第四話「東の龍(East Dragon)」・1
幻影の塔の中に入ると、上に向かってず~っと螺旋階段が続いていた。
「まさか、これ上るのか?」
「どうやらそうみたいね……」
楓が一番上の方まで見ようと試みたが、遠すぎて全く見えない。思わず溜め息が洩れる程だ。快くエレベータなどは用意してくれはいない。
「とにかく上るっきゃねぇな……」
爪牙が頭をかきながらそう呟いた。皆は凄くダルそうだった。
――▽▲▽――
十二属性戦士は一段一段足を上げることに疲れて来ていた。まだ着かないのか?などという心の中に秘められている気持ちが表情からも読み取れる。
そして、ようやく最上階の光らしきものが見えてきた。
「やっと着いたぁ~!!」
輝光が疲れてその場に座り込みながら言った。他のメンバーも近くの壁に寄りかかったり座ったりして休憩している。だが楓だけは違った。疲れてはいるものの、それよりも目の前にある壁の装飾の方に興味が湧いたからだ。
レリーフにはいろんなものが彫刻されていた。天空から地上へ攻撃している羽根を生やした戦士。地上から天へ向けて剣を振り上げる戦士。両者の丁度間に入り、まるで両者を止めようとしているかの様に見える。神々しく黄金色に光り輝く甲冑を身に纏っている一人の戦士。
「何かしらこれ……」
「ん、どうかしたん?」
夢幻が手をポケットに突っ込んだまま楓の元へ近寄ってきた。
「このレリーフなんだけど、何処かで見た事のあるデザインなのよね……。夢幻、あなたは見覚えない?」
「あらへんなぁ……。暗夜、お前は見た事あるかいな?」
名前を呼ばれて暗夜がゆっくりと近づいてくる。
「何だ?」
「このレリーフの装飾、見覚えあるか?」
「いや。でも確かに、何処かで見たような気はする。だが、それが何なのかまでは思い出せない」
「でしょ?」
もどかしそうにする暗夜に、共感し合える人物を見つけたように楓が言う。
レリーフは全部で四枚あり、それぞれが綺麗に合体していた。まるで四つの場面を区切っているようだ。他には、光を発する戦士と闇を発する戦士が衝突し、一つの星が黒く染まっている彫。天空に浮かぶ巨大な城に十二個に光り輝く球体が一緒に映った彫。最後の一枚は、世界を中心に四角にそれぞれ立っている四人の人影と、一つの惑星の中心に位置する一人の大きな人影。その周囲を三角形に囲っている三人の人影。そして、それを大きく囲んだ二つの人影という彫。
これがそれぞれ何を意味し、何を伝えんとするかは記憶を失った十二属性戦士にはわからなかった。だが、何か重要な事を意味することはなんとなく分かった。それが酷く彼らをもどかしくさせるのだ。
「とりあえず、この場所で気になるのは……この装飾された壁のレリーフ四枚にある四つの丸い穴。そして、周囲にあるそれぞれ東西南北の方向に位置した、赤、緑、青、黄の四色の扉……くらいだな」
暗夜の言葉に、腕組みをして考え込む楓。すると、夢幻が肩をポンポンと叩いて言った。
「考えてもしゃ~ないで? ここは丁度二人抜けて十二人おるから、四つの扉一個一個それぞれに三人ずつ配置して各々調べさせればええんとちゃうか?」
楓は自分自身ではなかなかいい案が出てこないため、仕方なく夢幻の立てた考えに乗ることにした。
「うっしゃ! んじゃあ、裏か表で決めようぜ?」
「いいよ、望むところだ!!」
三人の会話を聴いていた照火と雫が仕切り、誰かが文句を言う前にさっさと決め事が行われた。
裏か表は二回戦で行われ、一回目に六人、六人。二回目に三人、三人と三人、三人に分けられた。そして赤の扉には爪牙、輝光、残雪の三人。緑の扉には楓、雫、菫の三人。青の扉には照火、細砂、葬羅の三人。黄の扉には暗夜、白夜、夢幻の三人がそれぞれ向かう事になった。
「じゃあそれぞれ情報を持って帰ってくること……それと、誰も欠けることなくこの場所に戻ってくること、いいわね?」
楓の約束に皆がそれぞれの扉の前に立って頷き合った。そして十二属性戦士はそれぞれの扉に入って行った。
――▽▲▽――
東の方角にある赤の扉に入った爪牙、輝光、残雪の三人は、大きな廃虚の建物の前に立っていた。
「随分と薄気味悪い所ッスね」
残雪が両手をそれぞれ二の腕付近に添えてその個所をさすり身震いしながら周囲を見回し言った。
「何だろうこの濃霧。ただの霧には思えないような……」
輝光がドキドキと緊張しながら胸を押さえて周囲を捜索した。
爪牙はず~っと目の前の門らしき前に立ち、怪しい装飾をしたそれと睨めっこをしている。それから武器を構えたかと思うと、急にそれを思いっきり門に向かって打ち付けた。同時に微弱な地震が三人を襲った。
「きゃああ! ちょっと、何やってるの爪牙兄ちゃん!」
揺れに耐えきれずその場にペタンと座り込み、焦りながらも文句を言う輝光。残雪も倒れてはいないものの、目を丸くして驚いていた。
「いや……この門、どうやったら開くかって考えてたんだ」
爪牙の説明に、二人とも呆れていた。しかし、そのおかげで何とか門を開くことができ、三人は中に入ることに成功した。
中はもっと凄かった。三人から向かって左側には城壁があり、その近くの大きな塔には巨大な大砲など、いろんな装備が施されている。変わって右側には三つの大砲などが壁に設置されていて、正しく要塞と呼ぶに相応しい……そんな場所だった。
「ここに一体何があるんスかね?」
残雪が不思議そうに言った。
「でも、かすかだけどここの近くからオドゥルヴィア博士の気配を感じる」
「ホントか?」
「わ、わからないよ? ただそんな感じの殺気がするってだけで。殺気がするからイコールオソマツ博士だっていう考えは正しくはないから……」
爪牙の期待するような表情に輝光は苦笑いしながら言った。
「まぁ、確認するにしてもどちらにせよこの先に行かないといけないんだけどね? ……でも、そのためにはこのぶあつい扉を開けなきゃいけないわけなんだけど……どうしよ?」
目の前の巨大な扉に困惑する輝光。その門はまるで夢鏡城で言う玉座の間の入口のように大きかった。爪牙と残雪の二人も目の前に立ちはだかる第一の難関、巨大な扉を見上げた。ふと横を見ると大きさがバラバラになっている三つの歯車とレバーを見つけた。
「もしかすっと、このレバーを下げれば扉が開くんじゃねぇか?」
爪牙のふとした提案に残雪が駆け足でレバーの元へと向かい、ガチャリとレバーを下げた。しかし反応がない。よく見ると、三つの内の一つの歯車がはめ込まれていなかった。
「後一個足りねぇ……。何処にあんだ?」
爪牙が周囲を見回すが、それらしきものは全く見当たらない。仕方なく別の道を行こうと考えたが、左右どっちに行けばいいのかよく分からない。そこで、路頭に迷った三人は近くに落ちていた木の枝を使い、どっちに向かうか方向を決めた。結果、左の城壁のある大きな塔のある道へ向かう事になった。一番右端の階段から上へと上がって行き最上階に辿りつくと、三人は周囲を見渡した。敵がいないかどうか確認しているのだ。しかし、思った以上に警備は手薄で、楽々と警戒することなく周囲捜索に集中することが出来た。すると、最上階の一部の壁に崩れた部分があり、そこから幾つもの歯車が回っているのが見えた。恐らく、これが動力となって塔の砲台などを動かしているのだろう。そう三人は考えた。
と、その時、輝光がさっき三つの内の一つの歯車がなくなっていた部分にピッタリはまりそうな大きさの歯車を見つけた。
「ねぇねぇ二人とも! あれ、使えないかな?」
輝光の言葉に二人とも疑問符を浮かべて指さす方を見る。そこには確かに丁度いい大きさの歯車があった。
「確かにピッタリっぽいッスね!」
残雪も同意し、この小さな隙間からは男子二人は行けないということで、メンバー内最年少、また小柄な少女ということもあり輝光が向かう事になった。
「輝光、いっきまーす!!」
ピシッと敬礼して隙間から中へと入って行く輝光。二人はそれを敵が出てきて襲撃されないかどうか心配しながら見ていた。
――▽▲▽――
三人は右の三つの砲台がある場所から裏の方へと続く道に来ていた。
「まさかあんなことがあるなんて思わなかったッス……」
残雪が言う“あんなこと”というのは数分前に遡る……。
《あれ?》
《どした?》
輝光がレバーを下げ歯車を回そうとした。ちゃんと失われた歯車も補い動くはす……だった。しかし、歯車は何かに引っかかっているのか、ガツンガツンと何かにぶつかる音を立てながらも動かなかった。
そのため三人は別の道を行こうということで現在に至るのだ。
爪牙、輝光、残雪の三人はとりあえず裏の道から上の階へと上がって行った。階段を上り終え、ふと後ろを見やる。そこには、大量の水がどこからか汲み上げられ貯水されているタンクがあり、その上にある二本の煙突から煙が出ていた。さらに三人は180度体を反転させ逆を向いた。目の前には、幻影の塔と美しい景色が広がっていた。
真っ白な幻影の塔が太陽の光に照らされてキラキラと水晶の様に輝きを放ち、それが三人の視界を一時的に奪い去る。目を瞬かせ視界を取り戻すものの、三人は少なくともその絶景にうっとりしてしばらくは放心状態に陥っていた。
「す、凄い!」
輝光が三人を代表して言った。
現在三人は幻影の塔を最上階まで登り、さらにそこから東の方角へと来ている。どうやら、この場所は宙に浮かんでいるようで、ここからだと空中都市『ヘルヘイム』も殆どを一望出来るほどばっちり見えていた。
「ちょっと、大丈夫ッスか?」
残雪にポンポンと肩を叩かれ我に返る輝光。
「あっ、そうだった!」
輝光はクルッと右に向きを変え先に進んだ。しかし、その先は行き止まりだった。
「くそッ、どうする?」
爪牙が悔しそうに地団太を踏み仕方なく引き返そうとした時、輝光が待ったをかけた。
「ねぇ、この壁……やけに強くない?」
「ん? 確かにそう言われてみりゃあそんな感じがしねぇわけでもねぇが……。だったらどうだってんだ?」
腕組みをして輝光に説明を求める爪牙。脳筋な彼にはこの程度のことも考えられないらしい。
「ほら、ここに少し大きな鍵穴があるでしょ?」
指さす方向には、黄色い縁で出来た鍵穴があった。
「んで、どうやって開けんだ? 鍵なんて持ってねぇぜ?」
「それなら細砂に貰った道具があるッスよ?」
そう言って残雪がポケットからガムの様な形状をした物体を取り出した。
「これ、どうやって使うんだ?」
「これは細砂が使う盗みの七つ道具の一つなんス! 確か使い方は――」
記憶を頼りに物体を弄り始める残雪。すると、粘土の様に柔らかい物体は簡単に形を変えた。
「そうだ! これをここに押し込んで……」
口に出しながら実際に鍵穴に物体をねじ込んでいく。物体は残雪の言うとおり形を変形させながら奥まで入り込んだ。
「そして、この『瞬間固形スプレー』!! これを使えば一瞬にして柔らかい物質も金属の様に固まる――」
「説明はいいからさっさとしろ!!」
しゃがれた声音でタラララッタラ~♪と道具を取り出し、説明を始めようとするが、メンチを切る爪牙に文句を言われてビクついた残雪は説明を中断した。
「分かってるッスよ!」
ふてくされながらも鍵穴に差し込まれた物体にスプレーを吹きかける残雪。ものの数十秒でそれは本当に固まった。目を見開き驚愕の表情で吹きかけられた物体に近寄った爪牙は、手の甲でそれをコンコンと叩いてみた。確かに本物の鍵同様に硬くなっている。
「す、すげぇ!!」
歓喜の声を上げる爪牙は雷人の発明品とは違って役に立つんだな~、と心の中で呟いていた。
これにより、何とか強固な壁が取り払われ奥にあった小さな扉を開き三人は中に入ることに成功した。三人が小さな扉を開けて中に入った先には、大量の歯車が様々な形の歯車と複雑な噛み合いをして繋がっている光景が広がっていた。しかも、その一番奥の歯車の間にキランと小さな光が見えた。もしかしたらあれが歯車が止まってしまっている原因なのかもしれない、と思った爪牙は早足でその場に向かった。そこには、丸い変わった装飾の施された珠があった。残雪が四つん這いになり、その上に爪牙が輝光を肩車して乗っかる。
「うぅん! よい、しょ……っ!」
「取れたか?」
爪牙が確認する。
「も、もう……ちょいっ! とっ、取れ――ひゃあっ!!」
「ど、どうした!?」
「ぬわッ!? ちょっ、動かないでくださいッス!!」
輝光の悲鳴に何があったのかと爪牙が訊く。さらに爪牙が動いたために下になっていた残雪が少し揺れた。
「ちょっ……爪牙兄ちゃんの髪の毛が股に触れてくすぐったいんだけど……」
「しょうがねぇだろッ!! つぅか、おい残雪! 土台は土台らしく大人しくしてろよッ!!」
「無茶言わないでくれッス!! ただでさえ、爪牙だけでも重いのにその上輝光まで乗られたら耐えられないッスよ!!」
「ちょっとそれ、私が太ってるって言いたいの!?」
残雪に言われてムスッとした輝光が爪牙に肩車された状態で暴れる。
「ちょっバカ! そんなに暴れたら――」
「も、もう……ムリッ……ッス!!」
爪牙が最後まで言い掛けたところで残雪の力が抜け、上に乗っていた二人が体勢を崩す。うつ伏せになっていた残雪は自分の頭上で起きている状況に声が出なかった。そう、体勢を崩し自分の体の上に降りかかってくる二人の戦士。無論重力に逆らえるわけもなく――
ドサッ! ゴキュッ!!!
「ひぎゃあアァああアああああァあああァあああアアアあァがぁああアああっ!!!!」
残雪の腰に一気にのしかかる二人の体重に、腰は悲鳴を上げ変な音を立てた。当たり所が悪かったのだろう。同時に残雪は大きな叫び声を上げた。
その一方で歯車の間に挟まっていた珠が取れ、止まっていた歯車が稼働を開始した。同時に外からゴゴゴゴゴゴ!!! という地を揺らす音が聞こえてきた。残雪をほうっておいて、輝光と爪牙の二人は近くの鉄階段を駆け上がり扉を開ける。錆びた扉はギギィィ! と軋む音を立てながらゆっくり開いた。
歯車の部屋から外へ出ると、目の前には一m程しか道幅がなかった。その下には、さっきまで自分達が歯車をはめていた場所が小さく見える。大きな門の扉は相変わらず開いていなかったが、すぐ隣の扉が開いていた。先程の音はどうやらこの扉が開く音だったようだ。敵に出くわしてもいないのに重傷を負ってしまった残雪を爪牙がおぶり、その扉を潜り抜ける。それから周りを見渡した。
たくさんの煙突から謎の煙がモワモワと舞い上がり異臭を放っている。三人が一番印象的だったのは、その大砲の異常な数だった。あちこちの塔に設置され、今にも発射しそうな雰囲気ありありな大砲。また、三人は一番奥にある白い銅像を眺めた。そこには美しい女神が彫られていた。
「誰の銅像ッスかね? でも、どこかで見たような……」
残雪が具合悪そうに爪牙の肩から顔を覗かせ、目の前の巨大銅像を見上げ考えていると、輝光が言った。
「この人って、夢鏡城にいた世界四大神の一人の月の神だよ!!」
その言葉に爪牙も残雪も驚いた。確かにあの場所で月の神を見たのは見たが、フードを目深く被っていたため、素顔が見れなかったのだ。しかも、普段あまり知らなそうなことを輝光が知っていたことも驚愕の理由に含まれる。まるで、素顔を見たことがあるような物いいだったのだ。
その隣には、水の溜まっているダムの様な物もあった。向かい側には二つの塔があり、真ん中にはドーム状の建物が立っている。向かい側に行くには、ここからも見える透明のスカイチューブを通るしかない。
――▽▲▽――
爪牙、輝光、残雪の三人は、ようやく向かい側の二つの塔がある場所へ到着した。地面に手を突きながら跪いている三人は荒れる呼吸を整え、高い二つの塔を見上げた。まるで塔がこちらを見下ろしているかのように感じられるようにその塔はそびえ立っている。
「くそ……」
爪牙が息を切らしながら眉根にシワを寄せ嘆息していると、後ろから大きなプロペラ音が聞こえてきた。サッと後ろを振り向くと、大きな空中戦艦が両方の羽につけた二本のプロペラ――計四本から、空を切り裂くような大きな音を立たせてこちらに近づいてきた。
プロペラによる強風が、疲れている三人の体力をさらに削る。
と、その時、戦艦のハッチが開き中から三人ほどの人影が姿を現した。そう、それは過去に光と影計画で滅びたクロノスの科学者達とオドゥルヴィア博士だった。
二人の科学者は顔は完全に骸骨状態だったが、その体から吹き出ている謎の薄気味悪いオーラのおかげか動くことが出来ていた。恐らく、あの薄気味悪いオーラがボロボロの白衣を着ている彼らの体を動かしている動力源なのだろう。だが、今の爪牙達にはどうすることも出来なかった。
「おやおや、随分と疲れているようだな? 貴様らも相当驚いていることだろう……。何故滅びたはずのクロノス……しかも、滅ぼしたのはこの我なのにどうしてこやつらが従っているのか……。ククク、理由は簡単だ。この我が蘇らせたのだ、冥霊界よりな……」
「なっ、んなことが可能なのかッ!?」
爪牙が目を見開き、眉毛をキッと吊り上げオドゥルヴィア博士を睨み付け叫んだ。
「そう怖い顔をするな、崖淵爪牙。な~に、貴様らに危害を加えるつもりはない。“今回は”な……何せ、貴様らが動力を回復させてくれたおかげでコンピュータを作動させることが出来るのだからな。これで封印されている東の龍を蘇らせることも可能になった!!」
オドゥルヴィア博士の言葉に疑問を抱いた残雪が言った。
「東の龍って何ッスか?」
その質問にオドゥルヴィア博士はコンピュータのホログラムを見せた。そこには立体映像で映し出された不気味な出で立ちをした龍の姿があった。
「これが東の龍だ。その名の通り、ここ――東の城に住み着いている化け物でな……。過去の十二属性戦士によって封印されたのだが、その封印が未だ完全ではないのだ。そのため、コンピュータで封印を制御し動けなくさせている……というわけだ。 だが、貴様らが動かないコンピュータの動力を回復してくれたおかげで、こうして封印を解くことが出来る!! 全く、貴様らには感謝してもしきれんよ! グフハハハハハハハ!!!」
大声で笑いながらオドゥルヴィア博士が二人のクロノスの屍衛兵と共に空中戦艦の中に入ると、ハッチを閉め塔のてっぺんへと飛び立った。
「くっ、くそ! 待ちやがれッ!!」
爪牙が叫ぶが、その声はプロペラ音に無残にもかき消されてしまう。
「行っちゃった……」
輝光が残念そうに言う。
「くッ! 俺達も急いで後を追い掛けるぞ!!」
疲れなんか気にも留めずその場に立ちあがると、爪牙は二人にそう呼びかけ重たい足を懸命に動かし塔の入口に入った。二人もその後に続く。
というわけで、東の龍を討伐しにやってきた爪牙、輝光、残雪の三人。そして、そこに現れるオドゥルヴィア博士。
今回は少しキーとなる場面も見せました。
まずここ幻影の塔は重要な場所でもあります。何よりも、十二属性戦士がやってきたこの場所で楓が発見した四枚の彫がまず重要です。言葉だけではわかりにくいかもしれませんが、これはそれぞれある場面と重要人物を表しているんです。
そして何故か東の城に存在する月の神の銅像。
後半では、いよいよ東の龍と戦います。ただ、バトルはすごく短いです。