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十二属性戦士物語【Ⅲ】――光と影――  作者: YossiDragon
第一章:五つの封印解除阻止編
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第一話「七小衛星大爆発!!」・3

「す、すごいっ!!」


 前よりも格段に炎の質が上がっていることに気付いた細砂が声を張り上げる。他のみんなも照火の様子を見て少しは修行した甲斐があったという自信を得た。

 一分ほどして、ようやくセキュリティーのかかった修行の森入口の扉が完全に溶けた。本当はただセキュリティーを止めて扉を開けれればいいだけだったのだが、生憎とそんな手段を持ち合わせてない照火にとってはこれが手っ取り早い方法だった。

 十二属性戦士十四人は二年ぶりの夢鏡王国の城下町を見て唖然とした。

 そこには、二年前に彼らが修行の森で修行を開始する前の最後に見た城下町の面影は残っておらず、噴水には隕石が激突して無惨に崩壊し、周囲の賑やかな住宅街からも炎がメラメラと燃え上がって黒々とした煙がモクモクと天へと登っており、街灯なども隕石の熱にやられてか、グニャリと折れ曲がり地面に横たわってビリビリと電気を点滅させていた。その他に、王立魔法図書館やその他の建物にもいくつかの隕石がぶつかっていた。さっきまで、二年前と同様あまり変わらない風景だったこの場所が、一瞬にしてこのような光景にガラリと変貌してしまったことを十二属性戦士は知らない。人っ子一人姿がなく、その安否も分からない。

 と、そこへ、見覚えのある人物がやって来た。ポニーテールに結った瑠璃色の髪の毛を振り乱し、荒い呼吸をする少女。そう、ここ夢鏡王国の第七姫君の一人である『神崎(かんざき) 瑠璃(るり)』である。瑠璃は膝に手をつき、肩で息をしながら十二属性戦士を見上げた。そしてその瞬間、ありえないと言った顔で彼らを見つめ目を丸くした。


「ど、どうかしたんですか、瑠璃さん……?」


 瑠璃のその目を見た楓が疑問に思い訊く。


「ど、どうして……あなた達が? 修行の森で修行していて出られないはずなのに」


「あ、ああ……それなら、照火が――」


「溶かしたぜ!!」


 満面の笑みを浮かべ瑠璃に親指を突き立てる照火。その台詞に疲れきった表情をとったまま半眼になる瑠璃。


「と、溶かしたって……」


 そう言いながら十二属性戦士が立っている後ろを見てみると、なるほど確かに二人の言う通り頑丈な修行の森入口の鉄の扉が溶けていた。その形を見れば、どれほどの炎の熱で溶かされたかなどは一目瞭然だった。それを見た瑠璃は、思わずゴクリと息を呑んだ。もしも仮に自分があの炎を受けたらどうなるのだろうと考えたのだ。


「どうかしたんですか?」


 今度は時音が瑠璃の様子を見て声を掛ける。


「あっ、ううん……何でもないの。それよりも、出て来たってことは修行は終えたのよね?まぁ、その扉の様子を見れば一目で分かるんだけど……」


「やっぱやっぱ? いやぁ、自分でもさっきの炎の威力には正直驚かされたぜ!!」


 と、瑠璃の感想を聞いて嬉しそうに頭をかきながら照れくさそうにする照火。そんな照火に対して瑠璃は愛想笑いしつつ、心の中で


――別に誰も感想を求めてはいないんだけど……。



 と、呟いた。


「そういえば、お父様があなた達に二年ぶりに会いたいって言ってたわよ?」


「そうか……。確かに俺達も久しぶりに外の人間に会うんだもんな……」


 と、瑠璃の言葉に爪牙が頭の後ろに両腕を回して言った。


―▽▲▽―


 十二属性戦士は夢鏡城の五階にある玉座の間に居た。玉座の間には、赤く長方形に長い絨毯が玉座の間入口から玉座にかけて敷かれてあり、その上を歩く形になっている。周囲の壁は真っ白で、玉座は少しばかり高く造られている。そしてその玉座の二つの椅子には、もちろん夢鏡城を治めるこの二人――夢鏡王国第六代目国王『神崎(かんざき) (ぜろ)』と、同じく夢鏡王国第六代目女王の『フィーレ=S(シャルソラ)=ナイトメア』が座っていた。ちなみにフィーレは神族の一人であり、偉大なる神――大神ゴーミストの四人の子供の一人で『太陽の神』でもある。この事実を知るのは数限られており、無論知らない者もいる。蛇足だが、ここにいる人間は全員その事を知っている。

 オドゥルヴィア博士に操られたルナーによって怪我を負わされたハンセム博士は、腹部に包帯を巻いた状態で十二属性戦士を見るなり目を丸くしていた。理由は彼らのその魔力の異常な上がり様だ。十四人の姿をぐるりと見渡すと、確かに二年間も修行しただけあって全員すっかり見違えるような姿になっていた。身長は高くなり、髪の毛や顔立ちも少し大人びた様に成長しているのはもちろんのこと、十二属性戦士の体から溢れ出る強力な鍛え上げられた魔力は、それを肌で感じるハンセム博士をなおのこと驚愕させていた。少しでも気を緩めれば、あっという間に魔力の気で吹き飛ばされそうな強さだ。ただ、少し気になるのは彼らのその格好にあった。二年間新しい服を買っていなかったため、二年前の格好のままなのだ。そのため、少し着苦しそうな様子をしている面々が多かった。特に成長期が激しい輝光が一番それが顕著に出ていた。


「おい、お前たち。その格好、何とかならないのか?」


「それは私達も思ってました。心配しなくても、この後みんなで洋服を揃えようと思ってます」


 時音の台詞にハンセム博士は安堵してそれ以上は追求しなかった。すると、今度は雷人が逆にハンセム博士に質問を出した。


「ところで、お前のその姿は一体何があったのだ?」


 腕組をして訝しげに尋ねる雷人にハンセム博士がああ、と自身の腹部に手を添え、一方でその側に申し訳なさそうにしていた月の神であるルナーがビクッとその体を震わせた。

 『ルナー=R(ロルトス)=ナイトメア』。名前の通り、フィーレの妹で世界四大神の一人で月の神である。いつもは占い師を営んでいる彼女は、二年前にこの夢鏡城でオドゥルヴィア博士の重複封印を施した後、この場所に入り浸っていた。


「実はだな……」


「ごめんなさい! 私が全部悪いのです! 私が二年前……あの時あの男の攻撃を躱していればこんなことにはならなかった……のです」


 どんどん声が小さくなっていき最後にはほぼ何て言っているのか聞き取れない十二属性戦士。しかも、初めて見る彼女の姿に彼らは首を傾げていた。


「あ、あの……あなたは?」


「その子は、私の妹のルナーよ」


 フィーレが疑問符を浮かべている十二属性戦士に紹介する。その言葉に全員が驚愕した。


「こ、この人がフィーレさんの妹で世界四大神の一人!?」


 菫が腰を抜かしてその場に座り込み、葬羅が信じられないという表情を浮かべる。他のメンバーも似たような行動をとっていた。


「でも、月の神がどうしてこんなところに? それにその格好は……コスプレ?」


 照火がルナーのしている格好を見て顎に手を添えそんな事を呟く。


「こ、これはこ、コスプレなんかじゃないのです! う、占い師の格好で……」


「占い師?」


 残雪がどこかで聞いたことがあるようなという顔をする。そして、次の瞬間ああっ、と声をあげて思い出したようにルナーを指差した。


「あ、あなたはッ!?」


「ひぃ、な、なんなのです?」


 フードを深く被っているためにその童顔がよく見えないが、明らかにルナーがその碧眼を潤ませているのが見て取れた。すると、それを見た輝光が文句を一言。


「ああ、雫兄ちゃんの次は神様を泣かせてる~!」


「え、えええええッ!? べ、別に俺は泣かせたつもりは……!」


「す、すみません。私、あまり男の方とは……話したことがないので」


「その子、引きこもり属性があってね」


「お、お姉さま! そんな人聞きの悪いこと言わないでください! 私はただ、明るいところが苦手で暗がりを好んでるだけで……」


「暗くてジメジメした所を好むなんて変わった()よね」


「うぅ~実の妹をイジメてそんなに楽しいですか、お姉さま?」


 目尻に浮かぶ涙を人差し指で拭いながら猫なで声でそう尋ねるルナーに申し訳なさそうにフィーレが言った。


「ごめんごめん。あなたを見てると、どうしても小さかった時みたいにいじりたくなっちゃって……」


 と、すっかり和んでしまった空気に、ようやく雷人が本題を尋ねる。


「それで、残雪が聞こうとしていたことは何だ?」


「ああ、そうッス! すっかり話題をゴミ箱にポイ捨てされたかと思ったッスよ! えと、確かあなたって氷の都で占い師やってたッスよね? 覚えてないッスか? ほら、小さい頃よく占いをしに来てた……」


「え~と、ごめんなさい。私、あまり男の人の顔を覚えるのは得意じゃないのです。でも、確かに氷の都で占い師はやってました」


「や、やっぱり!」


「え、じゃ何? 私達の知らない所で既に残雪は月の神であるルナーさんに会ってたってこと? 何それ、何か残雪に先越されてたとかちょームカつくんだけど?」


「えええッ!? な、何ッスかそれ! そんなの逆恨みもいいとこじゃないッスか!」


「ゴホン。随分と私の事が忘れ去られてる気がするのだが……」


 咳払いをするハンセム博士に時音が申し訳なさそうに言う。


「すみません、博士。それで、その怪我どうしたんですか?」


「実は、月の神に襲われてね」


「あら、ルナーったら大胆ね」


「ち、違いますよお姉さま! もうっ、ハンセム博士。誤解を生むような言い方しないでください! ちゃんと事実を話してください」


 ハンセム博士の言葉にフィーレが頬を染めてその頬に手を添えルナーを見る。すると、その顔にルナーが慌てふためきハンセム博士に文句を言った。


「事実は事実……だろう? ただ、中身が違っただけだ」


「そりゃあ、そうですけど……何か、釈然としないというか」


 人差し指同士をつつきあい、モジモジするルナーにハンセム博士は続ける。


「お前達が二年前修行の森に入ったあの後、オドゥルヴィア博士が復活しかけてね。それを、ルナーが重複封印したんだ。その際に首筋に噛み付かれたらしくてな、オドゥルヴィア博士の精神の一部がルナーを操り私を攻撃してきたと、こういうことだ」


 事件の全貌を聞いて十二属性戦士は目を見開き閉口してしまった。先ほどまでの和んだ空気がここでガラリと変わった。


「……オドゥルヴィア」


 暗夜がその名前を呟き赤い双眸を光らせる。

 とりあえず話が終わった事を確認して、楓が向き直り国王に一言。


「王様。私達はこれから三つ目の封印を解きに向かいます!!」


 十四人の十二属性戦士の先頭に立っている楓がまるで全員を引き連れるリーダーの様に零に言った。


「しかし、場所は解っているのかい?」


 国王――零は優しく楓に訊いた。すると、その問いに時音が胸の前に手を軽く握って口を開く。


「はい、時の都だと雷人の調べで分かっています!」


「なるほどそうか……分かった。では、気を付けて行ってきなさい」


 玉座に座ったまま零がそう言った。


「うっしゃ! 俺達のパワーアップした姿をオドゥルヴィア博士に見せつけてやろうぜ!!」


 照火が気合を込めてガッツポーズを決め、拳を高々と夢鏡城の天井に向かって突き上げた。すると、それと同時に他のメンバーも次々と拳を突き上げ気合の入った声を張り上げた。


―▽▲▽―


 買い物を済ませ洋服を着終えた十二属性戦士は、準備を終えて時の都にある『時空元の塔』に到着した。


「随分と薄気味悪い所ね……」


 菫が周囲の景色を見渡し小声で言った。木々が生い茂ってはいるものの、生き物一匹気配を感じられない。


「そうだな。二年前まではもっと明るい感じだったのに……。一体この二年間の間に何があったんだ? 天候もすっかり悪くなってるし」


 照火の言葉を隣で聴いていた時音がふと立ち止まって呟いた。


「そういえば、この辺りに前まで咲いていた植物の花がなくなってる?」


 そう呟いた瞬間、葬羅が今まで見たことがない物を見た様な顔である場所を指さした。


「あ、あれって何ですか!?」


 指さす方を見てみると、そこにはただならぬ威圧感を醸し出し、とてつもなく邪悪な気を発している謎の黒い球体があった。さらに、その球体はどんどん周囲の地面を抉って行き、まるで一種のブラックホールだった。その球体はだんだんと黒から白へと変色していき、同時にバチバチと青白い電気を走らせ始めた。


「何だか分からないが逃げた方がよさそうだ! 時空元の塔へ急げッ!!」


 雷人が焦る姿に他のメンバーも動揺する。彼の動揺する姿を今まで見たことがなかったからだ。雷人の指示を聞いて一同が時空元の塔の入口から中へと入って行く中、照火だけは違った。武器を構えその白い球体へと足を進めていたのだ。それに気づいた楓が、慌てて照火の腕をガシッと掴む。


「ちょっ、何やってんの照火!? さっさと時空元の塔に行くわよ!!」


 楓に注意を受け反論しようとする照火だったが、その真剣な表情に言葉を失い、渋々ついていった。

ガラスで出来ている扉を開き中へと入って行く十二属性戦士。一方で、電気を帯びた謎の白い球体はどんどんその大きさを増していき、膨らみきった風船が破裂する様に大爆発した。爆風と同時に周囲を包み込む真っ白な煙。その白煙の中に暗闇のシルエットに身を包んだ一人の謎の大柄の男が不気味な含み笑いをしながら仁王立ちしていた……。

というわけで、第一話終了です。そして、伏線がもう一つ回収されました。そう、残雪がⅠで言っていた占い師。あれはルナーのことだったんです。なので、十二属性戦士で唯一残雪だけがルナーに会ったことがあるんですね。まぁ、本人は覚えてないんですけど。さすが残雪の扱いの酷さは毎度のことです。

そして姉にいじられるルナー。どことなく残雪に似た匂いがします。

さらに、時空元の塔に出現した謎の球体。そして、爆発すると同時に現れた謎の黒い影と不気味な含み笑い。もう、みなさん誰かわかりますよね?

てか、一人しかいない。

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