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38話

言えない

新作のネタを思い付いてそっちにかかりっきりなったせいで投稿が遅れたなんて言えない



 結局露店での買い食いは断念し無念の涙を流したのも今は昔。っていうか数時間前。

 すでに新壮式は午後の部が開始され、トーナメント戦も佳境へと突入した。


 驚いたことに新壮式は一日で全試合を消化するらしい。

 負傷によるドクターストップがあるとはいえ、夏の甲子園も真っ青な過密日程である。二度と魔法が使えない身体になったりしたらどうすんだ。


 あ、もしかしてアイズさんはそれを憂慮して「魔法が使えなくなったら」なんて質問をしてきたのか?

 果たして魔法の酷使でそうなるかは分からないが、その時はマジで手品師に転身……いやでもネタが足りねーな。


 つーかよくよく考えてみれば俺アイズさんの質問に答えてなくね?魔法が使えなくなったらどうするかって聞かれて手品を披露するとかマジわけわかめ。

 そしてなんであの人も教えられた手品に満足して帰っちゃったかな。また今度顔を合わせる機会があったら改めてお答えしよう。


 まあそれはさて置き。


 トーナメント準決勝の二試合目。日は傾いて空は茜色に染まっている。

 これの前に行われた準決勝第一試合では予選から変わらず圧倒的な力の差を見せ続けるイングリットが勝利し、決勝への一番乗りを果たした。


 そして今、俺ともう一人で残された決勝進出の切符を争っている。

 その相手が……。


「これだけ魔法が直撃してるのに傷一つ入らないとか、その『シールド』はどうなってるのよっ!?」


 トレードマークのツインテールを激しく揺らしながら波状攻撃を放ってくるティナだった。友達とはいえその辺は割り切ってるようでかなり本気度高めで立ち向かってくる。

 間違いなく特攻全振りだな。まあ魔法使いは全員そうか。


 とりあえず俺に迫る魔法は一つ残らず『シールド』に弾かれては消えて行く。試合が始まってから俺は一歩もその場から動いていない。

 対してティナはどこかに突破口があるんじゃないかと四方八方からありとあらゆる魔法をぶちかましてくる。成果はゼロだが。


 なぜ俺がこんなに消極的なのかと言えば、単に反撃してティナに怪我を負わせるのを回避するためだ。

 コルネリオ達には怪我させたじゃないかって?

 傷は男の勲章だからいいんだよ。俺はいらないけど。


 そんな訳で非戦の構えでティナの魔力が尽きるのを待つことにしたのだ。

 気分的には縁側でお茶を啜ってるくらいの余裕を持ちながら攻撃魔法を防ぎ続ける。


 それからまたしばらくティナの猛攻は続いたが、やっと限界が近付いてきたらしくその息が上がり始めた。

 心なしか魔法の威力も弱まったような気がする。


「ハァ、ハァ……全然、ハァ……効かないのは、さすがにショックね……」


「これでも僕だって本気でやっているからね」


「言ってくれるじゃない。全力なんて少しも出してないくせ、にっ!」


 強めた言葉尻と同時に放たれた火球はやはり『シールド』に阻まれて霧散する。


「“戦わないで勝つ”ことに本気なのさ」


 ティナが魔力の消費を抑えるために詠唱破棄で発動できる魔法に切り替えてきたようだ。まだ諦めないのか。

 過密日程での準決勝だというのに驚異のタフさである。


 俺?俺は一回戦で会場のほぼ全員にドン引きされたからトーナメントじゃまともに戦ってないんで元気は有り余ってる。


 その分一回戦の後でリリーに「わたしの心配を返しなさいよっ!」って理不尽な理由で怒られたけどな。プリプリしながらも客席に戻ってったし応援はしてくれてると思うけど。

 あとリリーと一緒にいた友達らしき女の子二人が俺を見る目は完全に恐怖で染まっていた。そういうのってダメージでかいよね。

『アップデート』で精神力上げてなきゃ普通に泣けるレベル。


 コルネリオ達をちょっとビビらせただけなんだけどなぁ。試合後に会ったフィオナまでいつもの笑顔を震わせてたけどそんなに刺激が強かったか?

 まあなんにしろ“攻撃”魔法は未使用だから万が一後からアレコレ言われたとしても言い分は立つだろう。


 等々ボーっとしながら無駄なことを考えてるうちに戦況に変化が訪れていた。

 どうにもティナが限界っぽい。身体を折り、両膝に手をついて倒れまいと踏ん張っている。

 スタミナ切れなのは確定的に明らか。


「ハァ……ハァ……」


 息が荒い女の子ってエロイよね、とか場違いな思考全開でティナに歩み寄る。

 いや別にこんな場所で猥褻行為を働くつもりはないけど。


「ティナ、もう終わりにしよう」


「何よ、やっとまともに戦うつもりになったの……?」


 こんな状態の女の子にガチバトル仕掛けるとかそれどんな鬼畜野郎だよ。人間か?


「僕に女の子を痛め付ける趣味はないよ」


「なら、どうするわけ?あたしは降参なんてしないわよ、絶対にね……!」


 その声も、瞳に宿した光にも諦めの色はない。追い詰められた状況でもティナの闘志は折れていなかった。


「ティナの意志は強いね、君が友人であることを誇りに思うよ。だからこそこれ以上疲弊する姿を大衆に晒すのは心苦しい」


 できれば途中で諦めて降参してほしかったんだけど、それが嫌だというなら仕方ない。

 痛い思いをしないで済むように一瞬で決着をつけよう。


 銀色の魔法陣がティナの頭上と足元に出現する。その二つの魔法陣が帯状の光で繋がれ、あっという間に円柱の檻が構築された。

 銀色が一際その輝きを強くする。


「何よ、コレ……またおかし、な魔法……を……」


 口を開いたティナの言葉は最後まで続くことなく途切れる。

 魔法陣を消すとティナが力なく俺の腕の中へ倒れ込んできた。それを優しく受け止める。


「お疲れ様。立てるかい?」


「…………ムリ」


 意識はあるようで、憮然とした声でティナが呟く。

 それを聞いてミュラー先生が試合終了のジェスチャーをみせる。


『戦闘不能のジャッジです。決勝進出を決めたのはスタビノア選手となりました!』


 実況の言葉に会場から歓声が上がる。

 俺への、ではなく勇戦したティナへの惜しみない拍手と労いの言葉がほとんどだが。

 勝ったの俺だよね?なんて軽く凹みつつも自力で立てないティナを背中に背負った。


「ちょ、ちょっと!」


「どうかした?」


「なんでカイトは平然としてるのよっ?こんな、いきなりおんぶとか……皆見てるし、すごい恥ずかしいんだけど……」


 疲労と羞恥でしおらしくなったティナが可愛い。

 よってその意見は棄却することにした。


「試合に勝ったのは僕だ。だから今は勝者に従ってもらおうか」


「うぅ……イジワルっ!」


 反論できず恥ずかしさに耐えきれなくなったティナが俺の背中に顔を埋めた。

 シュレリアやイングリットと比べて貧そ……ごほん。控えめな体つきだが、やっぱり女の子だなぁと実感する軽さと柔らかさである。


 その感触に思わず神様へ感謝していると、顔を埋めたままのティナがうらめしそうな声を漏らした。


「ねえ、あたしに何したのよ?体に全然力が入らないんだけど」


「それは秘密だよ。でもすぐに治るから安心してくれていい」


「別にそういう不安はないわよ。ただ今まで努力して積み上げてきたものが何一つ通用せずに負けたのが悔しいの」


 俺の首に回された両腕に力が込められる。まさかこのまま俺の息の根を止めるつもりじゃあるまいな。

 ティナの声色はそんな冗談を口にできないほど沈んだものだった。


 俺には分からないが彼女なりに思うところがあるんだろう。

 才能に頼りきって大した努力もしてない俺がティナを慰めるような言葉を吐けるはずもない。


 そんな俺にできるとしたら……そうだな。慰めて背を押すことじゃなくて、前を向いてぐいぐい手を引いていくことくらいか。


「悔しいってことはそれだけ本気なんだろう?」


「……そうよ。あたしは負けたくないの、もう二度と。そうでなきゃきっと……」


「そうか。ならこれからは少し厳しくいこう」


「厳しくって……なんのこと?」


 え、そこでハテナ浮かべちゃうの?


「ティナはもっと強くなりたいんだろう?なら『魔力フィールド』に関する技能だけで満足してはいられないじゃないか」


 中二病同盟としてもティナに教えたいことは山ほどある。

 魔力や魔法陣を効率的に運用するだけで地力は上がるだろうし、加えて俺の中二的魔法を習得すれば間違いなく戦力向上に繋がるはずだ。

 見た目はアレだけど。


「それってあたしに魔法を教えてくれるってこと?いいのっ?」


「駄目な理由が見当たらないけど」


「だってあたしは他国の人間なのよ。『魔力フィールド』だって魔法史を塗り替えるような発見なのに、それ以外のものまであたしに教えたらこの国にとって有益な情報が漏洩するかもしれないわ」


 なんだ、ティナが心配してるのはそんなことなのか。

 別に大丈夫じゃね?ティナが自発的に漏らすならともかく、国の利権どうこうはいくらなんでも大袈裟っしょー。


「ご忠告には感謝するよ。でも僕は国や利益よりも友人の悩みを優先する人間でね」


 あまり重く考えてくれるな、という気持ちを込めて少しおどけた口調でそう告げた。


「ということで今から僕はティナの友人兼師匠になる。何か異論は?」


「無いわよ、そんなの……」


 再び顔を俺の背中に押し付けたティナが、未だ止まない歓声にかき消されるほど小さな声で呟いた。


「ありがとう、カイト」


 どういたしまして、というセリフは飲み込んだ。声が湿り気を帯びているような気がしたからな。







side イングリット・ランカスター



 控え室の扉がノックされ、その扉を開いて新壮式を執り行っている運営の人間が姿を表した。


「失礼致します。イングリット選手、決勝戦開始のお時間になりました」


「分かりました」


 心を落ち着けるために行っていた瞑想を中断して瞼を開ける。

 すると不安げな面持ちで私を見つめるエミリアと目が合った。


「なんて顔をしているのエミリア。私なら大丈夫よ」


 立ち上がり両の手のひらでエミリアの頬を包む。

 少しでもエミリアの面持ちを和らげようと笑いかけてみるも表情に変化はなかった。


「イングリット様」


「何かしら?」


「どうかお気を付けて」


「ええ、ありがとう」


 深々と礼をするエミリアに見送られて控え室を後にする。

 向かう先にいるのは決勝戦の相手、カイト・スタビノア君。

 私にとって彼の存在は優勝を賭けた相手というよりも大きな意味を持つ。


 スタビノア君に初めて出会ったのは二週間ほど前の外部者入試試験でのこと。

 その実技試験において大地を揺るがすほどの高威力を誇る魔法を放ち闘技場を半壊させ、周囲の雑木林も吹き飛ばすという被害をもたらした。


 しかしそれらを瞬き一つするよりも早く完璧な状態で復元してしまった。

 その時に感じた、規格外という他ない圧倒的な魔力。それを私は危険が孕んだ力だと判断した。


 私はスタビノア君の人柄を知らない。顔を合わせたのは二回だけだし、そのどちらも彼は笑みを浮かべ飄々とした態度を崩さなかった。

 その本心が全く窺い知れない。


 そんな人間が、規格外の力を持った人間が学院内にいるという事実。

 彼が取り返しのつかない被害を学院や生徒に与えないという保証はない。そうなる前に対処するのが私達院生騎士クラウンナイトの使命だ。


 ゲートを抜ける。

 そこで待ち受けているのは観客の声援と魔法によってライトアップされたステージ、そして緊張も興奮もなく自然体で佇む彼。


 ここまでの彼の戦いぶりは承知している。

 まともな戦闘と呼べる戦いは皆無。唯一攻撃を仕掛けたのは初戦だけで、それ以降は戦闘行為すらとっていない。

 それでも勝ち上がってきたのは実力差がかけ離れているから。


 スタビノア君はきっと私よりも強い。恐らく私は負ける。

 だとしてもこの試合で彼を可能な限り見極める必要がある。


 桁外れの魔力に物を言わせて自分勝手に振る舞うような人であれば、私が彼を止めなければならない。


「貴方に聞きたいことがあります」


 会場の喧騒に阻まれないよう、スタビノア君との距離を詰めてそう問いかける。


「なんでしょう?」


 警戒などまるでしていない、人当たりの良い笑顔。それが私と彼の力量差を物語っているようだ。

 でもそれに怯んではいられない。


「スタビノア君、貴方はとても強いわ。だからこそ教えてほしいことがあります」


「僕に答えられることならなんなりと」


「それだけの強さを求めた理由は何かしら?その力で成したい目的でもあるの?」


 駆け引きはしない。真っ直ぐに懐へ入り込む。

 これで僅かでも動揺を誘い出せればと、そう考えていた私に返ってきたのは……。


「目的、か」


 初めて見る、スタビノア君の酷く悲しげな表情だった。

 どうしてそんな顔を……。


「僕は何かを望んでこの力を手に入れたわけではないよ。ただ偶然与えられたに過ぎない」


「悪い冗談ね。あれだけの魔法を才能だけで扱っていると言いたいの?」


「まあそう思うのは当然か。でもそれも間違いだ」


「どういうことかしら?」


「僕は自分の力を十全に発揮したことは一度もない。それどころか自分の力を抑え込むのに苦心するばかりさ」


 そう言ってスタビノア君は自嘲するような笑みを浮かべた。

 彼がそんな表情をするのは意外に思える。


「僕を強くなんてない……むしろその逆だよ。僕の力を誰よりも恐れているのは他ならぬ僕自身だ」


 目を伏せ、右の手のひらを見つめるスタビノア君の声は弱々しい。


「ランカスターさんがこんな質問をするのは僕がこの力を暴君のように振るうことを恐れているからだろう?」


「……ええ、そうです」


 嘘偽りなく、きっぱりと言い切った。

 院生騎士クラウンナイトで取り締まりを行っているにも関わらず生徒間での魔法を使用した諍いは絶えない。彼が新壮式へ出場を決めた経緯も似たような類いだ。


 今回は派手な立ち回りを演じたものの大きな被害を与えなかったとは聞いているし侮辱的な言葉を吐いた彼らに同情するべき点はないけれど、スタビノア君が力の入れ方を僅かでも間違えてしまったら……どうしてもそれを考えてしまう。

 そんな懸念をスタビノア君は迷うことなく肯定した。


「うん、君の判断は正しい。そして世の中の大半の人々もそう考えるだろうね。この魔力は誰かが恐れる何かをなし得る力だ。僕に企みがあろうがなかろうが排除しにくるかもしれない」


「そう思うのならこんな目につく場所で魔法を使うべきではないはずです」


「僕も最初はそう考えていたよ。ついこの前まで家族に対してすら魔法を使えないように装っていたくらいさ。でも頭の片隅ではスタビノア家の息子という立場がある以上、生涯隠し通すのは困難だとずっと前から感じていた」


 それは……そうかもしれない。スタビノア家ほどの位であれば嫌でも人前に立つ機会は多くなる。


「分かりきった未来が待ち構えているのに、力が露見する事態に備えていなければ危険が及ぶのは僕だけじゃない、家族や友人も巻き込まれる。自分のせいで大切な人達が危険な目に遭うなんて耐えられない。

 だから僕が欲したのはただ一つ――世界を敵に回しても大切な人を守り抜けるほどの強さだ」


 その言葉には心の芯をい抜くような決意が宿っていた。


 スタビノア君は自分がどれ程異質な存在なのか理解している。それによって多くな悪意や敵意を向けられることも。

 彼にとっては私もその内の一人、か。


 いつから貴方はそうやって見えない敵と戦ってきたの?

 自分の力に恐れを抱きながら、想像するだけで凍りつくような未来を見据えて、誰にも頼らずたった一人で技を磨いてきた。

 なのにどうして貴方は世界わたしたちに笑いかけられるの?


「……なぜそこまでするのかしら?」


 気が付けば純粋な疑問を投げかけていた。

 私が言うのもなんだけれどスタビノア君ほどの実力者であれば有象無象を押し退けて思うがままに生きることだって出来る。


 しかし彼は力ある者にとって最も容易な選択肢を選んでいない。そればかりか茨の道に身を投じている。

 一体何が彼をそこまで奮い立たせるのか。それを知りたいと思った。


「なぜと言われても……そうするのが当然だから、としか答えられないよ」


 あまりにも平然と。まるで自己犠牲とすら感じていないように。

 スタビノア君は家族や友のためなら自分の身を削るのは当たり前だと迷いなく言い切った。


「……貴方は弱くなんてないわ」


 そう言ってしまえるまで彼は途方もない戦いを続けてきたに違いない。

 世界と、恐怖と、孤独と、心に潜む弱い自分と。

 それらを乗り越えたからこそ、スタビノア君はこうして光の当たる舞台に姿を現すことができている。


 そんな彼が身内を侮辱されて黙っていられるはずがない。その内心を慮ればむしろよく手打ちにした、とすら言える。

 本気になれば誰に悟られることなく意趣返しをすることも可能でしょう。


 しかしあえて新壮式を決着の場に求めたのは怒りと優しさの葛藤の末だったのかもしれない。

 だとしたらもう私が彼に対して諌め言を口にするのはお門違いね。


「ランカスターさん」


「何かしら?」


「これはお願いなんだけど僕と友達になってほしいんだ」


 予想だにしないスタビノア君の“お願い”に思わず面食らってしまう。

 虚を突かれた私になおもスタビノア君は言葉を続ける。


「君はとても気高い。もし僕が道を踏み外しそうになった時は君の手で僕の目を醒ましてくれないか?」


 いつもの暖かな笑顔と共に差し出された右手。

 その手を取ることの意味を理解した瞬間、胸の鼓動が高鳴った。


 畏敬の念さえ感じてしまうほど強いスタビノア君が、その弱さを見せる相手に私を選んだのだとしたら、それはきっと誇らしいことなのだから。


「……いいでしょう。私が貴方の隣に立ってみせます」


 最早その手を掴むことに躊躇いはなかった。

 笑顔と同様に温かな手が優しく握り返してくる。


「ありがとう、ランカスターさん」


「友人だというなら遠慮なく名前で呼んだらどうかしら?カイト君」


「そうだね。そうさせてもらうよ、イングリットさん」


 繋いだ右手を解き、今度は私の方から微笑みかけた。


「では改めて決勝戦を始めましょうか」


「……この雰囲気で仕切り直すかい?あわよくば戦わずに済むと思ったんだけど」


「それとこれとは別よ。どちらかが棄権しても観ている人達は納得しないでしょう?」


「はあ……それもそうだ」


 ため息を一つ吐いてからカイト君は苦笑しながら頬を掻いた。

 お互いに距離を取って試合開始の構えを取る。


「長らく時間をとってしまって申し訳ありません。開始のコールをお願いします、ミュラー先生」


 こうして始まった新たな友人との決勝戦。

 その結果はここで語るべくもないでしょう。




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