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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

午前二時ノ洋館ニテ頭ノナイ死体ガ発見サレマシタ

作者: 桧瀬

トウジョウジンブツ

 

サトウユウマ

スズキアオイ

オカノリンタロウ

タナカミヤビ

カンノユミ

――――――――――――――――


 自分たちの目の前にあったのは古い椅子に腰かけ少し優雅に足を組んでこちらを大きな目でギョロリと見ている、いや彼女の頭は既になかった。

「…お、おい…」

彼女の頭のない死体がそこにあった。

「ぅ……、ぁ、う、うわぁあああぁぁぁあぁぁぁあ!!!!!!」

雷雨と共に悲鳴が木霊する。そしてドタバタと響く複数の足音。

「お、おい! 大丈夫か! サトウ!」とリンタロウがアオイとミヤビを連れてこの部屋にやってきた。そして直にこの部屋がどんな状況か理解をしたアオイの顔は段々歪みはじめる。

「え、ユ、ユミ、な、なんで、頭ないの、なんで、え、何で………」

「おい、サトウ。この部屋は密室だったか」とミヤビは一つも動揺する事もなく淡々と僕に話し掛ける。

「……密室? あ、うん…、鍵が掛かっていた」

「…鍵? この洋館に鍵なんて一つもついてないぞ」

「え、そ、そうなのか…? んじゃ何で……」

「アンタらは何でそんなに、人が死んでるのに、人が…人が……何で何でよ…!!」

「私情を持ちこんじゃうと正直言ってこれ短編だから感情を入れる時間もないんだよね。密室殺人だし」

「そうだぜ、アオイ」

「リ、リンタロウまで…」

――――――――――――――


「この部屋の状況をまとめると…この死体はカンノさんで頭がない死体でこの部屋は密室だったって事か」

「何で密室が出来たの?」

「俺に聞かれてもな…。いや、でももしかしたら俺ら以外の人間が殺したとかは?」

「連続殺人?」

「そうそう。殺人鬼ジェイソンがチェンソーを持ってカップルばっかり襲うんだろ」

「怖いよ、ちょっと」

「…それはないだろ?」と大幅に脱線してしまった路線を僕が修正を施す。

雷が轟く。

「まぁそれもそうだな。こんな酷い雷雨で山奥なのに人がこっそりと来そうでもないし」

「ヒィー…雷こわっ」

「アオイはびくびくしすぎ」

「え、だ、だって怖いものは仕方ないもん……」

「………ははは…アオイは………?」

ミヤビの顔が少し歪む。目は泳ぐ。

「だって?」

そんなミヤビの顔を見て俺はクスリと笑う。

密室? そんな馬鹿な事があるわけがないだろう? 


だって! 第一発見者の! 俺が殺したんだから!


「…え、どうかしたの、サトウくん?」

「どうもこうも…お前らってやっぱバカだな」

死体の足元に隠していた斧を手に取る。カンノを殺した時の血がまだ乾いていなくて俺の顔に付く。

「―――――、ぁ」

くっぱぁと引き裂かれたアオイの首元から血が溢れ出す。

くぽぽぽぽ。

「え、あ、ぁ、アオイ、ぇ、な、なんで、あ、な、な、は…!!!!」

「…ひひっ、いや、だってさぁ。ミステリー小説でよくあるじゃん? クローズドサークルってね。いやそれは全滅物殆ど無いか…、まぁ全滅しちゃってもいいよねー。だってさ、ここはほぼ絶海の孤島なのだから」

「だぁ、ぁっ、だぁからっ、俺らを、殺さなくても……!!」

「まぁ確かにそうなんだけどさぁ…」といって俺はリンタロウの腹を狙って刃を翳す。

「ぁ、ちょ、ぁ、ゃ、やめ、やめ、ぅぃぅうぅぅうううぁあぁっぃいぃぃいぃいぃぅうぅううう………!!!!」

リンタロウの顔は落ちた。


「…で、ミヤビ。お前は気付いてたんじゃないのか?」

「それを知ってどうする?」

「さぁ…」

「―――気付いていたに決まってるじゃないか。だって―――」

雷鳴に合わせるようかに音が鳴る。

ミヤビがその言葉を言い切ろうとする所で目の前が暗転する。少し離れたところで血溜まりが浮かぶ。ミヤビは芋虫の様に蠢く。そして暫くしたところで絶命をする。

「…は?」

目の前にはカンノが此方をじっと見ていた。

カンノユミ?

「カンノ…?」

「そうなのですー。私はカンノユミ。その死体はカンノユミ2って事かな」

「つまりカンノが二人も…?」

「んーま、そういう事でいいんじゃないのかな? あーじゃこーじゃ説明するのもめんどくさいしー」

カンノの手には拳銃があった。

「でもさぁ…サトウくん。私を殺さなくても良かったんじゃないの?」

「……うるさい」

「うるさい? 何で?」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!」

斧を翳して、カンノに向かって振るう。当たらない、あたらない、何で何で何で何で、コイツらは俺の秘密をばらした奴らだ、だからこの洋館にオカノが集めて俺を俺を俺を僕を僕を僕を僕を僕を僕を僕を僕はカンノユミを殺した。なのに何でもう一人カンノユミがいて何でまたスズキアオイはオカノリンタロウはいきかえってるのああああああなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでしたいはここにあるのにしたいはしたいはしたいあはははははああああああ、あああああ。

あ?


「…ここでサトウくんに聞こえないようにネタばらし。全部はサトウくんの妄想でした! 私が死んだ辺りから。……って言ったら納得しちゃうかな? あははーうそだよ。

――――いや、でも私が二人もいただなんて…。まぁカンノユミが二人いるって事は仕方がない事でしょう? だって私は本物のカンノユミだから。あっちで死んでるのは整形をして私そっくりにしたカンノユミ。サトウくん以外のクラスの皆でお金をためてからクラスで二番目に嫌われ者でブスなヤツに『私そっくりの顔にしてね』って頼んだの。そしてそのブスは整形をしてからずっとこの洋館に閉じ込めていた。…あ、もちろん適当な食料は与えてたけど。

そしてクラスの皆はサトウくんが大っっっ嫌いなのです! どうしてかって? だってサトウくんはクラスメイトを殺したの。クラスの皆は知っている。だから私らはそれを担任に言った。でも大事にはされなくて私たちは拍子抜け。

だから私たちはサトウくんが偽者のカンノユミを殺すように仕掛けた。そして私たちはその犯行の様子をムービーで録画をして担任に言いつける。これこそが私たちの本の目的! そして犠牲者はいっぱい出たけど私たちはそれを成功させた! これでサトウくんは永遠に嫌われ者! 

本当にこれで私たちのクラスに平和が訪れるんだよ! ほらアオイもリンタロウもミヤビも一緒に喜びあおう! これからも皆でクラスの秩序を乱す邪魔者を消して行こうね!」


カンノの喜びの声だけが二人だけ残る洋館で虚しく響いた。



もう諦めモード。

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