首肯した。僕はほんとうにいま目の前に居る、斉藤明美という名前の女性のことを何も知らなかった。こちらの世界での僕と彼女は一体どういう関係だったのか、全く何も知らなかった。僕が居た世界に斉藤明美という名前の女性は存在していなかったし、似たような顔立ちの女性と知り合いになったという覚えも特になかった。


「……そうなんだ」

 と、僕の返答を聞いた斉藤明美の顔は、気のせいか、気落ちしているようにも感じられた。

「……今の武田くんはわたしの知ってる武田くんじゃないから、それはしょうがないと思うけど……でも、わたしと武田くんは小学校のときからの幼なじみなの」 

 と、斉藤明美は説明してくれた。


「……大学はべつべつになっちゃったけど、小、中、高校と、ずっと同じ学校だったし……それに」

 と、斉藤明美はそこで言葉を区切ると、微かに顔を赤らめた。

「……わたしたち、少しのあいだだけだったけど、付き合っていたこともあるのよ。……でも、すぐに別れて、友達に戻っちゃったけど」


「……そうなんだ」

 と、僕は驚いて言った。こちらの世界の僕はこんな綺麗な女の子と付き合っていたことがあるのか、と、信じられないような、羨ましいような気持ちになった。

「……ちなみに、なんで僕たちは別れてしまうことになったの?」

 僕は気になって訊ねてみた。すると、僕の発言に、斉藤明美は信じられないというように軽く唇を尖らせた。


「それは武田くんが言い出したんじゃない?なんか自分たちが恋人同士なのは変な感じがするから、友達に戻ろうって……」

 僕は口を半開きにして、唖然として、斉藤明美の顔を見つめた。こちらの世界の僕はどうしてそんなもったいないことをしてしまったのかと信じられなかった。

「……なんでそんなもったいない……」

 と、僕は思わず口にしかけて、慌ててアイスコーヒーを飲んで誤摩化した。斉藤明美は僕の失言に、少し顔を赤らめていた。


「それで」

 と、斉藤明美は改まった口調で続けた。

「わたしたちは友達同士に戻ったんだけど、でも、ときどきは連絡を取り合ってたの。でも、このところずっと武田くんから連絡がなくてどうしたんだろうって気になってて……そして今日大学の帰りに、ばったり武田くんの姿を見かけて、声をかけたんだけど、でも、武田くん、全然わたしのこと無視していっちゃうし……わたし武田くんに嫌われちゃったのかなぁって哀しくなったんだけど、でも、ふと気がついたの。そういえば武田くんのオーラが違ったって」


「オーラ?」

 僕は斉藤明美が口にした言葉の意味がわからなくて反芻した。斉藤明美は首肯してから続けた。


「さっきも言ったと思うけど、わたし、昔から霊感みたいなのがある方なの。で、ひとを見ると、そのひとの周囲に光で出来た煙みたいなものが見えるんだけど、その光の色が、わたしが知っている武田くんの色と違ってたの。……だから、もしかしたらって気になったの。もしかしたら、武田くんはわたしと同じ体験をしているんじゃないかって。最近武田くんから全く連絡がなかったのも、わたしに気がつかなかったのも、もしかしたら、そのせいなのかもって気になって。だから、今日、思い切って電話で確かめてみたの」

 と、彼女は言った。


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