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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第一章:五つの封印解除阻止編
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第三話「三つ目の置物」・2

「よ、よくも細砂をッ!!」


「おいおい、何をそんなにムキになっておる? 確かにこれはあやつの血だが、それでも運がいいようだ。草壁葬羅の治癒によって回復の傾向にあるみたいだぞ? 良かったな……」


 まるで他人事のように腕組みをして十二属性戦士六人を見下すオドゥルヴィア博士。


「お前だけは許さへんで! よくも仲間を傷つけおったな!? この借りは高く付くで!?」


 夢幻の言葉にオドゥルヴィア博士は苦笑し言った。


「ほう……仲間の敵討ちでも討とうと言うのか? 美しい友情愛だな……。だが、そのような事をやったところで何の意味もないッ!!」


 (おもむろ)に片方の腕を真っ直ぐ目の前に突き出したオドゥルヴィア博士は、腕に忍ばせておいた鉤爪の様な物体を発射した。目標は置物を持っている楓だ。


「あっ!?」


 楓は警戒していたものの、あっさり相手に置物を盗られてしまった。


「しまったっ!!」


「クックック……大事な物は常に肌身離さずちゃんと守らねばなぁ、旋斬楓よ……。ンッフッフッフ、確かに次元の置物は手に入れたぞ? これで、ようやく三つ目の置物が手に入った。第三の封印が解けるのも時間の問題だな。それでは御機嫌よう、十二属性戦士! グフハハハハハハハハハハハ!!!」


 オドゥルヴィア博士は大きく背中を反らし大きく胸を張ると、大声でゲラゲラと笑いながら空間を歪めてどこかへと消えた。


「くそ、やられた……ッ!」


「ごめん……」


 暗夜が悔しそうに地団太を踏むのを隣で見た楓が謝り顔を俯かせる。


「楓が謝る必要ないわ……。それよりも、問題はさっき博士が言っていたこと……ね」


「細砂のこと?」


 時音の言葉に菫が訊く。それにコクリと頷く時音。

 二人の会話に皆が顔を見合わせ、それから六人は急いで次元の塔からエントランスへと向かった。


―▽▲▽―


バンッ!!


 扉が勢いよく開け放たれ、そこから楓達が血相を変えて走って来た。


「細砂! 大丈夫―!?」


 楓の叫ぶ声に雷人が慌ててそちらの方に顔だけ向けて眉毛を釣り上げ、人差し指を口元に運んで静かにするよう合図を送った。それを見た楓が慌てて口を閉じる。


「どう、容体は……?」


 時音が膝に手をつき、細砂の看病をしている雷人に訊く。


「今は安定している。それで、置物はどうだった?」


「ダメだ。盗られてしまった……」


 暗夜が首を振り答える。その言葉に十二属性戦士一同がガックリと肩を落とした。


―▽▲▽―


 光の都と闇の都……。この二つの都の狭間には、通称『暗黒街』と呼ばれる周囲を森に囲まれた一本道がある。ここの周辺には、幻惑の霧が大量に発生するため、普段は通行禁止になっている。さらにその奥には、有名な『幻影の塔』がそびえたっていると言う。しかし、未だ嘗て実物を見た物はいない。そんな噂が広がる中、幻惑の霧を抜け、その幻影の塔の目の前に立っている人物がいた。そう――オドゥルヴィア博士だ。

 博士は大きく手を開き、腕を左右に大きく広げ声をあげた。


「さぁ開け、幻影の塔よ!! 幻惑の霧にその身を包んだその塔の真の姿を、今こそこの全世界に知らしめるのだッ!!」


 博士の言葉に呼応するかの様に幻影の塔から地響きが聞こえ、地面が揺れ出した。


――クックック……。待っていろ、WWW(スリーダブル)。そして光と影計画よ! 第三の封印も、後もう少しだ……。



 博士は心の中でそう呟き、真っ白な幻惑の霧の中に出現する幻影の塔を眺めていた……。


―▽▲▽―


 エントランスに集合していた十二属性戦士は、雷人の調べで分かった次なる封印の場所に関係する場所――幻影の塔へと向かう準備をしていた。細砂は完全には傷が癒えていなかったが、ついさっき目を覚ましたところだった。


「これで準備は整ったな……」


 雷人がパソコンのキーボードを打ちながら呟いていると、突如大きな地震が十二属性戦士と建物を襲った。壁に少し小さな亀裂が入り、窓ガラスがいくつも割れていく。


「きゃああ!!」


「うわあああ!!」


「何なんだ!?」


 十二属性戦士は急いで近くの障害物の下に隠れた。

 しばらくしてようやく地震が収まった。十二属性戦士はゆっくりとその場に立ち上がると、お互いの顔を見合わせキョロキョロと辺りを見回した。ガラスの破片があちこちに散らばっている。


「足元に気をつけて外に出てくださいね?」


 葬羅が呼びかける。皆が破片を踏みつける度にパリンパリン!と、細かく破片が砕ける音が聞こえてくる。

 全員が外に出ると、少し顔を上にあげた目線の先に驚くべき光景が広がっていた。それは、白い霧の中に広がる真っ白な塔だった。


「まさか、あれが幻影の塔なのか?」


 爪牙が言った。


「雲の上まで突き抜けてるみたい……」


 菫が太陽の光に視界を遮られながらも雲の上にまで伸びきっている塔を見て言った。


「恐らくオドゥルヴィア博士はあそこにいる。急いで私達も行こう!」


 雷人の呼びかけに、全員が頷きあった。

 十二属性戦士は暗黒街の幻影の塔に向けて出発した。


―▽▲▽―


 時空元の塔から出発してから二、三時間は経過しただろうか。相変わらず暗黒街の中の森は外と比べて暗く、とても薄気味悪かった。


「なぁ、まだつかないのか?」


「もう少しだから待ってろ!」


 雷人が照火のダルそうな声にイラッと来ながらも、ナビの様なソフトを使って一生懸命方向を確認していた。照火のダルそうな姿は二年前の砂の都での出来事を思い出させる。


「ね、ねぇ……何でこんな生暖かい風が吹き付けてくるの~? ひぃやぁっ! な、何!? なんか、今私の首筋に誰かが息を吹きかけてきたんだけどっ!」


 顔面蒼白となって異常に周囲を警戒するのは、未だにホラー系がダメダメの研究者である菫。そんな彼女の様子を見て時音が手を握ってあげながら口を開いた。


「怖い怖いと思ってるから怖いのよ。怖くない怖くないって思えば少しは気が楽になるんじゃないかしら?」


 時音の助言に、前を歩いていた雫がその言葉を小耳に挟み、一言。


「え~、でもこの間ハンセム博士が怖い時は怖い怖いと言っている方が克服するって言ってたよ?」


「そ、そうなの? 私、知らなかったわ」


 雫の言葉にきょとんとなって初めて知った新たな情報をインプットする時音。すると、楓が嘆息しながら言った。


「時音、こいつの言うことなんか気にする必要ないわ。第一、ハンセム博士の言葉なのよ? とても信じきれないわ。何だか胡散臭いし……」


「ひ、酷いっ! 何でそんなこと言うんだよ楓!」


「ふんっ、何でこの私がいちいちあんたに理由を教えてあげないといけないワケ?」


 腕組をしてそっぽを向く楓に、頬を膨らませて文句を言い続ける雫。そんな義兄妹二人を雫の従姉である時音がまぁまぁと宥めていた。

 そして、十二属性戦士の目の前に一筋の光が見えてきた。


「やった!」


 輝光が嬉しそうに声を上げる。その後に皆がついていった。


「こいつは半端じゃないな……」


 暗夜が言った目線の先にあったのは、幻影の塔と塔の中心に丸く地面を抉るように出来たクレーターだけだった。しかも、その塔の中心付近には黒い穴が見えた。恐らく、あれが本来の入口なのだろう。もしかしたら、オドゥルヴィア博士が言っていたのはこの事かもしれない。

 『二年の月日が流れ、不死身の魔豪鬼神が襲来する。そして、その魔豪鬼神により三つの置物盗まれし時、幻影の塔の扉開かれ三つ目の封印が解き放たれ、第四の封印への足掛かりとなる……』

 このままでは本当に雷人がスピリット軍団の情報により得た通りになってしまう。


――なんとかして止めなければ!



 誰もがそう思った。

 十二属性戦士は、幻影の塔の入口へ向かおうとした。すると、突然雷人が先陣を切ろうとする照火の腕をガシッと掴んだ。それにサッと振り返る照火。


「何だよ、急に」


 訝しげに尋ねる照火に雷人が落ち着いた口調で一言。


「私は戻る」


 その言葉に、一同全員が驚愕した。


「戻るってどこにっ!?」


「時空元の塔だ」


 焦っている様子の楓の質問に雷人が冷静に答える。


「急に何言ってんだよ!? ここまで来たんだぞ?」


 照火の言葉に他の皆も頷く。


「だが、時空元の塔に何か秘密があるという話を昔聴いたことがあるのだ。もしかしたらそこに何かがあるかもしれない。だから私は行く……止めても無駄だからな?」


「……分かった。でも、一人で行かせる訳にはいかない! 時音、悪いけど一緒に行ってもらえる?」


 メンバーを一瞥していき目を止めた相手は時音だった。

 突然の頼みに本人も驚いていたが、何より驚いていたのは雷人だった。


――珍しいこともあるものだな、楓が行ってきていいと言うとは。普段のあいつからは想像も出来ないようなことだぞ?



「何か言った?」


「いや、何でも」


 鋭い目つきにたじろぎ、視線を逸らす雷人。さらに雷人は話をずらそうと思い、


「そういえば、ハンセム博士が封印について新たな事が分かり次第連絡すると言っていたぞ?」


 と、詰め寄ってくる楓に教えた。すると、雷人の言葉にくいついたのは、あろうことか義妹の輝光だった。


「ホント?」


 輝かしい期待の眼差しを義兄に向けてくる義妹。一方で楓はというと、腕組みをして片眉を少し吊り上げふ~ん、と言った程度の軽い反応だった。雷人は苦笑いしながら話を終えると、時音と共に時空元の塔へと引き返した。 そんな二人を見送りながら、輝光が


「どうせなら、時空元の塔から出発する時に言えばいいのにね!!」


 と、満面の笑みで鋭いツッコミをかました。それを周囲で苦笑しながら十二属性戦士は聴いていた。

 他の十二属性戦士は予定通り幻影の塔の入口に向かって進んで行った。さすがに目の前に立ってみると、真上を見上げただけで首回りが痛くなるほどその塔の高さは尋常じゃないものだった。


「よっしゃ! んじゃ、行くか!!」


 照火の合図で十二属性戦士一同は暗がりの入口へと入り奥へと足を進めた……。

というわけで、三つ目の置物も取られてしまい時空元の塔から次の封印に関わっている地、幻影の塔へと向かう十二属性戦士。

ここで、少しばかり幻影の塔について解説を。

幻影の塔はいつもは姿を消しています。呼ばれたら出てきます。また、入口は一番下にあり、本来はいけないのですが地面を抉ると入ることが可能です。そう、あのクレーターは「入口が見つからないどうしよう」と慌てふためく十二属性戦士を憐れんだオドゥルヴィア博士が地面を抉った跡なんですね。いやぁ、くわばらくわばら。

第四話では塔の中から東西南北の方角へ向かい、そこにある宙に浮いた古城やらいろんな場所を舞台に封印を解こうとしている博士と対峙します!

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